見えない世界
ズルズルと日本に居座ってしまっていた。そのためにイギリスからも電話があったので、事情をかいつまんで説明しておいた。祖父母は僕の心配をしていた。
僕は自身の身の振り方について悩んでいた。最善の選択を考えた。父親は?静香という女は気に入らないけれとも…義母は?僕の親になろうとしているが……弟との問題だってある。
「メアリー?僕だよ。」
一番強力な味方を呼んだ。事情を説明した。
「父親は絶対だめ。」
「やっぱり?」
「ええ。」
「でもさ、僕を無視するだけだし、気にしなければいいだけかもしれない。むしろ、干渉してこないからいいかも。」
「虐待するような親の元からは離れないとね。」
「虐待って…大げさなだよ。」
「まあ!宗一郎、あなた自分がされたことが分かってなかったのかしら?」
「そんなのいちいち覚えたりしてないんだ。」
「まあ、私も覚えたりしないわね。だけどね、義母について行くほうがましだと思うのよ。そうしたほうがいいわ。」
「メアリーがそう言うなら、そうだろうね。あー、君はどう?最近。おじさんについて行ってさ、なんかあった?」
「別に何もないわ。いつもと同じ。毎日が過ぎて行くだけよ。」
「……君に会いたいな。会って話がしたいんだ。」
「じゃあ、早くイギリスに帰ってきてね。」
「ふふ、そうだなあ。」
僕の気持ちが定まった所で父親と義母に連絡をした。
「何かあれば頼るといい。」
「うん。」
それ以上の会話はしない。これで、さようならだ。
義母にも連絡を入れた。
「お願い、帰ってきてちょうだい。」
長々とした説教の後で義母はそう言った。
僕は野宿したり、安いホテルに泊まったりを繰り返していた。思い起こせば、そうした生活も1週間に及んでいたのであった。




