見えない世界
それから僕は弟を無視した。奴はだいぶまいったらしく、三日も過ぎれば、僕に許しを乞うようになった。
義母はそんな僕を見て、弟と仲直りするようにと命じた。僕達は儀礼的な仲直りをした。義母はそれで満足したようだったが、弟は違った。僕の周りを鬱陶しいくらいについてまわり、何かと僕の世話を焼いた。
「よせよ。」
風呂上がりの僕の髪を乾かしている弟に言った。
「嫌だね。」
今の僕はこういうことをされると、決意が鈍ってしまう。頼ってしまう。
「頼んでないだろ?」
「俺がしたいんだよ。」
「打算的だな。」
「はは。いつか分かるよ。俺は本気だって。」
僕は俯いた。これってなんだ。愛って奴なのか?そういえば愛は行動だって僕言ったな。
「やっと口きいてくれたね。よかった。この間はごめん。俺兄さんを傷つけた。」
「その話はやめてくれ。」
謝罪なんぞ求めてない。僕はお前のことなんか気にしたりしないから。
弟は黙ったまま僕を抱きしめた。背後からキスがおまけで付いて来た。それから弟は僕の肩を撫で、腹を撫で、腰を撫でた。僕は弟を突き飛ばした。
「慰めようと思って…」
「身体触る必要はないだろ。」
「身体ごと抱きしめたほうが兄さん安心するかと思っただけさ。」
「嘘だな。」
弟は苦笑した。
「もういいだろ、早く出て行け。」
「分かった。」
「僕は折れないぞ。お前の努力なんて意味ないからな。」
弟は僕の頰にキスした。
「それと!もう二度と僕に触れるなよ。」
「ごめん。」
弟は僕を置いて部屋から出て行った。
早くこの家を出なくてはならない。僕の頭がおかしくなりそうだ。平穏な生活、弟や義母のいない生活、それが叶うならなんだっていい。僕が絡め取られてしまう前に、逃げられなくなる前に、さっさとイギリスにいってしまおう。あいつらの都合のいいようにされれば、きっと僕は死んでしまうのだ。




