新しい僕
クリスマスがやってきた。
僕と祖父母は彼女の家に招かれて、七面鳥を食べたり、プレゼント交換をしたり、メイやウィリアムと遊んだりしていた。彼女の夫とも知り合った。柔和な表情をした人だった。それはタレ目のせいかもしれない。大学で働いているそうだ。
「君は妻によく似ているな。笑った時の顔なんかよく似てるよ。」
僕ははにかんだ。
「そうですか。僕は母親似なんで、伯母さんと似てるんだと思います。」
「確かに。キャシーにも似てるよ。」
「母をご存知なんですか。」
「ああ、妻と君のお母さんとは幼馴染なのさ。」
「へえ。」
そこにメイが割り込んできた。他の人間はテレビに夢中だ。
「あら、何の話?」
「キャシーの話だよ。」
「伯母さんの?」
「僕のお母さんさ。」
「キャシーはね、気が強くてね。僕なんか小さい頃から泣かされてばかりだったよ。リジーの後ろに隠れてキャシーと話したもんさ。」
ヘンリー氏は僕の顔を見ながら話している。母を思い出しているんだろう。
「僕はよくいじめられたけど、それも子供の時だけさ。君くらいの歳になると、むきむきのイケメンになってね。キャシーを見返してやったよ!」
「へえ。」「パパ素敵!」
「はは、確かに君はキャシーによく似てる。」
メイが笑い声をあげた。
「少なくとも性格は正反対ね。だって伯母さんの話と違ってすっごく弱そうだもの。パパみたいにむきむきになれそうにもないわ。」
僕は適当な返事をした。イギリスに来てから母の話を聞いたのは初めてだった。もっと聞きたあと思った。ヘンリー氏は饒舌になる。
「キャシーはね、君ぐらいの歳になると、そりやあモテてね。美人だったし、性格もかっこよかったから。でも、キャシーは誰も選ばなかったな。結婚もね、まさかイギリス人じゃなくて日本人を選んぶとは!昔から、自分で決めたことは曲げないとこがあったから、お父さんお母さん相手に頑として譲らなかったな」
話の流れが良くない。僕の父親の話になりそうだ。何のためにメイを追い出すことにしよう。
「あっ、メイ!ウィリアムがメイのケーキを食べてるよ!」
言われたメイはウィリアムの蛮行を見つけるとすぐさまそっちの方へ飛んでいった。
ヘンリー氏は静かに語りかけた。
「リジーから君のことは聞いてる。大変だね。何かあればいつでも頼りなさい。僕も君の家族だから。」
ヘンリー氏は僕の顔を優しく撫でた。彼の青い目に僕が写っている。彼に僕はどんな風に見えてるだろうか。孤独な少年?幼馴染の面影を宿した少年?どれも真実じゃない。僕は自分勝手で狡猾な人間だ。僕の15年をこの人達は理解していない。




