天井の裏
祖父の弟の別荘というのは、緑に囲まれた、ログハウスであった。車から降りた一行を出迎えてくれたのは、巨漢の男性と褐色肌の女性だった。男性は祖父母と同年代だが、女性はリジーと同じくらいの歳だろう。柔和な笑みを浮かべた二人は祖父母やリジー達とハグをしていく。
褐色肌の女性が僕に向き合って、手を差し出した。
「初めまして。私はカムラ、こっちは夫のダニエル。よろしくね。」
カムラはインド人で、ダニエル氏とカムラは歳の差が17もある夫婦だという。カムラはとてもよく喋る人だった。身振り手振りを加えて、楽しそうに話す。僕にやたらと話しかけてくる。僕に会いたかったと言った。ダニエル氏は妻の話に相槌を打って耳を傾けていた。彼は、僕はキャシーに似ていると、何度も言った。別荘には写真がたくさんあった。その中には母の写真も、母の隣で微笑む父親の写真もあった。
それらを指差してカムラが言った。
「これはもう20年ほど前の写真ね。貴方のお母さんとお父さん。とっても、仲が良かったんだから。私キャシーの惚気話をたくさん聞いてあげたのよ。」
「そうだったんですね。」
カムラ氏はさらに勇んで、まくし立てるように僕に言った。
「そうよ!貴方のお父さんはね、本当は素敵な人なのよ。優しくて、ハンサムで、話し上手、若い頃に起業して妻と子供のために働くんだって話してたのよ。」
僕は何も言わなかった。ただ写真に写る母の姿を目に焼き付けようとしていた。
ダニエル氏が近づいて来た。途端にカムラは父の話をやめてしまった。
「ねえ、こっちに来て私とダニエルに貴方のこと教えてちょうだい。」
僕は写真から目をそらして、愛想よく微笑んで見せた。
無性にイライラしていた。夜になっても気分は晴れず、ベッドから抜け出して別荘の外へ出た。2時間、歩いたり、休んだりをして別荘の周りをウロウロしていた。僕とアレクとチャールズは相部屋だったのだが、外から窓を通して自分の部屋を除いた時、よろしくやっている二人の姿を見つけた。チャールズの背中が激しくうねり、それに合わせてアレクの髪が乱れた。二人は声を押し殺して事に及んでいたのである。僕は側の小石を掴んで、木立の方に投げた。それから勢いよく駆け出して部屋まで帰った。扉の前まで辿り着くと、ノックしてから部屋の中にはいった。せめてもの情けのつもりだった。部屋に入るとアレクとチャールズは眠ったふりをしていた。僕は上着を椅子に放り出して、シーツを荒々しく引っ張りあげた。靴を脱ぎ捨て、音をわざと立てた。二人の方を睨みつけてからシーツに包まって寝た。




