悲しみよ、こんにちは
その日から僕は毎日図書館でメアリーにあった。同じクラスだから、教室で顔を合わせるのだが、その時のメアリーは決して僕に声を掛けないし目も合わせなかった。僕は彼女のそうした態度をちっとも気にしなかった。僕も彼女に声を掛けなかったし、目も合わせなかった。メアリーとの関係は秘密にしておきたかった。図書館で出会って、校内を出て、二人で色んなところを回った。僕らはぶらぶらして話をするだけだった。ずっと黙っている時もある。でも僕はメアリーと通じ合っている気がしていた。
ある時メアリーは突然僕の手を強く握った。彼女は僕の方を見向きもしなかったが、唇が寒さで震えていた。僕は強く握り返した。すると彼女は瞬きをしてから静かに手を離した。
「どうしたの?」
「なんでもないわ。少し怖かっただけよ。」
「何が怖いの?」
「さあ?自分でもわからないの。でも貴方がいるから平気だわ。」
「よかった。……メアリー、手を出して。」
メアリーは黙って左手を差し出した。僕は手袋を外した両手でその冷えた手を握った。僕は彼女の目を見つめて言った。
「今日は手を繋いで帰ろう。」
「あら、優しいのね。」
僕らは手を繋いで歩いた。僕は自分でも信じられない行動に驚きつつも、これでいいのだと満足していた。子供みたいだった。人のぬくもりを感じたい。そんな気持ちは過去に置いてきたはずなのに。




