天井の裏
カムラは僕のことを気にかけているらしい。さりげなく父親の話を持ち込んでくる。大体父親を擁護するような話ばかりだった。僕はカムラと二人きりにならないように努めた。二人きりにならなければ一緒にいて楽しい人物なのである。
カムラが写真を撮ろうと言ったので写真を撮った。僕は写真に拘っていた頃を思い出した。それは今やどうでもいい事になっていた。
滞在して一週間ほど経って、僕はメアリーに電話した。夜も更けた頃なので繋がるかどうか分からなかった。
「どう?家族旅行は?」
「メアリー!結構楽しいもんだよ。」
「そう。」
「毎日アレクやチャールズ、ウィリアムとメイの相手をしてるんだ。バーベキューやクリケット、まあじゃれあってるんだ。」
僕は旅行の愚痴のような事を沢山聞いてもらった。メアリーは相槌を打って黙って聞いてくれた。一通り話し終えると、メアリーから電話を切ってしまった。忙しいそうだ。
僕が部屋に戻るとアレクとチャールズは仲良く一つのベッドに収まっていた。気まずい夜の後二人の謝罪をうけた。とても反省しているらしく僕は許した。部屋の机の引き出しを何気なく開けてみると、数冊の本と手帳を見つけた。手帳は母のものだった。名前が書いてある。僕はそれを自分のバッグの中にしまった。ここで読む気は無かった。母の事を知りたいとは思ったけれども、どうも胡散臭かった。何故僕のベッドサイドにあったのか、そもそもこの場所はカムラが指定したのであったので、彼女が何か僕にメッセージを伝えたくてわざと置いたのではなかろうか。だとすれば名前が書いてあるからといっても本当に母のものかも疑わしい。要は日記を慎重に扱おうと思ったのだ。決して母への愛を貶めているのではないのだと言い聞かせた。




