悲しみよ、こんにちは
これから更新遅れます。
僕はメアリーと遊びに出かけることにした。二人で美術館へ行くのだ。メアリーは美術が好きなので、僕がチケットを祖父母から譲って貰ったのだった。
駅で合流して、電車に揺られて、少し歩いて、そうしてたどり着いた美術館はイギリスでも随一の美術館だ。多くの人で溢れている。日本の美術館と違って観光客が多く様々な言語が飛び交っていた。僕はそれに少しワクワクしながら、堅牢な門をくぐった。
僕は美術を楽しんだことはないけれども、メアリーの真似をして、絵の前に釘付けになったり、説明を熱心に聞いたりしていた。
「宗一郎、見てこの絵。」
メアリーが僕に見せてくれたのは、小さなキャンパスに描かれた絵だった。暗いキャンパスの蝋燭が一本あり、それはある女性の姿を露わにしていた。女性は背中を丸めて何か手仕事をしており、その背には赤ん坊がいた。白い滑らかな肌にで赤みがさしている頰。赤ん坊は静かに眠っているようだった……
美術館を出て、近くのカフェに寄った。メアリーと僕は、あれが良かった、これは良くなかったなど各々の感想を言い合った。
「宗一郎、あの赤ちゃん覚えてる?」
「うん。」
「ねえ。どう思う?あの赤ちゃんは、あの絵の人の子供なのかしら?」
「どうだろうね。」
「だって!私思うの。あんなに丸くて綺麗な赤ちゃんはね、あの女の人の子供な訳がないのよ。」
僕はあの絵を思い出した。ほつれた髪を束ね、眉間に皺を寄せて仕事をする女性と赤ん坊の寝顔。仄暗いキャンパスの中であの赤ん坊は異様な存在感を放っていた。だからメアリーの言うことは何となくわかる。自然と言葉がついて出た。
「……あの赤ん坊は何なんだろうね。」
「なんだか残酷な絵だわ。」
メアリーは悲しげにそっとつぶやいていた。
辺りが暗くなる頃にメアリーとは駅で別れた。別れ際に彼女は僕にキスをしてくれた。
「今日のお礼よ。愛情表現よ。ふふ。」
僕もお礼に彼女にキスを贈った。それからメアリーは機嫌良さそうに帰って行くのを見届けた。
家へ帰ると祖父が声を掛けてきた。
「美術館はどうだった?」
「とてもいい時間が過ごせました。ありがとうございます。」
「そうかい。良かったよ。」
祖父はやさしそうな微笑みを返してくれた。その晩の夕飯は美術館でのことをたくさん話した。メアリーのことは伏せて、一人で行ったということにしておいた。祖父も祖母も楽しそうに聞いてくれた。




