虫と呼ばれるツォイス
監視カメラであたしの行動を監視しているのは何の為なんだろう。ミカサはあくまで子供の頃のあたしをデーター化して作られた人格の一つであるから、そこまで考える事は出来てないと思うんだよね。いざ自分の分身の行動を脳内で観察し続けていたけど、本当自信家で高飛車なのは間違いないんだよね。
自分自身を見つめるって、こういう事を言うのかな?
この環境を異常と思えない、もう一人のあたしは、無能で低能。でも純粋さは残ってて、人を信じる事を忘れない優しさがあると分析してる。御笠が表に出てくるようになってから、少しずつ、その違和感に感じ始めたみたいだけど、遅いよね、正直。
あたしが少し両手を動かすと、それと共に刃のようなあたしの分身達が木箱を切り裂き、潰していく。少しだけ、感情のまま動いてみると、ゾクゾクしている自分を隠す事なんて出来ない。
血管を巡って、疼き回る虫達が、あたしの鼓膜まで浸透していき、壊せ、と命令する。
あたしはね、誰の命令も受けないの。ふふふ、と暗闇の中で微笑むあたしの姿を捉えて離さない無数のカメラ。監視カメラは一台じゃない。この部屋の中で数えるだけで四つある。どの側面から観察しても、あたしの身体の変異を解明する事、無理だよ。
あたしとしおりさんしか知らない、あたし達、二人だけの『骨の瓦礫』なのだからね。
ほらほら、獲物が待っているぞ、あれを壊せ、見えている存在を喰らえ、そして私達に血と言う食事を与えるのだ――
「煩い虫が鳴く事。そんなに欲しいの?お腹すいてるの?だったらさ」
右腕が徐々に人型に戻っていく、これはあたしの意思で戻している。それに同調して虫達も協力するの。不思議な感覚、二つの身体を扱えるなんて、普通じゃないからね。
一つの監視カメラに人差し指を向け、虫達に呟く。
「この光景を観察している奴らを、喰らおう。画面を通して血を吸えばいい……」
不可能を可能にするのが、新しく生まれ変わった御笠の運命そのもの。
あああああああ。
あたしの言葉の合図に虫達が踊ってる。
まだか、まだか、と美味しい食事が来るのを待つ子供のように、なんでこんなにも言う事を聞かないんだろうと不思議に思うよ。
主導権はあたしが握ってるのに、少しの言葉で反応するなんて、反則じゃないの?
ねぇねぇ、聞いてる?
「ツォイス、いい子だから、あたしの言う事を聞いてくれないかな?」
その一言で、落ち着く虫、なんて簡単な存在じゃないんだけどね。