天井の裏
「その写真をあげるわ。手紙も読んでもいいのよ。その中から欲しいものは持って行きなさい。」
母は僕に会うことができた。よかった。
リジーとヘンリーが母を裏切った。
祖父母は母を追い出した。
カムラとダニエルは母を助けた。
僕の頭の中は混乱していた。手に持っていた手紙の束を貪るように読んだ。手紙の中の母は幸せな結婚生活を送っていた。優しい夫、愉快な友達、刺激的な異国風土……それらが嘘だと直感した。何もかも嘘だらけだ。
「どうして嘘なんか……」
「おじいさんとおばあさんは優しい?」
「はい。」
「リジーとヘンリーは?」
僕は黙って頷いた。カムラは悲しげに目を伏せた。
「皆負い目があるの。キャシーがあんな風に死んでしまって、貴方に優しくしてあげたいのよ。」
「どうしてこれを僕に教えたんですか。」
カムラはこっちを見た。その瞳には力がこもっていた。
「貴方がここに来て、皆の考えが分かったわ。後ろめたい過去を避けて、キャシーの息子である貴方に嘘を教えていた。それが見過ごせなかったの。キャシーが浮かばれないわ。あんまりにも可哀想よ。」
理想郷はなかった。それは夢の中に存在するものだからだ。むしろここは理想郷だと信じ込んでただけだったのだ。僕を受け入れてくれる母は、大地は、イギリスにあるのではないのだ。




