新しい僕
アナウンスで目が覚めた。窓の外を眺めるとロンドンの街が見えた。図書館で何度も見ていたから覚えている。ここはイギリスだ。手汗がすごい。なんたって僕はついにやって来たのだから!
空港に到着すると彼女の姿を探した。 僕の名前を書いたプラカードを持った女性の姿を見つけた時は、すぐに彼女だと分かった。長かった髪は短くなり、少し太ったようだ。でも優しい瞳は変わっていない。喜びが込み上げて来た。はやる気持ちを抑えて、呼びかけた。彼女は僕を見て、歓声をあげ、駆け寄ってきた。それから力一杯僕を抱きしめてくれた。大きな両手に包まれて僕の実感はますます強くなった。
「貴方とまた会えてうれしいわ。よくきたわね。」
振って来た彼女の声と言葉。最高の幕開けだ。僕は嬉しくて、嬉しくて、目一杯彼女を抱きしめ返した。
空港からは彼女の車に乗った。車窓から見える日本とは全く違う街並みを僕は心地よく受け入れた。素晴らしいと思う。
「ここから随分かかるの。寝てていいわよ。」
彼女は音楽をかけた。ゆったりとした音色に乗せて、男の甘い声が流れ出した。僕は本当に疲れていて寝足りなかったので、彼女の言葉に甘えた。それに体力を蓄えておきたい。祖父母に会うのだから。




