第2章:私達の涙
失くしたものは大きくて
手に戻そうとしても
戻らないのが現実
それでも私達は前に進むしか
方法を知らないの
その先に何が待っているのか……
『第2章:私達の涙』
涙なんて知りたくなかった。知らないはずだった。私はいつも冷静沈着と言われた。感情を表に出す事をしなかった。そうする事で、自分の心を隠せれると信じてやまなかった。
弱さを認めなくなかった。私はゆち姉さんとは違うと思ってるし、いくら腹違いの姉妹でも……。
私達二人の容姿が似ているのは、血筋が近いから。父親は同じだけど、母親は違う。私の母とゆち姉さんの母も姉妹なんだ。そして、私達動揺、同じ顔をしている。あの二人は双子で、私達の生まれる前に一悶着あったみたいで、互いに憎しみあっているのが現状。
父が二人の母を見ながら、私とゆち姉さんから母親達を引き裂き、別の継母を用意した。その人が私達が今まで呼んでいた『母』なの。
ただ幸せな日常を送りたいと思っていただけなのに、どうしてゆち姉さんは殺されて、私は自分の身体を失くしたのだろう。
――どこから間違ってしまったの?
愛情に飢えていたゆち姉さんは美味しそうなエサに見えたのかもしれない。
あの人達からしたら、美味しそうで、蕩けて、壊したいくらいに……。
その結果、壊れてしまった、この世に存在しなくなった。そしてゆち姉さんの分身が姿を現したの。
一人の名前は『ミカサ』と言うらしい。
私は、彼女を知っている。初めてあの研究室でカプセルの中で生かされていた時に、私の事を『ゆち』と呼んでいた、恐ろしい子供。今でも思い出すと、あの笑顔が鳥肌を誘うのは言うまでもない。
二人目の名前は『ミオ』だった。
この子は少ししか知らない。ミカサが駄々をこねた時に、大人の対応をしていた印象がある。慶介が言うには一番危うい存在らしい。どうしてそう思うのかは不透明だけど……。
三人目の名前は『癒智』
ゆち姉さんと同じ名前でも『ひらがな』と『漢字』で違う。姿も年齢も違う。だけど一番ゆち姉さんに雰囲気が似ているような気がする不思議な子供。そして私は癒智の体を使いながら、新しい人生を歩こうとしている。
そして私の名前は『夕月』
――いつかは捨てないといけない名前。