復讐の悪魔
沢山の宝石の中で
煌めくのは命の鼓動
それが欲しくて、欲しくて
たまらない……
欲しいものがあった、それは人としての生命。私は人間の姿に恋焦がれながらも、現実を見ている愚者そのもの。
『是露様、夜が明けます』
私達の間の『夜が明ける』と言う意味は、人間達の発する言葉の意味とは違うんだ。それは始まりを象徴する、私達が『ツォイス』として動き出す事を表している。
『時は来たのです、あの娘を取り込むのです』
「分かっている、でもまだ待つべきだわ」
『『何故ですか』』
私の下には複数の幹部がいる。私を中心として成り立つのが『ツォイス』と言う名称であり、私、個人を示すのは『是露』と言う名だけなのだから。
まだ安定しない『御笠』を取り込むのは総計と言えよう。彼女は私達の存在を完全体する為の重要な人物だ。だからこそ、慎重に動かないといけない。
人の知能と同じものを持つのは私、是露だけ、部下達はそこまで優秀に造られていないから、先を読んだり、考えたりする事が出来ない。
――不可能なのだ。
説明をするのが面倒に思えた私は、簡単に伝わるように言葉を創り出す。それが一番、出来損ないには理解出来るのだから。
全ては私、是露を中心に成り立つ世界。
「君達には頭脳がないからこそ、私の命令に従うべきだと思うよ?」
あの化け物の正体を暴きたければ……ね。
金色に靡く髪は風の一部へとなりながら、闇へと消えていく。
当たり前の生活なんてうんざり、彼女はそう呟きながら、怪しく微笑む。その口元の薄いピンクの口紅が綺麗に月あかりの中で輝きながら、新しい物語を創り出していくのだろう。
「私の名は夕月でもあり、癒智でもあるの。全ては欲しい物の為に……」
動き出す鼓動を抑える事は出来ない、どうやって抑えれるのか、考えてみたけど、結論は出ないどころか余計に混乱してしまうの。
だからシンプルに考えるのが一番よね。
自分自身に言い聞かす言葉は魔法の光?それとも悪魔のような闇なのかしら。
私は本当の自分を探す旅に出る。
その先にどんな結末や、化け物が待っていようとしても、私が願い続ける限り、生き続ける限り、止まる事はないから……ね?
「そう思うでしょう?是露」
届かない手紙のような呟きは、いつの間にか風にさらわれ、私と彼女の胸へと刻まれていく。
――そう復讐と言う名の悪魔にね。