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奪われた『自由』



 自由になりたいのになれないのは何故?

 鎖で自由を奪われた私は

 どんな結末を待ち続けるのだろう


 

 ガシャーンと牢獄の中で響く鎖の音が毎晩のように続く。ここは閉ざされた防音室。自分が何故このような状況に陥ったのか考える『思考』はもう残っていない。最初は理性があり、抵抗していた自分が存在していたのに、習慣とは恐ろしい。今まで生きてきた当たり前の環境が異質になり、自由を奪われた『現在いま』が当たり前と思うようになってしまったのだから……。


 抵抗する気力など、もうない。人間から廃人に落下した私は自分が誰かも理解出来ない状況に陥ったのだ。最初は純粋な『恋心』だったはずなのに、どこでどう狂ったのか、訳が分からない。額からは血が混ざった汗が滴り落ちながら、瞳を濡らしていく。まるで私の涙のように。


 喉が渇いた。飯の時間はまだか。両手は天井からぶら下がっていた『鎖』に拘束され、両足は床に取り付けられた『拘束具』に自由を奪われている状況。まるで刈り取られた鶏のように。


 『ご飯の時間だよ。圭人ケイト


 ギィーと鉄格子を開け、中に入って私に語るのは『ミカサ』だ。私の望む『ゆち』を創る為に作り上げた人間のまがい物の子供。最初ミカサがここに入ってきた時は驚きで言葉が出なかった。まさか自分の創り上げた『理想』がこのような形になるなどと想像もしていなかったから、余計に。


 『もうお話出来ないの?大人しくなったね』


 ふふふと微笑む彼女は天使のようで悪魔。堕ちてしまったミカサを元に戻す事は無理だろう。私が例え、口から血を流しながら言葉を紡いでも、ケラケラ笑うだけなのだろうから。


 『壊れたお人形みたい。つまらない』


 どこが『つまらない』だ。誰が『人形』だ。それはお前達『化け物』の方だ。そう呟き続けた結果、人間としての脳の機能が正常に働かなくなってしまった。私だけではないだろう。別の監獄のような同じ作りの別室で『遊離』も同じ状況を体験しているはずだ。


 私は何も間違っていない。間違っていない。本当の過ちはお前達『人形』を作り出した事なのかもしれないな。


 少量の水しか与えられない。喉が焼けるように熱い。体温が分からない。このまま永遠に続くのだろうか。苦しみと感じていた感情も、崩壊し、残されたのは命の『鼓動』のみ。


 『おじさん達の言う事を聞かなかった圭人ケイトが悪』


 私の物だった。人形は手から離れ『知識』と『知恵』を与えられた。どれが善で悪なのか理解も出来なかったはずなのに、私を悪だと耳元で食事を見せつけるようにし、囁き続ける。


 『悪はお前、悪はお前、悪、悪』


 そこに優しい『ミカサ』の面影は残されていない……。




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