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親父の正体

 年を重ねるものじゃないと人は呟いた。しかし私は思うのだ。見た目は年老いているかもしれないが中身は…実年齢はまだ32歳だと言う事実がある。昔の名は俺にとっては不必要なもの。それに昔の名前を使う人間が出てくるのは確実な現実だと感じていた。自分を示す言葉も俺から私に変更し、ある研究者から身を隠す為に『ある劇薬』を口にした。その副作用に賭ける為に…な。この薬を飲めば今までの肉体とはさよなら、そして実年齢も…全てを隠す必要がある。この選択は過去の自分の失態をカバーするものであり、『ある人』が生きていると信じていたすがりつきでもある。そう考えれば人間から操り人形に堕ちていた当時の俺とは、別人になったとも言えるのかもしれない。一つ言える事はある。俺は雄介を裏切る事はまず『ありえない』と言う事だ。君達は『何故?』と疑問を並べそうだが、それは今言うべきなのか、どうなのか自分でも判断がつかないが、話してあげよう。


 いいか?ここだけの話だよ?


 私達の耳元で静寂と共に『彼』の声と吐息が耳を支配していく。さあ、どんな旋律と共に、どんな結末と思惑。私と雄介、そしてその下で壊れかけている圭人と言ったかな?後は私のお気に入りの雪くん。その中でも一番鍵を握っているのは『雪くん』なのかもしれないね。彼の手の中に夕月がいる限り、私達は動きたくても動けないと言う事になる。だからこそ雪くんを取り込む必要があるんだ。


 雄介…いや啓介、ふふふ漢字を昔に戻すのなら『慶介』かな。


 慶介は過去の清算と失ったモノを取り戻す『自己満足』の為に動いているに近い行動をしている。本人は無自覚らしいが、感情的になりやすい慶介らしいと言えばらしいな。本当に『昔』から変わらないな。結局私がいないと雄介おとうとはダメになる。だからこの裏を仕切る会長さんと取引をした時は驚きもあるし、過去を金に出来ると考えた。まぁ子供が戦隊モノのアニメを見て心躍るように、私の心も踊ったと言う訳だ。会長は言った。別人になり新しい人生を歩いてみたいと。その為にある新薬を作ったと。私…いや今は『俺』でいいかな?俺は会長の側近としていたんだ。勿論甲斐も俺の存在を知らない唯一の裏の駒として、会長に降りかかる火の粉を壊していったと言う訳さ。いわゆる『ゴミ処理場』と言ってもいいだろう。そんだけ汚い世界にいて、血に溺れながら『狩り』をしていたのは事実だから、今更否定をする気もない。その新薬は二つあった。一つ目は『老化現象を促進』させる薬。一度飲むと30歳以上年を取る事になる。そしてもう一つの新薬は『若返り』の薬。これを一度飲むと30歳若返る薬を会長は自分の夢を叶える為と、自由になる為に、自分の身代わりを必要とした。その時に目をつけられたのが、そう俺。慶介とこんな形で会えるなんて思いもしなかったが、凄く嬉しくもあり、操り人形から解放された俺は、もう人間に近い存在と言っていいだろう。過去と現在はイコールではない。自分次第で全てを変える事が出来る。


 例え権力がなくてもね、私はそう思い、実感しているんだ。




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