新しい僕
「問題ないわ。ええ、……それだけよ。……」
僕はそっと身を隠して、物音を立てないようにして自室まで戻った。
父親だ。間違いない。僕はショックを受けた。僕は日本を、あの辛い日々を断ち切ることはできていなかった。父親の姿はこの家にも潜んでいるのだと僕は理解した。
祖母は日本での僕を知っているのだろうか?祖父は?彼女は?父親と祖父母は仲が悪いはずだったが……しかし、留学のことを考えると、交流は復活したのも当然だ。父親から電話があっても当たり前なのだと結論した。自分を落ち着かせると、僕は再び階下に降りた。祖母が朝ごはんを作っているのだろう。いい匂いがした。僕はキッチンで料理する祖母の背中を見つけた。
「………おはようございます。」
祖母は振り返って笑顔で答えた。
「おはよう!早いわねえ。ごめんね。朝ごはんはまだなの。」
「いえ。あの、ちょっと散歩してきてもいいですか?」
「遠くへ行かないでね。いってらっしゃい。」
僕は上着と帽子を身につけて家から出た。空が白み始めている。
散歩には行かなかった。ただ庭でじっと空を見つめていた。僕は勘違いしていたのかもしれない。僕は祖国に、このイギリスを夢見ていた。その夢にまず父親は存在していなかった。そう、父親はいなかった…………




