創造主
俺が癒智と色々話して今までの関わってきた事や、どうせいつかは知る事になるだろう過去を遠まわしに呟いていた。今日の癒智は『素直』な子だ。先程の『癒智』は警戒心が強く、俺の本質に気付いているみたいだった。それ位、気づくさ。じゃないとこんな面倒な事を企てれないだろう。毎日移り変わる性格によって対応を変える事で、複数の癒智達から信頼度を上げる為であり、俺の存在を巨大化させて、圭人をはじめ、色々な人間を重圧で潰せれるように、この子を育てるのが一番なんだよ。
他の研究者や圭人は癒智を『失敗作』と決め込んでいたけど、俺はその反対だと思うんだ。まぁ俺自身『成功品』には興味がないのも事実だけど、壊れた商品を修復するのが一番の快楽と言うか。なんというか…。完璧な物はそこで留まる。それ以上はないんだ。何故なら完璧すぎるから『面白味』がない。そして人は飽きてしまうからこそ、壊れたものを修復して『人間』のように動く人形を作ればいい。その為に本物の人間のパーツが欲しかった。圭人が動かしている「研究所」を利用する為に、表では『雄介』と裏では『慶介』として演じきった訳だよ。圭人を操っていた本当の『黒幕』を取り込む事に成功した。そりゃそうだろう、俺と雄介、そして子供達を実験体にしていた『壊命』の創造者なのだから。あの時の子供が生き残っているなんざ、思いもしなかっただろうね。
子供の頃とは違う、今の『研究所』は名前もある、そして安定しているからこそ、欲に走らず、気をつけるべきだったと思う。金のなる木をちらつかせれば、すぐ食いつく。それがあのじいさんの敗因。俺が…いや私が乗っ取って『雄介』として全て支配してやる。
私が創造主であり。兄の雄介も私と同じ立場にする為に。生きている錯覚をさせる為に、二つの名前を操り、別人を装う。顔がそっくりだから、ばれないさ。声も似ているし……身近な人間にしか気づかれない。気づかれそうになったら、言葉で自分の身を隠して、守ればいいだけ。簡単な事なんだ。