鐘が鳴る
21日から日本に帰るということで、僕らの旅行はその前に行くということになった。メイやウィリアム、ヘンリー氏とリジー、祖父母、そんでもってチャールズとアレクで旅行だ。祖父の弟が所有する別荘にお邪魔するということらしい。気づいていたが、母の実家は裕福な家系であるということだろう。
夕食の後に、愉快に話し合いを繰り広げた。隙あらば
身体をもたらさせ、キスをしようとしてくるメイをやんわりと牽制した。皆驚いていたけれど、メイの僕への好意をまともに取り合ったりしなかった。
団欒も少しすれば祖父母の一声で解散になった。
僕と祖父母はそれぞれ自室に入った。
今日は色んなことがあったので疲れていた。携帯を開いて何気なくメアリーに電話しようと思った。彼女は今夜一人だからだ。
「やあ、メアリー。」
「こんばんわ。」
「聞いてよ…」
それから僕らはとりとめないことを長々と話した。メアリーは思い出したように言った。
「そういえば、あの後どうなったの?」
「うん?」
「弟さんよ。」
「……断った。」
僕は弟の涙を思い返した。それから電話越しの弟の声と息遣いを思い出した。自然とため息が出た。
「はあ。」
それからなんとなく頭の裏をかいた。僕は話題を変えようと思った。
「メアリー、お父さんは帰ってきたの?」
「まだね。心配してくれてありがとう。」
「そう?」
僕がおどけて応えてみせると、電話越しでメアリーの笑い声が聞こえた。それから少しして電話を切った。
僕はベッドに寝転んで考えた。考えずにはいられなかった。弟について。僕が弟を振った時、弟が泣き出してしまった時、僕は……僕は……
僕は弟を可哀想に思う。あいつは僕のことを知らないし、僕もあいつのことを知らない。だからそういうことだ。弟は一人合点して僕を好きだという。その気持ちは尊重するけれども、認めるけれども、そこから先はない。未来はないんだ。あいつも早く目が覚めればいいと思う。




