天井の裏
なんとかまとめていきたいと思ってます。
およそ一ヶ月後に僕らは別荘を後にした。カムラは最後まで僕に食い下がり、僕に父親への土産物を押し付けた。僕はこのカムラという女性のことを嫌いになってしまった。ダニエル氏は僕のことを可愛がってくれた。彼は囲碁が好きらしく、子供達にその手ほどきをしてくれた。子供の時に弟相手に囲碁を打ったことのある僕はダニエル氏についていくことができたのだった。彼のように優しく受け入れてくれたのなら良かったのに……カムラへの不快感はぬぐい切れなかった。
旅行から帰って少しすると、僕はメアリーの家へ向かった。メイが目ざとく出掛ける僕を見つけて呼び止めたが、聞こえないふりをして自転車で走った。自転車でメアリーの家は遠いが、いい運動にもなる。彼女の家までたどり着いた時、家の外で庭いじりしているメアリーを見つけた。
「あら、帰ってきたのね。」
彼女は家に引っ込んでコカコーラを持ってきてくれた。僕は額の汗を拭った。晴れてる訳ではなく曇り空であるのに蒸し暑い。風もない。ありがたく飲み物を頂戴しながら、庭いじりする彼女の背中を見つめていた。
携帯が鳴った。メイだ。
「もう!なんで出てくれないの!」
「ごめんごめん、運転中だったから。」
「聞こえてたくせに無視して行っちゃって、すごく傷ついたのよ!今どこよ!」
「うーん、自転車で30分くらいの所。」
適当に誤魔化していると、横からメアリーの手が伸びて携帯を取り上げられてしまった。
「ごめんなさいね、今忙しいのよ。」
メアリーは電話口でそう言うと、電話を切ってしまった。メアリーは僕の方を見て笑った。
「家の中行きましょ。」
家には誰もいなかった。メアリーはお茶とお菓子を出してくれた。僕は黙って待った。メアリーが話すのを。しかし彼女は一向に話し出さなかった。沈黙に負けて僕の方から話しかけた。
「旅行楽しかったよ。カムラは鬱陶しかったけど、帰りに土産持って行けって、日本に。あの人父親と今も仲が良いんだろうな。」
「無神経な人ね、何も知らないんじゃない?」
「知ってるよ。でも嫌なことは聞こえないふりをしてるのかも。」
「貴方のことを傷つけたのよ。」
「僕は大丈夫。」
メアリーはお茶をテーブルに静かに置くと、僕の隣すぐ近くまで寄ってきた。そして僕に膝枕を所望した。
「メアリー、お父さんは?」
「貴方と入れ違いに出て行ったわ。今日は帰ってこないの。仕事よ。」
「ふうん。」
僕はメアリーの髪に触れた。それから顔の輪郭を撫でた。ちょうど猫を扱うように。
「残念ね。」
「何が?」
メアリーは何も言わなかった。




