バッドエンド
あたしの右手と言う名の凶器が、圭人の右目をもぎりとる。
綺麗な瞳を傷つける訳にはいかないから、その周りの肉ごとえぐるの。
そうすれば、ほら、綺麗に瞳を傷つける事なく、あたしのものに出来るのよ、最高でしょう?
『うぐあああああ』
ああ。煩い研究者が鳴く事、本当うっとおしい。
でもね、そのうめき声が、あたしの心とツォイス達を満たしていくのよ。右手の先端は包丁以上に尖っていて、彼の血をタラタラと飲み干している。ズズズと体内に吸収されていく『あたし達』の御馳走は、こうやって満腹感を与えるの。体と脳に。
「貴方の瞳、綺麗ね。いいコレクションになるわ。ありがとう。こんな素敵な『プレゼント』もらえるなんて、感激よ」
あたしの声は彼に届かない。痛みに悶えながら、全身の自由を奪われた状態でも、錯乱しているのが分る。それもそうよね、だって『こんな経験』滅多に出来るものじゃないもの。
まぁ、あたしがした経験も、異質なんだけど、自分で納得し、満足しているから、いいと思うのよね。
――ねぇ、圭人は満足してる?
「痛みなんて、時期に慣れていくわ。本当『動物』みたい。そんな唸り声あげて、何がしたいの?笑える」
『ああああああ』
「会話をする余裕もないの?なーんだ、つまんないなぁ。こんな如きで、壊れる奴なんだね。研究者ってやつは……」
ねぇ、どうしてあんた達二人を『研究者』呼ばわりするのか分かる?
答えは単純よ。あたし達の大切な人、環境、幸せ、を崩壊した張本人だからに、決まってるじゃない。
そしてね、あなたの後ろに隠れてる、ある人物を炙り出して、あたしの手で始末してあげるの。
『おまえ……』
色々な思考に埋もれながらツォイス達と会話をしているのに、簡単に遮る『愚者』がいる。あたしの目の前で、苦痛に耐えながらも、言葉を吐こうとするの。
人の言葉を……。
そんな自由、あなた達にあると思うの?感情の渦で生まれるのは憎悪そのもの。あたしは悪魔に変化しながら、そうやって人の生き血と生命を吸っていく。
「言葉を吐ける余裕なんて、あなたにはいらないでしょ?もう少し食べてあげるよ」
『え』
「右目だけでいいかな?と思ったけど。左目も欲しくなっちゃった。ねぇ?もらっていい?あたしのコレクションにしてもいい?」
残酷だろうけど、彼に選択肢はないの。言葉を発した時点で『バッドエンド』なのだから……。