被験者
伝言ゲーム。これは研究にも立証されている事実に基づく『心理ゲーム』の一部である『伝言ゲーム』心理学者ユングの文書に書かれていたのと、後は『リアル』の経験に基づき『実験』をしたからこそ出来る技。言葉には善と悪の言葉がある。二つの言葉の彩を操るだけで、人の過去、現在、未来、そして知られたくない『秘密』まで全て分析出来、立証し、それを形として世に出し、成功した事例の一つでもある。人の人生を狂わす方法は二つある。肉体的に潰すか、心を破壊するか。一番理想なのか、自分の手を汚さない後者なのだろうと思うよ。これをマスターするには『紙の上の勉強』だけではカバー出来ないのが現実。一番大切なのは『経験』の一択かもしれない。
【ねぇ……本当の地獄に堕ちようよ、慶介。あたしと一緒に……】
過去の記憶と声が現在と波長を合わせながら、全ての物語は繋がっていく。まるで夢の中にいるような、見えない力で、誰かに操られているような錯覚を感じながらも、この空間に居座り続ける。最高に脳が痺れて、いい感じ。脳内がヘドロのように熱を持って、人間としての知能を奪っていく。全ての行動は考えて起こすものではなく、感覚で起こしていく。これは下積みがあるからこそ出来る。そう、体全身に陰影として俺を支配し続けながら、昔の自分のした人間を被験者として実験をして壊したみたいに。リアルな体験と経験がないと成り立たないのが事実。俺の手法でも、まだ序の口。出来る奴はもっと言葉で人を誘導しながら、支配していく。そう……その人の思考と、行動までも、術者の言いなりになるように、マリオネット化してしまう。俺が被験者に選んだのは育ての親だ。あの人はいつも呟いていた『愛している』と。純粋な綺麗な感情なら受け止めれるし、人間を壊して人形に仕立てるなんて事しない。でもあの人だけは許せなかったんだ。俺を愛していると呟きながらも、産みの親の存在を恐れ、俺を所有物として管理しようとしていた。簡単に言えばペットのように育てたと言ってもいいだろう。だから冷たい『家庭』しか知らないし、あれが、あの環境が俺の普通。耐えれなくなった俺は『非行』へと逃げたのは言わなくても分かるだろう。
いつも言っていたよ……。
愛している、愛している、愛している。
慶介、貴方は私のもの、誰にも渡さない。
愛している、逃がさない為に、貴方の大事な人を壊してあげる。
愛しているの、愛しているからこそ、壊したい。
ねぇ慶介聞いているの『おかあさん』の言葉を。
愛しているから縛りたい。
愛しているから壊したい。
愛しているから潰したい。
愛しているから消えてほしい。
おかあさんのお願いを聞いてくれないの?慶介……。
生きたままでなくていい、抜け殻で充分。
私の『お人形』になってくれるのなら、それは貴方から私へとプレゼントされた『愛情』の形なのだから。絶対に逃がさない、自由にさせない、可愛い私の『むすこ』
あの人はそう呟きながら、俺を自分の物にする為に、沢山の人を傷つけ『犠牲』を作った。俺の命と引き換えに…。それでも悪ぶれたりしない、微笑むあの人こそ、本当の壊れた人形、いや『廃人』なのかもしれない。耐えれない俺は、偽りの家族から逃げるようにして、全てを崩壊へと導いた。足元に甘ったるい声で巻き付いてくる蛇のように、助けを乞う『おかあさん』欲でまみれたあの人が、元に戻る事はなかった。俺がそう仕向けた張本人なのだから。人を傷つける人間を壊すのに、何の躊躇いもない。あるのはただ一つの心理の実験として、どこからどこまでが真実なのかを解き明かしたいと願う、自分の欲望、そのままだった。