コレクション
あたしは血だまりの中で生まれた、そして今も血だまりの中で生きてる。
自分の声じゃない声が脳を刺激しながら、あたしの心と体を浸食していく。
まるで一つの『ゲーム』みたいで、楽しく思うのは、あたしだけなのかしらね。
半分人間、半分人を潰す為の存在として、生まれ変わった自分の姿が嬉しいの、楽しいの。
……美しいの。
『ツォイス達も、貴方の血が、命が欲しいって言っているから、お仕置きとして、生命を半分吸ってあげるね』
生命を吸うなんて、出来るのか不思議?あはは。そんな簡単な事なのに、難しく考える必要なんてあるの?
ないでしょ。
あたしはね、殆どツォイスに喰われているから、あたしの意思じゃなくても、この子達が望めば、その通りになるの。
瞳は翳り、体は闇に漂い、心からは赤い血潮の涙を流していく。
そうすると、足元に沢山の『血だまり』が出来てくるの。
昔のあたしは潔癖症でね、汚れるのなんて耐えれなかった。靴は新品が好きで、いつでも、永遠に汚れないようにと……。
でもね、今はなんだか幸福なの、幸せなのよ。
ぽっかり空いていた穴が、憎悪によって塞がっていくみたいで、安心しているんだ。
あたしの獲物は、あたしで決める。
そう心の中で、反発していた時を思い出すわね、数時間前の事なのに、何年も昔の話みたいで、不思議。
――いい子ね、あたしと一緒に研究者の味を堪能しましょう。
「何をする気だ」
あたしとツォイスの邪魔をするのは、鎖に繋がれた『飼われた人間』圭人。
ねぇ、この堪能している空間を壊せると思っているの?邪魔しようとして、あたしをイラつかせたいの?
ねぇねぇねぇねぇ
そんなに崩壊したいの?
「おい」
ああ、うるさいな、あたしの心の呟きと、あたしの息子達の邪魔をするんじゃないよ。
いつの間にか、体内に注入されたツォイスと言う名の『くろむし』達は、自我を持ち、あたしを操り人形へと堕としていく。
それもそれで、素敵ね。
頬が赤くなり、体温が上昇する、この興奮、誰にも止める事など出来ないのよ。
『ねぇ、うるさいよ。あたしは息子達と話しているの。邪魔しないでくれないかな?』
瞳孔が開き、猫のように、中心の色が、刃になっていく。これは殺意と悪意。
『半分吸うだけだから、生かしてやるから、有難く思いなさい』
あたしは微笑みながら、息子達の言う通りにする、圭人により、近づきながら、彼の右目に触れていく。
『綺麗な瞳。あたし達にくださいな。その瞳を』
「え」
――その言葉が、最後の音でね、刃物のようなあたしの右手が、彼の目をくり抜くの。
あたしのコレクションの一つとして。