本当の姿
夕月にまみれる空は心の隙間を埋め尽くしながら、本当の地獄へと誘う。複数の破壊音が再生されながら、体は粉々になり『瓦礫』の山の一部となる。それはすなわち、死体になる序章の事だ。この本当の地獄の門を叩くのは君の選択ミスが原因なのかもしれないね。自分の選んだ道は、後悔するべきではない。泣き言も、ただの弱みと理由付けでしかないのだから。全ての状況を打破するのは、本当に状況を好転したいと願う者にしか出来ない。行動の一つなのだから。人の為の人生じゃない、自分の為の命なんだ。命の炎を燃やせ、私達は再生されながら、ゆちとなる『夕月』に最後の試練を与えるのだ。自分の事を呼び名で呼ばない私は誰だろうね?君達が知っている作品の主人公かもしれないよ。なんてお遊びは、ここまでにして僕達の本当の破壊の音に耳を澄ましてほしいな。
「ほら…、すぐそこだよ」
君達を狂わす本当の地獄の幕開けが毀れてくる。笑いしかでない僕はサイコパス?それも美しい、私、そして僕の命の欠片自分の事を私とも呟き、僕とも表現をする。
「楽しいだろう?」
楽しく呟くのは自らの心のみ。決して外には出さない、もう一人の自分の姿。
「見せるものか、メリットがあれば見せてやるよ!」
煙草の煙に包まれながら、ビデオテープを巻き戻しするように過去の己に戻り、夕月を支配していく。
「これはゲームだ。人を壊す快楽は、これだからやめれない」
両手のある私は、現在の夕月が欲しがるものを複数持っているのだ。両手で体の震えを包み込みながら、抑え込む。まるで感情も制御するみたいに。
「もっと狂わしたい」
ははははは、私の笑い声が幼少に戻る夕月の脳内に再生される。映像と共に。リピートされる、二度と終わる事のない映画のように。
「夕月、君はもっと私を見て、そして思い出すのだよ?」
私の為にな。私を快楽で狂わして、人間じゃなく冷酷な殺人ロボットに変えていけばいいんだ。君の存在は、不可欠。全てのシナリオは私ではなく、夕月の現在のご主人の要望なのだから。
「圭人の計画する事はスリルがある。これだから裏切れない」
ああああああ。私を、僕を狂わしていくよ。体の全ての器官を支配していく麻酔のように、私の心も狂わしてゆく。背中から這い出る悪寒は、快楽の象徴。私が普通の人間から快楽殺人者へと堕ちていける合図でもある。
「圭人、もっともっともっともっと壊してくれよぉおおお」
全身に迸る、刺激から逃げる術などない。こんな楽しい事、逃げたくもない。
ピンポーン――ドアの向こうから、チャイム音の音が響く。これは私の脳内の音であり、リアルとは関係のない雑音でもある。僕は楽しそうに、目を輝かせ、包丁を握りながら、自らの血に染まる。真っ白なワイシャツは、赤く滲んでいきながら、心にも浸食してゆく。
(なんて美しいんだ)
これだから、人間の血の匂いは、痺れるんだよ。快楽に支配された私は人間には戻れない。そして夕月は僕の…もう一人のコピー。
「私の代わりに、私の人生を歩むんだ。その為に生まれてきたのだから」
だから捨てた。あの子供は私達にとってマイナスだ。あの時の状況から見れば、そうするしかなかったのだろう。僕は手元に置いておきたかった。でも夕月の母が私から奪ったのだ。醜い嫉妬心でね。それもそれで面白いだろう?だから人を狂わすのさ、私の手にかかれば人生さえも狂わせれる。
「次は…君の番なのかい?」
君達は震えながら『夕月』とリンクするしか方法を知らない。
「それも一つの快楽だよ、さあ、こちらの世界へとおいで」
はははははははは
ははははははは
ははははは
壊れてしまえよ、どいつもこいつも。
「俺の邪魔するなよ、消すぞ?」
目つきが変わり、そうやって繰り返していくのだ。現在と過去のループ。美しいバラのトゲのように、人間の血を吸い続ける。