表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
骨の瓦礫  作者: 綾 瑜庵
112/156

私は悪



 元の主人公は男性、そして名前が圭人(ケイト)と言う。彼は全ての物語を握るはずだった『元主人公』だ。そして現在の本当の黒幕、そして主人公の立ち位置となるのは、名を隠した『私』であると言う事実が発覚したのは言うまでも、ない。


 私が見ている、読んでいる、感じているのは、データーの一部であり、事実に基づく一つの結果として、次の計画(シナリオ)を組み立て、仕掛ける為の下準備としての下準備と言ったほうが、簡単かな。


 さてと、物語として記録されている、一部分、二人の人間の目線となり、私も彼等を演じながら、夢想を見てみようか。


 ただの観察、鑑賞、それらより、もっと身にしみる経験としてね。


 ――準備はいいかい?


 私は、溜息にも似た、深呼吸を深くしながら、再び『過去』へと飛んでいく。

 そのストーリーの主役になりたいがためにね。



 瞼を閉じると見えるものは何?

 夢?

 現実?

 それとも

 妄想?



 「うう……」


 喉から搾り出るのは、少しの叫び、私の声は、自由を失い、人としての言葉を忘れかけている獣、そのもの。微かに動く両手をピクリと、確認の為に、振動させながら、ゆっくりと閉ざされた瞼を、開いていく。


 (ここは……)


 ボンヤリする瞳と思考、そして麻痺しつつある感情の中で、抵抗する。最初、ここ(・・)に連れられてきた時は、全力の抵抗をしていたが、毎日繰り返される『調教』に耐えれるはずもない。


 こうやって悪の言葉を唱えられて、人は正常じゃなくなるのだな、自分が経験して実感するんだ。改めてな。


 目は半開きしか開けれない、全部開けてしまうと、管理されている身体に、電流が流れ、理性が飛んでいく。そしてまた、瞼は閉じられ、今度こそ、永遠の眠りにつく事になるかもしれない。


 (阻止した、それ……だけは)


 ガシャンと両手から垂れて、拘束している鎖が、笑いながら、私に囁くのだ。


 今まで人の瓦礫を作り、命を奪ってきたお前が、生きたいと願う事自体、悪そのものだろうと、まるで幻聴のように、黒い声が私を喰らっていく。


 (悪は私)


 そう悪は、お前だ圭人(ケイト)、その声は、また私の身体に密着しながら、背中を撫でる。ゾクゾクと鳥肌がたつのを止める事など出来ない。


 ――お前は、悪、そして私も悪。


 背中にへばりついていた影は、ゆっくりと私の目の前に姿を現す。


 半開きの瞳に、自分の姿が映るようにと。


 「「私は悪」」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ