悲しみよ、こんにちは。
電話だ。僕は自分の携帯を盗み見た。弟からだった。メアリーがいないので今日は真っ直ぐ家に帰った。最近夜が遅いのを心配していた祖父母は安心した表情を浮かべていた。僕は二人に声をかけてから自室に戻った。するとそれに示し合わせたように電話が鳴り出した。弟からコール音が続く中、僕は弟からの電話を何回無視したかを考えていた。4回?いや5回?それくらいなら、そろそろ出るべきだろう。僕は決断した。
「はい。」
「兄さん?」
「うん。何?」
「冷たいな。ふふ。……最近どう?」
「特に何もないけど。」
「…そう。俺受かったよ。」
「は?」
「高校だよ。」
「…あ、そうなのか。よかったじゃないか。おめでとう。」
「ありがとう。俺高校生だよ。いやあ、楽しみだなあ!」
「そうだな。」
「僕、張り切っちゃおうかな。部活も勉強も頑張るよ。か、彼女も欲しいよ。」
「頑張れよ。」
「兄さんは?頑張ってる?部活とかしてるの?」
「してない。真っ直ぐ家に帰ってる。」
「勉強は?」
「チャールズとスミス先生に教えてもらってるよ。心配すんなよ。」
「彼女はできた?」
大方アレクが漏らしたんだろう。
「はあ。いないよ。」
「あは、本当に?」
「ああ。」
「ふふふ。兄さん嘘つきだからなあ。俺信用できないや。」
「あっ、そう。お前に関係ないだろ。」
ほんの少し沈黙が続いた。この沈黙を破ったのは底抜けに明るい弟の笑い声だ。
「ははは。」
「なんだよ、お前。もう切るぞ。」
「ねえ、これだけ!本当にいない?彼女とか」
「うるさいな。出来るわけないだろ。」
「そう。でも……」
「じゃあな。」
僕は一方的に電話を切った。




