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僕
僕の話をしよう。
僕の母親は、僕を生んで命を落とした。難産だったそうだ。1年後父は再婚した。相手は父の秘書だった。そして、また一年後弟が生まれた。
僕の母親はイギリス人だった。父とはイギリスで出会い、恋に落ちた二人は間も無く結婚した。日本にやって来た母親は、日本に馴染めず、また多忙の父に救いを求めるかも出来ず、愛情も冷めてしまったようだった。しかし、僕が母親のお腹に宿ったとき、それはそれは喜び、楽しみにしていたそうだ。
母親は、生きることを選択したが、その望みは叶えられなかった。母親は孤独に死んでしまった。
父は、僕も弟も大事に育ててくれた。しかし、父は義母と弟を優先していた。僕は母親に似ていた。父は僕の母親のことをもはや愛していなかった。写真にうつる笑顔の母親をみると僕は母の子なのだと実感していた。また、僕を愛してくれたのも母親だけだった。
僕はどうしようもなくさみしい時、怖くて眠れない時鏡を見て自分にキスをした。僕は僕を、母親を愛していた。




