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テスト

 溜息の向こうには綺麗な星空が待っている。通話の終えた俺は左手の中指を庇うようにして溜息を吐く。ここまでするなんて普通じゃないのかもしれない。親父に頼んで中指を切断してもらうのなんて『異常』なのだろうな。それでも雪兎を説得させ、納得する材料としては確実なものになるだろうし、甲斐を使えば俺自身の血と照合も可能。書き換えられた『新しい名前』雄介としてだけどな。


 『お前も馬鹿だな、雪くんを自分の味方にする為だけにそこまでするなんて。まぁ雄介らしいがな』


 微笑み、両手を胸の前で組みながら、さっきまでの通話のやり取りを聞いていたような受け答えをする。それに怒りを感じないが、またか…と少々呆れ気味になる自分がいる。


 「聞いていたのか……相変わらず物好きだな。親父は」

 『ははは、嘘をついて彼から指のパーツをもらえばよかったのじゃないか?それか私が用意するか…』

 「はぁ。それじゃあ意味がない。俺の照明をしないと。あそこまでしないと雪兎は動かないよ」

 『次の一手を進める為に…か』

 「そう、だから次は……親父の力が必要なんだ」

 『なるほどな。お前の考えは大体分かる』

 「ほう?じゃあさ、試しに言ってみてよ?親父が思う俺の計画を」

 『これは私がお前の立場だったらする行動だ。興味があるのか』

 「同じかどうか確かめたいだけだ」

 『分かった』


 俺の目つきも親父の目つきも少しずつ色を失っていく。まるで世界が氷漬けになるような冷たさと怪しさを含みながら、同じ立場に立ちながら、会話をする。これは会話と言うよりも『議論』と言った方が正確かもしれない。

 

 二人だけの空間。

 二人だけの遊び。

 二人だけの対決。

 二人の黒幕の。

 

 そこには何の音もない。無音。人間の鼓動も息も生きている感覚も何も存在しない。あるのは獣と獣が心の瞳を開きながら、対決する。虎と大蛇のように……。親父には俺の考えている事が分かるのかな?理解出来るのだろうか。そんな疑問は人としての俺にはあるが、冷酷な作られた『人形』の俺としては何も感じない。心など現在の自分にはないのだから。あるのはどう潰そうか考える、頭脳とゲームに溺れる快楽。これは新しい俺達の遊び。そう『心理』のゲームだ。どちらが主導権を握り、相手の心を『拘束』するのか、今回のこのゲームで本当の立場がはっきりする。そんな確信と予感に埋もれる全身の刺激から逃げれる事などない。まぁ逃げようとも思わないがな。こんな楽しい遊びは、誰とでも出来る訳じゃないから。久々の感覚なのかもしれない。どこまで雄介おれの事を理解しているか『テスト』をしてあげよう。



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