あたしは視線が怖い
あたしは、人の視線が怖い。
誰かと話しているとき、両親とか親しい友人とかならよいのだが、親しくない人や赤の他人の視線に触れる機会があると、心拍数が上がり、胸が痺れるように苦しくなり、どこに視線を向けていいのかわからなくなる。
お店で買い物をし、会計のときなど、支払いが終わるまで、店員さんを直視することなどできず、目を泳がし、俯きながら、あたしはとんでもなく気まずい思いにかられる。
お金を払い、品物を受け取り、おつりがあるのならそれを受け取るだけなのに、その数十秒のわずかな時間に、どうしようもなく人の視線を恐怖してしまうあたしがいるのだ。
目が怖い。
視線が怖い。
そこに宿る意志が怖い。
よく知らない誰かにあたしを見られているが怖い。
判断されているのが怖い。評価されているのが怖い。
あたしのことなんて、誰も気にもしていないのに。そんなことわかっているのに、反射的に、反応的に、怖いという感情が洪水のように胸の奥から溢れてしまうのだ。
お母さんはあたしの視線に対する恐怖を「そんなの慣れよ」と笑いながらいうけれど、一向に慣れる気配なんてない。生きていくには、人との関わりが不可欠なのに、どうしてこんなろくでもない恐怖をあたしは抱え、あたしの意志とは関係なく、生理現象のように、人の視線を感じた瞬間、体が反応してしまうのだろうか。
たぶん、自分の意志ではどうしようもないことが沢山あるのだと思う。
人が自然災害に抗えないように、自然発生する感情には意志では太刀打ちなどできないのだとも思う。
だから、あたしは、生涯、他人の視線への恐怖に耐え続けないといけないのだと思う。
それは、たぶん義務みたいなものなのだろう。
そうは思っても、あたしはそれを、すごく辛く感じるんです。
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