クモの糸
全ての輪廻はここから始まったのかもしれない。私は幼い日の事を思い出している。あの時圭人に出会わなければ、こんな想いも、こんな悲しみも、こんな苦痛も感じる事なかったのかもしれない。だけど、私は圭人を選んでしまったの…『雄介』ではなくて彼を選んだ。雄介は不思議な存在だった。いつの間にか私と圭人の間に滑り込みながら、環境に溶けて、私達の一部の存在までになった。雄介の存在は徐々に大きくなりながら、私は圭人と雄介の関係性に気付く事が出来ずにいた。あの時雄介のシナリオ『骨の瓦礫』に気付いていたら、圭人の運命を替えれたのかもしれない。
あんなに優しかった圭人が『快楽殺人者』そして『異常者』に堕ちてしまったのは『雄介』が原因。雄介は頭のいい人。圭人は真面目で、だからこそ簡単には人の思惑にはまる事はない、そう安心していた。そんな私の安心感を見越して、全て計画が進んでいたなんて検討もつかなかった。
「圭人…最近の貴方変よ?」
『何?』
「いつもの圭人と違う気がする」
『気のせいだよ』
「雄介と関わりだして、変わったよ、圭人」
『遊離、何が言いたい?雄介を紹介したのは君だろう?』
「そうだけど」
『それともそんな不安のある人物を私に紹介したという事かい?』
「違う」
『なら黙ってくれないかな?』
順位なんて誰もついていなかった。皆平等だったはずなのに、私が気がついた時には、もう全ての関係性は崩壊へと導き、上下関係が作られたの。全ては雄介の策。私に近づき、圭人と関係を持つ為だけに自分の支配下にする為に、骨の瓦礫と言う名の欲望を実現させる為に、私を取り込み、圭人を利用した。弱みを握られているから言う事を聞いていると思っていたけど、現実は全く異なっていた。そう全ては私のミスなのだろう。雄介は言葉と心理を巧みに操る『詐欺師』そして複数の顔を持つ表裏の主役者。技術を応用して圭人の過去を見つめながら、自分に自ら取り込まれにくるように圭人を誘導しながら、闇に堕とした。それだけで済まず、骨の瓦礫と言うシナリオを私達に告げ『金になる、そして面白い女も手に入れれる』と圭人に呟いたの。私はその場にいなかったけど、チルドレンの一人のミオが私に情報を流してくれて発覚した。もうその頃には圭人は雄介の言いなり…操り人形になりながら『殺人者』へと堕ちていく。自分の手を汚さず、ターゲットを定めて、その人物を首謀者へと塗り替え、自らは遠い所で『傍観者』になる雄介を私は二度と許せないだろう。
私達が『創り上げたチルドレン』は三人いる。一人目は『ミオ』二人目は『ミカサ』三人目は『癒智』
ミオとミカサは実験台のレベルでオリジナルの『ゆち』とは程遠い存在。だからこそ三人目を創る必要があった。この骨の瓦礫には『ゆち』の代わりとなる者と『夕月』が必要だから。不可欠な存在を壊してしまった圭人の為に複数の生きた人間を人体実験しながら、いらない部分はチェーンソーで無理矢理『瓦礫』にする。
そうやって、何年人を殺めてきたのか分からない位前から、このシナリオは動いている。そしてゆちを誘拐し監禁する事で精神を崩壊させ、器だけ残し中身を『夕月』にするつもりだったけど。ゆちは愛していた『圭人』の裏切りと嘘に揺られ、自ら舌を噛み切り自害した。ゆちは何も知らない。圭人は雄介の指示で雪兎を脅し、誰も逃げれないようにクモの糸で縛っている事を。絡み取る事も出来ず、全身の肉に食い込んでいく『クモの糸』人の血を吸い続けながら、狂う『クモの糸』私達も絡み取られていたのかもしれない…。