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50.〈砂痒〉星系外縁部―6『防空識別圏―2』

「羽立、大尉、情務長、として意、見具申い、たします。――本艦は、現、刻をもって、た、だちに総、員戦闘配、置を発令。可及、的すみ、やかに不、測の事態へ、の態勢、をととの、えるべきと考えま、す。

「それ、と同時に、船務、長。――通信解、析をおこ、なうこと、になるでしょ、うから、可能であ、れば主電算、機の演算区、画および記、憶区画、を二ブロック……、い、や、三ブロック、機能分離(セパレート)し、て、()()()()()してください」

「……総員戦闘配置発令の理由は?」

「貸与の開始時期と期間を教えて?」

「……ええ」

 難波副長と稲村船務長――ふたりに問われ、羽立情務長は、ひとつゴクリと唾を飲みこんだ。

「まず、総、員戦闘、配置をた、だちに発、令すべきと、考える理由で、すが――現、状から推測し、て、私たちの前、方には二乃至(ないし)三、群の定置機、雷(せき)が展開し、ている可、能性がきわめ、て大であるからで、す。

「定、置機雷堰、は、その、名の通り、自恒星、系と隣、接恒星系とを結ん、だ航路(ライン)上――もっ、とも『敵』が侵入して、くるだろう可能性が高、い、線上に敷設され、敷設が完、了して以、降は、その空域を動、くことはあ、りません。

「である、に、もかかわらず、あ、らかじめ定め、られてある配置空、域から動、いたと(おぼ)し、き機雷、堰がある。

「確、実なところ、は、これまで、に実行してきた、スペースサーベイのデ、ータすべてを検、証してみないとわかり、ません。しか、し、おそらくは、この空、域を数十隻をこ、える大規模、艦隊が航過した。――定置である筈の、機雷堰が、そもそもの担、任空域からこ、こまで移動してきたのはそ、の艦隊を(よう)(げき)しよ、うとしてのことではな、いか。

「更に言う、なら私たち……、〈あやせ〉は、その艦隊、と航路をほぼ同じ、くしているのでは、ないか――現刻をもっ、ての総員戦闘配置、発令、を具申するのは、そ、う考、えた結果です」

「な……ッ?!」

〈纏輪機〉から流れ出す声にいつしか聞き入っていた艦橋内にいる誰か……、いや、おそらくは全員が思わず息を呑む。

 当然だろう。

 遠路(はる)(ばる)としか言いようのない距離を踏破し、目的地に辿りついた矢先、自分たちの前方どこかに正体不明の……、いや、状況からして言い切ってしまって構うまい――『敵』がいると聞かされたのだ。驚かない方がどうかしている。

「索敵機、雷の反応からす、ると、行動ルーチン、は()()()()に、回、帰しているようですし、当該の艦隊、が航過してから、既にそれ、なりの時間が経過し、ている。――本、艦が直近にそれ、と接触する可能、性は極めて低いと推測で、きます。ひとまずは安、全と言っても構わない、でしょう。

「しかし、なが、ら定置機雷堰の方は、別です。作動状態が平、常状態にあ、る――あるのではないかとし、ても、〈砂痒〉星()系最外縁()に展開して、いる堰は、ひとつあた、り包含す、る機雷が八〇〇〇基強、におよぶ大規模、なものです。すべ、ての機雷、が健常であ、るとは確信できませんし、誤動作、に対する用心は必要、なもの、と考えます」

「ふむ」

 難波副長はうなずいた。

 機雷堰とは、機雷多数によって構築された航宙船の航行制限空域、また、機雷の群そのものを指す語である。

 規模数量の大小()()はケースバイケースで一定しないが、〈砂痒〉星系最外縁に展開しているそれは、羽立情務長の言葉の通り、堰ひとつあたりにつき、それを構成する機雷数が八〇〇〇基以上にもなる最大規模のものの筈だった。その封鎖空域に、味方のではないだろう航宙船の集団が進入、航過していったと思われる。――羽立情務長はそう言ったのだ。

 確かに、もしもそうであるならば、その接近に気づいた索敵機雷群が、当初展開していた漂遊空間をはなれ、一つ所に密集している現状も理解できる。

〈あやせ〉が探知した索敵機雷の数、それから飛来してきつつある〈(Call)(-bird)〉の六基という数から導き出したのだろう推論に、難波副長も同意せざるを得なかった。

「……なるほど。そう考えたうえで、〈LEGIS〉とコンタクトを試みようということなのね。では、情務長が言った主電算機セパレート部分の貸与開始時期は、〈コールバード〉とのコンタクトとタイミングを合わせる感じで良いのかしら? あと、セパレートブロックの区分()()()については、どれくらいを想定しているの?」

 同様に、結論をおなじくしたらしい稲村船務長も、うなずきながら羽立情務長に確認をとった。

〈LEGIS〉――〈LEgion Group Implication Supervision〉。

 機雷は、それがどのような種類、用途のものであれ、自機に指定されてある守備空域への進入艦艇を探知すると、ただちにその対象に追尾、接触、識別を試みるよう行動ルーチンが組まれている。

 しかし、機雷は兵器としての性格上、単独で運用されるものではなく、同型多数の機体によって堰を構築――特定の空域を封鎖しようとする為のものだ。それが何ら統制を受けることのないまま、たとえば同一目標に向かって我先に群がってしまうようでは、相手が単艦ならばともかく、複数となると対応にムラができるし隙も生じる。場合によっては、むざむざ囮を掴まされてしまうなど、不備につけこまれ、堰を無効化されてしまう危険さえある。

 したがって機雷群を効率的に運用するには、堰全体があたかも一つの有機体であるかのような統括管理がなされなければならない。

 こうした認識のもと、機雷群を束ね、変転する状況をみずから自動的に処理するシステムの研究開発がなされることとなった。

 つまり、(サイ)(ドロ)(ーブ)の極めて少ない指向波を相互連携用の通信に用いて個々の機雷をネットワーク。平時においては機雷が広範囲に散在することをいかしてVLBI(Very Long Baseline Interferometry)モードでディープスペース域の観測を実行し、そして、堰への進入が予測される航宙船を探知した場合は、接触から交戦にいたる各段階の対応行動に最適な機体を群の中から抽出し、()()()()事にあたらせる。――そうした対応行動を可能とするための仕組みだ。

 それが〈LEGIS〉――〈群体構造統制アルゴリズム〉だった。

 ちなみに、その〈LEGIS〉によって、堰内の機雷各機が担任する行動区分は、以下の四種。

 敵味方の識別、誰何(すいか)をおこない、相手の耳目を集める囮の役目も担う〈Call-bird〉、

 進入艦艇防御火幕の射程外に機を置き、現在位置を常に報せつづける〈Stalker〉、

 進入艦艇が敵性と判断された場合、それを撃退すべく攻撃を仕掛ける〈Pursuiter〉、

 そして、機雷群の守備空域から離脱した航宙船の追尾観測をおこなう〈Tracer〉。

――である。

 そして、この中にあって、堰への進入が予測される航宙船に対し、もっとも早期に対応行動にはいる〈コールバード〉は、〈LEGIS〉によって抽出される機数は通常、二乃至三機とされていた。

 それを知悉(ちしつ)していた羽立情務長は、だから〈あやせ〉の前面に展開する機雷堰が複数だと考えたのであったし、

L()E()G()I()S()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 機雷は、それが単体の場合、たとえばその情報処理能力を個人用コンピューター相当だとすると、ネットワーク接続され群体構造となった堰は、接続基数が増すにしたがい、ワークステーション、スーパーコンピューター相当と、その性能を向上させてゆく。――そうした予備知識によって、であれば、〈LEGIS〉と交信をおこなったなら、堰が己の内に蓄えたであろう『敵』艦隊に関するデータを取得できるのではないか、とも考えたのだ。

 その目論みを稲村船務長も察して、羽立情務長が要求してきた主電算機機能の一部貸与――堰との通信につかうのだろうその部分をどのレベルにまで本体から分離をさせるのか確認したのだった。

「貸与開始時、期は、船務長が指、摘された通、りです。貸与ブロ、ックの区分、レベルに、つい、ては、『物理遮断』でお願いしま、す」

 羽立情務長はこたえた。

「一応こ、ちらでも通、信用、解析用の専用、電算機には、回路上、バッファを三、重にかま、すつもりですし、貸与、していただ、く分は、あくまでも予備。直接的な作業、に使、用する予定はあ、りませんが、念のためです。分離した、と、言っても主電算、機の一部であるのは変わ、りませんから、万が一にもウィルス混入、等の危険に、は晒せませんの、で」

「慎重なのね」

 微苦笑する稲村船務長に羽立情務長はかるく肩をすくめてみせた。

「情報、は欲しいです、が、今回、私たちが、相対する『敵』は〈USSR〉宇宙軍、で、ある可能性が、高いです。こと電子、戦技術、に関しては、残念なが、ら〈U()SS()R〉()の方が、一、枚も二枚も上、手ですからね。用心の上、にも用心を重ねるべ、きでしょう」

「確かにそうね……、と、〈コールバード〉複数機から本艦に向けての指向波照射を確認。――船籍要求信号と認む」

 なおも何事か言いかけた稲村船務長が、その途中から口調を引き締めたものにあらため、報告した。

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