リンクする記憶と現在
目を閉じると暗闇の先に光が見えた気がした。あたしはそれらに手を伸ばそうと必死で、体を動かしていく。
すこしずつ近づけているはずなのに、なかなか届かないのは、まるで御笠の心の奥底のようで、少し切ない。
色々な記憶が脳を拠点にして全身に駆け巡りながら、痺れを創り出していく。ああ……、と壊れたあたしの叫び声が現在を生き続け、そして元のあたしへと覚醒していくのだ。
「約束は必ず、果たす」
過去の残像に語るように、誰もいない空間で呟くあたしは『サイコパス』だ。そして周りは全身の血を抜かれた死体の山があるだけ。
――これが、あたしの瓦礫の音
目をギョロリとゆっくり動かしてみる。血塗れの自分が鏡に映りながら、人間の命を吸い続けている。ねぇ聞こえる?あなた達には、この飲み干す瞬間の命が散る鼓動が……。
もっと聞かせてよ、そうすればこの幸福感を、もっと感じる事が出来る。ほうっ、と光悦に酔いしれる味は麻酔の味。痺れて、漂いながら、次の獲物を探している。
あたしの目、色々なものを見る事が出来る目、やっと取り戻せた。
そうやって移り変わりながら、斜め上へと視線を向けると、監視カメラが輝いてる。ジーッと見つめてくるカメラは、獣になり果てたあたしを映しながら、ゆっくり稼働していくんだ。
誰かが見ている、この光景を、そして喜んでいる声が聞こえた気がした。
目を瞑ると、監視カメラを通して、二人の男、研究員に辿り着く事が出来る。
まるで超能力者みたいだ。
あたしは声にならない鳴き声で威嚇をし、奴らを逆に監視している……。
「見つけた」
「隠れてないで、出ておいで」
「綺麗に血祭にしてあげるから……描いてあげる」
心で言葉を呟きながら、唇だけ無音の状態で動かす。カメラに映った唇から、あたしが何を伝えたいのか彼らには理解出来るのだろうか。
無理だよね、きっと。
人間というものは『実験体』が覚醒した事を喜びながら、この光景に魅入っているはずだから、あたしの声なんて届きやしない。
癒智は全てを管理されていたから、こそ把握できるし、夕月は記憶操作をし、行動の道順を奴らが作り上げたのだから、簡単に操る事が可能。
でもね、あたしはどうだろう。奴らの実験体の一つであったあたしは、他の子達とは特殊で、遊離研究員の支配下ではないから。
一人、一人に担当の研究員がついててね、あたしにも勿論いるんだけど。それが『しおり』さんなんだよね。彼女は他の奴らとは違う。
どちらかと言うと『あたし』に近い思想の持主で『同士』みたいな存在かもね。
今となっちゃ、そんな事、どうでもいいわ。