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二つの視点



 満ちていく体、埋もれていく心、二つの光と闇を感じながら、壊れていくあたしの姿をツォイスが見つめてる。可愛い可愛い、あたしのペット達に姿などない、その代わり、あたしが言葉と言う音を発すると、答えてくれる可愛い子なんだ。


 もう一人の男の心臓を破壊し、そこから全身へと流れる血を全て吸い尽くした、この子達は、満足したのか、あたしの手へと戻っていく。原型に変化していく体の構造はどうなっているのだろうか……。


 「満たされてく……」


 どうしてだろうか、あたしには何の影響もないのに、ないはずなのに、まるで空腹を紛らわすように、お腹に溜っていく、この幸福感。凄く美味しい、お腹いっぱい。


 あたしも、この子達とリンクしているのかもしれないな。


 ズルリと人形のように項垂れる自分の身体を、支えるものなど、何もない。あるとしたら、広がる孤独だけなのかもしれない。満たされてるから、孤独というよりは『孤高』の方がピッタリだね。


 意識が揺らぐのはなんでだろう、力を使い果たした感がして、動かせない。助けてなんて、情けない事言えないけれど、この状況で首を落とされたら、あたしは絶命しかない。


 こんだけ人を殺めて、研究員達の死体の山、瓦礫を作った、あたしは罪人?それなら、実験体を選び、人生を狂わす、ここの奴らは、悪魔?それとも神?ハッ、冗談言わないでほしい、腹抱えて笑うわ。


 歪んでいく視界の奥から、男のような人影を見つけた、もうあたしはされるがまま。


 そう思ってた。




 

 ここはなんだ?戦場か?沢山の死体の山と鉄の錆びた臭いがプンプン、靡いて、私の鼻につつく、まるで刺激臭。正直、ミカサ(この子)に、こんな力があるとは、考えもしなかったし、計算外。この研究所の所長と姿と年齢を薬で入れ替わり、身分を隠している、私からしたら都合がいい事だけど、これはやりすぎではないかと、自問自答しているんだ。


 「……すげぇな、こりゃあ」


 ハッと、いつもの喋りが零れ落ちてしまい、慌てて口を両手で塞ぐ。だが、ここには死人しかいない、誰も私の……雄介(ゆうすけ)の呟きに、耳を傾ける者はいないのが現実。


 ミカサが聞いていなければ、いいのだが……。


 少しの不安が心を暗くしていく、そうやって昔を思い出す、なんだろうな、ミカサの暴れる一部始終を見ていたから、影響を受けてしまったのかもしれない。


 「私は雄介(かこ)を捨てた、そして慶介(いま)にいたるのだから、これでいい」


 その呟きを自分の部下だった人間達に、吐き捨て、ミカサ(この子)を拾う。


 ――猫のように。




 

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