鶉
全てのシナリオは今だ完成していないのだ。我らの思惑はまだまだ続いていくのが現実。
「いいのですか、このまま潰して『骨の瓦礫』こそ成功させなくては」
「いいのだよ、これはあくまで第二段階でしか過ぎない」
「二段階ですか?」
「ああ、そうだ。まだ続くのだよ。私達の手でね」
「雄介はどうするのですか?あいつは危ない。私達の邪魔をしますよ?」
「ははは、あいつはもう昔みたいに自由に動けない。飼い犬だと思えばいい」
「…はい」
雄介、君は零落れた。あの時拾って正解だった。元の名前は教えてくれないが、私達のシナリオを形にする唯一出来る策略家だろう。あの頭脳と表の顔は利用価値がある。私達組織の為に、そしてあの研究を我物とするために。鶉よ…私の可愛い鶉の卵。三人の実験体は失敗、そしてオリジナルの死、そこに飛び込んできたその妹。実に運がいい、我らは。これだから、やめられないのだよ。壊命の続きを…。
「さて…次は誰が欲しいですか?」
「…そうやって何度人を取り込んで、裏組織を作るのですか?」
「ああ…君の立場には渡せない情報だ。それより続きの彼らの監視を頼む」
「…はい」
内心不服に思っているのだろうが、自らの立場を弁えて発言をしてもらいたい。君には期待しているのだから。
「裏切りは許されない、それだけ言っときますよ、翠嵐」
そうやって二つのシナリオを我物に出来る日を待ちわびて。また続きの『破壊』のシナリオを描いていく。翠嵐は足早に次の仕事に取り掛かる為に私の元から去り、一人の空間が浮き彫りになった。
「私のしっぽは誰にも掴めませんよ。雄介…貴方にもね」
一人で怪しく自らの笑い声が反響して、身体へと吸収されていくのだ。