新しい僕
学校についての話にひとしきり花を咲かせると、それで今夜はお開きになった。祖母と彼女に寝室に案内された。
「さあ、疲れているでしょう。早く眠りなさい。ベッドは温めてあるからね。」「これ貴方の寝間着よ。」
祖母と彼女が口々に言い終えると扉を閉められた。僕は一人になって部屋をゆっくりと見回した。薄いイエローの壁紙で統一されている壁には時計や数枚の絵が掛けてられてあった。勉強机と椅子、ベッドと小さなテーブルそれからクローゼットがある。僕はクローゼットの中に上着と帽子をかけた。ベッドの上に寝間着を置くと、勉強机に腰掛けて、目の前の窓から外を見た。真っ暗闇の中、転々と家の明かりがみえた。
僕は少し寂しくなった。別に父親や義母、弟が恋しい訳ではない。さっきまでの楽しい時間が、恋しいのだ。僕はこの家に「帰って」きてから、すっかり弱ってしまっている。勉強机に突っ伏すと机の冷たさを感じた。僕はなんだか泣きたくなった。それが何故なのかわからない。嬉しいから?寂しいから?この感情が一体何に向けられているのか、それも分からなかった。
ふと、弟の連絡先を失くしたことに罪悪感を覚えた。彼は怒るだろうか。泣くかもしれない。
僕らの間にあるのは血のつながりと、それと圧倒的な物理的距離だ。あれこれ悔やんでも仕方ないので考えるのはやめた。
寝間着に着替えると、ベッドに横たわった。暖かい。僕はこの暖かさにすがりつくようにして、眠った。




