悲しみよ、こんにちは
以前に増して弟からの電話の回数が増えた。会話も、弟が一方的に話すという体から僕の学生生活を聞き出そうとする体に変わった。しかも長いし、しつこい。
「もう電話取りたくないよ。」
「取ってないんでしょ。」
「この間取ったのは3週間前かな。着信欄みるとあいつばっかり。イライラするよ。」
僕とメアリーは以前とは違うカフェで話をしていた。最近はぶらぶら歩くよりも、こうしてカフェで話し込むことが多い。
「宗一郎の事が好きなのよ。」
「かもね。」
「そうよ。私のこと知ってるの?」
「教えてやるもんか。」
メアリーは声を立てて笑った。今日の彼女はやけに楽しそうだ。僕はそのことが嬉しい。
「宗一郎は好きな人いるの?」
「一番メアリーが好きだよ。」
「私も宗一郎が一番好きよ。でも、そうじゃなくて夢中になって心惹かれるような相手よ。そんな人いないの?」
「そういう気持ちって理解できないよ。」
「そうね。でもちょっと憧れない?だって世界が変わるっていうじゃない。」
「そんなの作り話だよ、もしくは思い込み、あと小説や映画の刷り込みだね。」
「ふふ。それはともかくやっぱり弟さんは宗に夢中なのよ。恋してるんだわ。」
「はあ。……でもねメアリー、僕は恋とかしないタイプなんだよ。自分で分かるんだ。恋に落ちる人は多いだろうさ。でも僕は少数派なんだよ。」
「宗一郎の言うことって私分かるわ。私も貴方とおなじ少数派ね。」
僕はメアリーの手を握った。彼女は僕の手を握り返してくれた。




