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入れ替わり

 変わる変わる。私達は互いの存在を入れ替えている。その事実に気付いているのは私のみだ。雄介おとうとは私の本当の正体を何も知らず『親父』と呼ぶ。本当の『親父』さんは新薬の副作用で若返って、今頃『また』悪さをしているだろう。その真実を知ったら雄介おとうとは私を憎むかもしれない。予測として彼が私に呟く言葉は…何度自分達のような犠牲者を出すのかと怒鳴るだろうな。だがこれは私達『親父』の立場が決めた事柄じゃないから仕方ないとも言えよう。正体を明かすつもりはないさ。同じ顔をして産まれてきた双子の兄が、再開すると全くの別人、年齢も同じ年には見えなくなりました、だなんて。雄介おとうとに思われたい訳じゃないし、私自体この実験検証と新薬に対して全然否定的ではなかったから、自分の中では結果オーライって感じな訳なのな。まぁ年相応に見られるように62歳を演じるのは大変だけど、それも日常を生きていく事で『慣れて』行くものだと感じたよ。実際に15年前に比べて年齢重ねたし、表と裏の世界に踏み込んだからこそ、ここまで理解出来るのかもしれないと言い聞かせる方法しか知らない訳よ。雄介おとうとが何か話しているが、耳に入らないと言う事は『私』からしたら大した事ではないと言う事。それよりこれからの『親父』としての立ち回りを考えないといけない。甲斐を丸め込む為にも。外見は変わっても中身は変わらない。病気もないし、本当の年齢と同じ体力もある。甲斐と同じ年だからね。私の本当の年齢も。


 雄介おとうとを見ていると、発言を聴いていると。どうも夕月って子に固執しているみたいだ。あんな得体の分からない癒智とか言う子供を匿っているし、子供として育てる気でもあるのかと疑ってしまう位、不思議な行動をしている。私には関係ない『親父』としてはね。しかし雄介あにとしては大問題なんだけど。それは自由にさせるのが一番いいと考える思考に落ち着く。


 しかし驚いた。実の兄弟で同じ事を考えているなんて。


 よく兄の雄介になり切ろうと思ったものだ。弟の慶介は。それも元の名前も少し漢字をいじって時と場合により使い分けている。色々な物事を調べて、身を隠す為の策を考えているのだろう。あいつの性格ならそんな『まどろっこしい』事しないが、すると言う事は、そこまで慎重に考えていると言う事。反対に俺は見た目の若さを金にし、命のリスクを賭け、正体を確実に隠す為に、顔も変え声帯も変え、全くの別人を作り上げた。そして名前は慶介…それが今の親父としての雄介の新しい名前。


 (なぁ雄介おとうと名前の入れ替わった事実に気付けるのかな?)


 まぁ当分無理だろうと思うけど。それはそれで楽しいからいいじゃないか……。俺って意地悪かな?



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