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双子

 夢に漂いながら敷かれた道の先にあるのは本当に『光』だろうか?表裏一体のワタシタチは背中合わせで呟いている。一人のワタシはケラケラと笑っている。もう一人のワタシはポロポロと砂のように崩れて、蒸発していく。


 「「ワタシタチは双子」」


 そう呟きながら形ある物と消えた物が混ざり合いながら、過去へと流れていく。誰も知る事のなかった『出生の秘密』へと、物語は続いていく。


 「見たくない」


 呟きは、風に喰われながら、堕ちていく。ゆっくりと瞬きもせずに、見開いた瞳が枯れている。


 「おねぇちゃん」


 幼い手があねを求める。倒れた物は必至にひとを演じようとしていた。泥で塗れ、血で塗れて、身体中赤黒くなっている物は、まるでひとのように泣いている。


 「夕月…あんたの秘密を教えてあげるよ」


 彼女の名前は夕月と言うらしい。物のように扱われる彼女は、もはや人間ではない。本来ならば綺麗な顔をしているのだろうか、半分瘡蓋かさぶた半分血まみれ。表情も何も、視界から入る情報がない。あるのは幼い『身体』だけ。


 「おねぇちゃん…ひみつってなあに?」


 壊れたお人形さん。その表現がお似合いな彼女は人に首を折られたみたいに、カクンと首を傾げる。


 「あのおかあさんが教えてくれたの。本当は内緒だけど、仲間外れは可哀そう」

 「可哀そう?だれが?」

 「夕月だ可哀そう。何も知らずに産まれてきたから」


 双子のあねは「ふふふ」とおもちゃで遊んでいる時のような笑顔で、語り始める。何が始まるの?おねぇちゃんが楽しそうだからきっと『楽しい』秘密なんだ。ボロボロの夕月は、一筋の光を見つけた気がした。あねの話を待ち望みながらも言葉の意味を理解出来る年齢ではないのだから。他人事のようで、物語のようで、紙芝居のよう。ワクワクする心を抑える事を知らない夕月は、表情の見えない姿で醜く微笑む。顔が見えなくても、口元の動きで感情が溢れているから、少しなら読み取れるのだ。そして彼女はまだ子供。


 自分のおかれた環境が『当たり前』

 このケガまみれの姿が『当たり前』

 あねがそばにいて嘲られるのが『当たり前』


 本当の自分の姿を見た事もない夕月は、鏡の存在さえも知らない。


 「おねぇちゃん、話ききたい、教えて」

 「いいわよ」


 ふふふと声を出しながら、夕月の頭を撫でる『ゆち』二人は双子。二人は一緒。


 ≪君達に昔話を始めよう前世の昔話を≫


 同じ事を繰り返しながら、魂の記憶が受け継がれ、ワタシタチは現代に存在している。誰も止める事の出来ない『呪い』そして『輪廻転生』姿、形を変えながら、支え合う二人。それが『ゆち』と『夕月』混ざり合いたい、混ざれば、自由になれる。無意識に行動する二人と周囲の人間。誰一人として気付く者はいない。




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