表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/156

コレクション



 あたしは血だまりの中で生まれた、そして今も血だまりの中で生きてる。

 自分の声じゃない声が脳を刺激しながら、あたしの心と体を浸食していく。

 まるで一つの『ゲーム』みたいで、楽しく思うのは、あたしだけなのかしらね。

 半分人間、半分人を潰す為の存在として、生まれ変わった自分の姿が嬉しいの、楽しいの。


 ……美しいの。


 『ツォイス(このこ)達も、貴方の血が、命が欲しいって言っているから、お仕置きとして、生命を半分吸ってあげるね』


 生命を吸うなんて、出来るのか不思議?あはは。そんな簡単な事なのに、難しく考える必要なんてあるの?


 ないでしょ。


 あたしはね、殆どツォイス(くろむし)に喰われているから、あたしの意思じゃなくても、この子達が望めば、その通りになるの。


 瞳は(かげ)り、体は闇に漂い、心からは赤い血潮の涙を流していく。

 そうすると、足元に沢山の『血だまり』が出来てくるの。


 昔のあたしは潔癖症でね、汚れるのなんて耐えれなかった。靴は新品が好きで、いつでも、永遠に汚れないようにと……。


 でもね、今はなんだか幸福なの、幸せなのよ。

 ぽっかり空いていた穴が、憎悪によって塞がっていくみたいで、安心しているんだ。

 あたしの獲物は、あたしで決める。


 そう心の中で、反発していた時を思い出すわね、数時間前の事なのに、何年も昔の話みたいで、不思議。


 ――いい子ね、あたしと一緒に研究者(えさ)の味を堪能しましょう。


 「何をする気だ」


 あたしとツォイス(このこ)の邪魔をするのは、鎖に繋がれた『飼われた人間』圭人(ケイト)


 ねぇ、この堪能している空間を壊せると思っているの?邪魔しようとして、あたしをイラつかせたいの?


 ねぇねぇねぇねぇ

 そんなに崩壊したいの?


 「おい」


 ああ、うるさいな、あたしの心の呟きと、あたしの息子達の邪魔をするんじゃないよ。


 いつの間にか、体内に注入されたツォイスと言う名の『くろむし』達は、自我を持ち、あたしを操り人形へと堕としていく。


 それもそれで、素敵ね。


 頬が赤くなり、体温が上昇する、この興奮、誰にも止める事など出来ないのよ。


 『ねぇ、うるさいよ。あたしは息子達と話しているの。邪魔しないでくれないかな?』


 瞳孔が開き、猫のように、中心の色が、刃になっていく。これは殺意と悪意。


 『半分吸うだけだから、生かしてやるから、有難く思いなさい』


 あたしは微笑みながら、息子達の言う通りにする、圭人(ケイト)により、近づきながら、彼の右目に触れていく。


 『綺麗な瞳。あたし達にくださいな。その瞳を』

 「え」


 ――その言葉が、最後の音でね、刃物のようなあたしの右手が、彼の目をくり抜くの。


 あたしのコレクションの一つとして。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ