表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/156

生末《いくすえ》


 壊れる前の壊者(にんぎょう)はかろうじて息をしていた。虫の音の息と言った方が正しいのかもしれない。感情を持つ事だけに特化した模造品(にせもの)それが『ミオ』だ。


 私と彼は、彼女の願いに勘づいていた。人間でも同じだ。感情を持つ事により、自我が生まれる。そして自分が何者かを理解しているからこそ『人間』になりたいと願うようになっていったんだ。


 誰が考えただろうか。彼女の生末(いくすえ)を彼女自身も、きっと明るい未来を想像していたのかもしれないね。所詮はまやかしなのだが、それでも夢に埋もれる事は癒しにもつながるから、私は否定も肯定もしない。


 私と彼に選択肢があると同じで、彼女にもあったのだから。少し道が変更されて、人間に近づきすぎた心と体のバランスは崩れていったのかな?


 『動かないのか?』

 「……無理だと思うぞ」


 私に聞いてどうするのだろうか。答えは同じ、何も変わらないのだから。脳の破損はない。傷もない。しかしこの子の全身の血は抜かれている。いくら人間に近いからって、これはなんでも酷だろう。生き返らせる……いや複製させる事も無理だと思う。


 『ふうん』


 私の言葉は彼に届いていないみたいだ。何かを考えるような風貌は、まるで別人のように思って、背筋をゾクリと震わせてしまう。


 ほら、簡単に言えばさ、背中に氷を落とされると、反射的に反応するじゃないか?それに近い現象とも思うんだ。体の恐怖か心の恐怖か。たかが氷も、何も分からず、見えない状態でされたら、恐怖を作り出す事が出来るのだから……。


 彼の一言で私達の間の言葉が静寂を招き、崩壊へと堕としていく。それが気持ち悪くも、少し懐かしい感じがして、変な感情が生まれた気がした。


 「何か言いたい事があるのか?」


 無言の空間に耐えれない私は、静寂と闇を切り離す為に口を開き、彼に言葉の手紙を突きつける。逃げれないように、逃がさないように、彼の感情を少しでも、理解する為に……。


 『別に、特に何もないよ?』


 笑顔を作る方法は二つある。それは瞳の奥で本当の笑顔で微笑む事と、瞳が笑っていなくても、口角をあげ、言葉で誘導するだけで簡単に『笑顔』を作る事が出来る。


 ビジネススマイルなんだけどね。よく使う手法だよね。

 私達の間に隠し事は一切あってはいけない。そう言い出したのは私ではなく、彼のほうだ。

 約束をたがえようとしているのが見て取れる。


 (騙せれると思っているのかい?私を)


 (きみ)が今何を考えているのか、当ててあげようか?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ