僕
僕の孤独はより一層深まった。
一番早くに起きて、用意された朝食を食べ、学校に行き、夜遅くに帰って来て夕食を食べ、遅くに風呂へ入って寝る。僕の毎日はこんなものだった。息を殺して生活した。父親や義母との会話は滅多になかった。弟は僕に近づいてこなくなった。中学生になった僕は弟とは違う学校に通っていた。学校は僕だけの世界だった。唯一の避難所であった。
一度だけ弟が僕に会いに来たことがある。
僕は普段閉門まで図書館で時間を潰している。そして日が落ちて在校生がほとんどいなくなってから帰る。特にその日は酷い雪でまたとても寒かったので、人の姿は本当に少なかった。
校門の前で、弟は一人僕を待っていた。一緒に帰ろうと弟は言って、僕の腕を取って歩き出した。傘を持たずに歩く弟の肩は雪で濡れている。傘をさしていた僕は思わず弟の手を掴んだ。ぞっとするほど冷たかった。僕は弟を自分の傘の下に入れてやった。弟の顔は寒さのせいで赤く、鼻をすすっていた。寒さのせいだろう。弟は僕のコートのポケットに手を突っ込んで歩いた。仕方のないことだと思い、僕は好きにさせていた。家の前まで来た時弟は再び口を開いた。
「怒んないの?」
「何が?」
「父さんと母さんのこと、嫌い?」
「、、、、嫌いじゃない。」
弟は僕のコートのポケットから抜いた手で僕の手を握った。冷たい。
「僕のことも嫌いなの?」
なんと答えればいいか分からなかった。
少し悩んで答えた。慎重に言葉を選ばなくてはならない。
「好きだよ。」
弟は黙って僕の目を見ていた。覗き込んでいたと言うのが正しい。弟は僕の背丈より少し高くなっていた。
「.....うん。わかった。」
弟は僕を残して家の中へ入った。




