二度目の初対面
初めまして、久しぶりです。
こちら目掛けて一心不乱に走るミノタウルスの足元へ多数の落とし穴を開け、次の攻撃準備に入ります! しかし落とし穴は全て飛び越えられました、彼方もただの馬鹿では無いようですわね。
「そう来なくては!」
キコクを大きく振りかぶり真っ正面からぶつかります。硬い音と同時に手ごたえはありますが皮膚はミミズ腫れ程度の跡しか残りません。ツァスタバの弾丸も突き刺さるようですが一筋縄ではいかないよう、ならば今私の全力を試す時が来たようですわね!
はぁ、あの屑の国の兵隊 を倒すだけでは不完全燃焼でした。ですからやっとここで発散出来そうな相手が見つかり嬉しい限りですわ。
「メェ〜……怖」
「五月蝿くてよ、少し離れていらして?
ではお見舞い致しましょう。『鮮血の鞭 』!!」
「Mu? Moooooーーー!!」
「はい?! 巻き込まれるのは御免です!!!」
歓喜から下唇を舐めずり右手を大きく振りかぶり、骨肉を潰すが如く叩き、突き、切り裂く。
あぁ悲鳴が甘く聴こえてくるこの快感、堪りません。
ツァスタバは我が身可愛さに逃げましたが厄介者が消えましたわ、それでこそ全力を出せます。
まずは俊敏なその足から、破壊力が目に見えてわかる両腕、尖った牛角。それらが全てキコクに削り出されるサマは流石の威力と申しますか。自身で考え出した技ですから今だにこの一つしか有りませんが杞憂だったようですわね。
私から数えて100回の鞭捌きの後、猛牛はすでに虫の息でした。留めにツァスタバの一発で息絶えましたけど。
「お疲れ様ですロザリアント、と言いたいところですがお仲間がこちらに向かっておりますよ」
「あら、まあ一体だけならこの国も苦労はしませんわね。では援護を頼みますよ、ツァスタバ」
「了解です」
ツァスタバが最後の一撃を打ったあとこのミノタウルスのやって来た方角の荒野へ弾を撃ちました。彼方から団体様が来ているというわけですね。ではこちらから会いにゆきましょう。
鞭で空を切り返り血を振り払うと二人三脚のように同時に動く私達の足。息は合っていました。ツァスタバが先程よりも硬い弾丸を撃ってくれましたから牛眼は潰れてくれましたもの。隙があれは私の天下ですわ。後はひたすら骨肉を引き裂くことで勝利へ足を歩めるのみ、悲鳴と紅薔薇のように赤い血を浴びて進む私に怖気付いた何匹かは逃走しましたがツァスタバの渾身の一撃で大きな風穴が空いておりましたけども。
何匹かめを始末するとやっとこの戦いが終わりました。
ほっと息を吐くと腹部に激痛が走る……、返り血で分かりませんがどうやら数発は貰っていたようですわね。戻って来たツァスタバも肩を抑えてますから互いに無傷とはいえないようですわ。
せめて拠点をとご主人様から賜ったゲル擬きを出して、
ヅキッ、
「グッ!」
結構な深手でしたか! 衝撃に踞ると柔らかな触感が、
ツァスタバの胸の中でした。
「無茶をし過ぎですよ、ロザリアント」
「そう、ですわね。一刻も早く貴女とご主人様達を合流させたかった、駆け足はやめておけば良かったです」
「まったく」
そう言って私の頰を突く顔は人では有りませんが姉、というものがいたらこういう顔なのではと思う表情でした。
その顔に安堵してか視界が微睡んでくる。
「しばしの間お休みなさい」
ええ、そういたしますわ。
次に目がさめると私は何時もの服装をしてました。ツァスタバですね、腹の傷は見たところ大したことが無さそうですがあの人は、
外へと出ればツァスタバがミノタウルスの首を切断していました。成る程献上するのには首だけでも良さそうですし良い案ではないですか。見たところ解体は今ので最後に見えましたから後は任せて貰いますわよ、貴女だって怪我人ですから。
後日後片付けが終わりカパズティットの城へと向かえば驚かれましたわ。
どうやら私達を使い捨ての駒にする予定だったようですね、そうならないのが私達ですけど。牛の首を何個も転がせば引いていましたから脅しにはなったようです。
さあ契約ですわよ、私達の力と成りなさいな、全ては我らが主人の為。延いては頑張った私達の為です。
ーーーー
この世界ではあり得ない速度で監視の目を振り切り隣の大陸についた飛行機だが人に知られていたら神の乗り物だとか、未知の物体と歴史に名を残すことになっていただろう。目撃者はいなかったが、
無人の海岸へと着陸すると稔が耳打ちをした。
「なあなあクロさん、さっきから言ってる寄り道とはなんぞや?」
「莎莎羅竹というものを探している。あのアホに必要な馬鹿に付ける薬だ」
地味なローブを纏いフードをかぶると足を動かした。早く見つけなければ、私の運では時間がかかるだろうからな。
「ちょちょちょっと! 待ってくれよ俺を置いてかないてくれぇぇえええ!! お尋ね者になったんだぜ?せめてほとぼりが冷めるまで同行してくれよ、役立つから!」
足に追い縋るもやし体系の男が鬱陶しい。だか役立つか、私の運の低さをこいつらで補うのは妙案だろう。留め具があるとしても人足は欲しい。団体行動の方が追っ手も巻くことが出来そうだ。
残り二人を見ると後ろで『衣食住の確保してくれるならお願いします』『あんたいた方が死ななそうだし。ヴェレンボーンまでヒッチハイクさせて』と書かれた看板がを掲げていた。
洋子のスキルか、
「ならば期間が限られてはいるがよろしく頼む」
「「「イェーイ!!」」」
歓声に湧く三人。時間は割きたくないがこれも決まった事 、ヴェレンボーンまでならば良しとしよう。
「じゃやクロさんは盲女のふりを極めた方がいいぜ」
「あー、じゃあ盲目なら杖がいるね。例えばこんな感じの杖とかならいいんじゃない? 私達冒険者だからその同行者の魔術師って事で」
「成る程」
「あと魔術も全方位に攻撃するタイプがいいと思うぞ」
「そうか」
そうと決まれば話は早いと三人は私 の人格を細やかに決めていく。
兄を探す魔術師、盲目の為冒険者三人が亡命がてら個人の依頼となっている。目が見えたいため五感が鋭く性格は兄と共に育ち、両親がいないため強固に育った精神を持つ女。
だと、杖は鉄製ながら設定上の都合により女性が持つのに相応しい花模様が全体に巻き付いた代物を持たされた。
「一先ず魔術師としての練習しようぜー。なんか出来るか? 物理以外で」
物理はダメなのか。仕方ない、
数歩歩き波へと向かって全方位射撃の魔法を片っ端から撃つ。
「ではまず、『踊り子の吐息 』、『叫狂う冬の雨 』、『枯れ葉焼く篝火よ、【広がる紅灯 】』、『渦巻く泥へと沈め、【這い出る亡者 】』、『我が身を蝕む闇の贄となれ、【蒼然の人柱 】』
踊り子の吐息は舞う踊り子のように四方へと吐く息のように鋭い風の刃らしい。風属性の中々に難しいもの。
叫び狂う冬の雨は言い方から分かるように猛吹雪を周囲の状況を無視し、東西南北の四方向へ氷の礫を投げるものらしい。こちらは水属性、
広がる紅灯 はその名の通り山火事のように広がる炎。火属性、
這い出る者は泥のようなアリ地獄が術者は残し半径数メートルを飲み込む土属性、
蒼然 の人柱とは薄暗い影に引き摺り込まれたものは無条件に攻撃される闇魔法。
らしい、全てを同時に発動させたためただ爆破が巻き起こった事しか分からない。水上爆発で遠く彼方に空へと舞い上がる海上生物が見えた。
光属性だけは仮に目撃者がいた場合思わしくない状況になるためやめておいた。これでも十分だろう、全て上級魔法だと書いてあったし。
「感想は?」
「「「oh……」」」
練習と言った三人は打ち上げられた魚と同じく何も映さない目が波が打ち上げられた蟹の甲羅だけを映している。三人は海を見つめて動かなかった、しかし私が海周辺へと放った魔法に負傷した魔獣共が集まったためそのような感情的な行動は不可能となる。
「うわっ! クロさんのせいだぞ、出番ですよ~! 任せた俺達は巻き込まれないように逃げる!!」
「ああ、『叫狂う冬の雨 』」
「GYAAAAA!!」
吹雪により火達磨の犬の形としていた魔獣は胴体が俗に言う泣き別れという形になった。戦闘を終えたことで身を潜めていたのにもかかわらず息を切らしている、さらに洋子は吹雪で溶けた化粧を直しているため時間がかかるだろう。
今の間に莎莎羅竹を探してみるか、
私は“大地の女神 ガイアの子”であるため大地に生えているものならばある程度の場所は分かる。
私が生まれた際周囲から現代的に言えば親、特に“父親”のウラノスから育児放棄。同じ“兄弟”からぞんざいな扱いをされていたため全て自分で衣食住をどうにかしていた。
普段は必要が無かったが何かを摂取する場合はよく大地の記憶を読み解いて目的の食糧が何処にあるか調べていた、これでも一応“大地の女神 ガイアの息子”の一神であるからな。
なんて何千年前の記録 を再生していた。異世界、さらにブランクがあるため成功するかは分からんが。
ーーー案ずるより産むが易し、
『神通力を使います。神通力は魔力の消費により戦闘、日常生活などあらゆる面で使えます。ただし、使用した規模により魔力はそれに見合う量だけ消費されます。さらに想像力を使うとより具体的になります。現在、使える回数はあと17回です。
お久しぶりです! 二十時間ぶりですね、それよりも先程新月様が無銭飲食一歩手前になっていらっしゃれらましたのでお早く合流出来ることを祈ります。私の食事 が料理からパンくずになる前に』
やはり問題を起こしかけていたのかあのアホは。
アホに呆れつつも今現在自分達のいる大陸をマップ化させた物が脳裏に浮かんだ。私が蒼丸で表されており大陸の東側、一箇所だけが赤丸がついていた。その場所にあるのか竹が、なら今すぐに出発だ。
500kmは離れているが、
問題は無いな、江戸時代の人間が旅する時女でも40kmは歩いていたと言う。日本で言えば高々東京から大阪までの距離が506km程であるから問題は無い。
「では気を取り直して莎莎羅竹を取りに行くぞ、場所が分かった。今いる場所から東に500km行けばその周辺にある」
「これも命のためだ、仕方ない」
「まじっすかクロさん?! 無理だって! 飛行機使って!」
「目立つだろうが。私は問題ないが目立って困るのはお前達だぞ」
「うげっ!」
「というか500kmなんて私達が歩いたら何十日かかんの?」
「女でも40kmあるくのだから二週間も費やせば寄り道まで出来る」
「は?! それ何時代の基準だよ?!」
「江戸時代」
「現代人には無理だろうが!」
肯定したのは伸のみだった。若い二人は新月が働きたく無い時と同じような幼児に退化している。問答無用、引き摺ってでも私は歩いてやろう。
「「まじで勘弁してぇぇぇええええ!!」」
二人の新月のような叫びが誰も通らない獣道にこだました。
数日後、山々に囲まれた人は愚か獣もいない湿地の目的地周辺につくと屍二つ、息を切らせて倒れる一人を置いて採取に向かう。
「あ、おいどこへ?!」
「近いから探してくる。休んでろ」
虱潰しに動けば見つかるだろうと三人から離れて山林を歩く。
妙に明るい竹林に差し掛かると周囲の気配が変わったのを肌で感じた。言うなれば神域のような重厚感と澄んだ空気。
ここだな、
確信した、黒いローブの裏地に刺繍された赤い蝶の翅先を山中とは思えない乾いた赤土の上を触る。一本一本捜査していれば比較的早く見つかった。新月の作品のおかげだな。
鉈を作り切るーーー前に嫌な予感がした。が、諦めるわけにもいかない。意を決して切れば、
竹の中に赤ん坊が入っていた。
三人には見せずに瞬間移動で最短距離にある老夫婦の家の前に籠に入れて帰ってきた。ほぼ原作の竹取物語の通りだ、問題ない。
切ったばかりの莎莎羅竹を【無限の胃袋】に入れて戻れば三人は復活していた。よし、このまま王都であるグレズンに向かい直進ルートではなく上空の監視も高温のため不可能である炎の大陸を経由してヴェレンボーンへ向かう。
それが一番の安全な運命だった、その通りに行けば何もない筈だ。今までも見ておいた『運命と同じ段取り、同じ会話』をしているのだがら、
しかしその後が一番の難関だ。王都に行く途中、同じく王都にいるエドゥンの王に戦争の同盟を結ばせると同時にレベル上げに来ているあいつらと会うのだ。と言っても人間のことは人間同士でやってくれ、私はその後 が控えているからなるべく関わらんぞ。問題はない、死にはしない 。
三人に教えると顔中に皺を寄せて唸っていたが何か問題でもあっただろうか。
蛞蝓のような歩みで進む三人はどう言ったわけか皺を作った顔でもバラバラの顔をしていたらしい。
洋子は純粋に自分達を巻き込んだ召喚者一行への怒りに燃えている。稔は最初見ているこちらが虚しくなるような呪いをかけようとしていた。しかしそれも今では殴る範囲に留まったと、今現在は殴る対象に確実に遭遇する運命に予定を実行するべきか変更するべきか悩んでいる。
らしい、伸が言っていた。その本人も二人を止めるためにどうするべきかと悩んでいるとため息をついていた。鬼の形相の洋子と打って変わって普段の無骨な顔を歪めていた。
悩んだところであと数分で出会ってしまうが、言わないでおくか。
「ん、貴女方は?」
「あら冒険者の方でしょうか……?」
「Hello! アナタ達もグレズンに行く予定デスカ? イッショに行ってもOKデスヨ! この国も魔獣が多い、人手はイリマス」
「あら佳奈さんったら勝手に決めてはダメよ、人には人の都合があるの」
「俺はイイぜ、佳奈の案に俺は乗った!」
「yes!」
「あらなら仕方ないかしら」
「私は構いませんが……そちらの方々は如何でしょうか」
「こんにちは、グレズンまでなら」
「「「………こんにちは……クロディルトサンニマカセマス……」」」
三人は重々しく口を開いた。挨拶したくないのか、諦めろこれも定めだ。あちらではすでに私達を巻き込むつもりで話しているから覆らないぞ。
最も五十嵐拓也は女性目的、佳奈・シトローヌは戦力目当て、吹雪沙羅は五十嵐拓也がいいと言ったから、だが。アデリーナはどちらでも良さそうだな、だがアデリーナには聡い所があった。悪いが神通力で分からないようにしておくぞ。
『神通力を使います。神通力は魔力の消費により戦闘、日常生活などあらゆる面で使えます。ただし、使用した規模により魔力はそれに見合う量だけ消費されます。さらに想像力を使うとより具体的になります。現在、使える回数はあと16回です。』
これでよし、あとは王都に行き予定通り別れるとしよう。私の中では別れるまでの残りーーー時間を堪えようと決めた。
出会い頭から目が見えないという設定の私に張り付いて離れない元弟子に言い寄られながら。
「クロディルトさん離れていてくれ、俺が貴女を守る!」
再会数分後、道中動く木の魔獣、アデリーナがマンドラと言っていたに襲われた。
が、
五十嵐拓也が奮闘している、稔が木の上から矢を引きながらアピールしまくっているキザ……と言っていた。どうなるかは知っているが実際にこのような扱いをされるとは、
「全員下がれ、『枯れ葉焼く篝火よ、【広がる紅灯 】』」
私が手当たり次第、と見せかけて魔獣の方のみへ火を放ち終わらせれば召喚者一行から勧誘が止まらない。新月がいたら五月蝿いことになっていたと勧誘を断った。
「クロさんは俺達と旅してるんだよ! 外野は引っ込んでろ」
「あ? 高々冒険者三人が俺に勝ると言いたいのか! 俺光属性魔法使えるんだぞ!」
「だからと言って女性 を無理矢理勧誘するのはいただけないな」
「私達は世界を救おうとしてるのよ? 手伝うのは道理じゃないかしら?」
「ご自分達でどうぞ〜! 私らもクロさんも別の目的があるんで〜、人探しはあんたらの目的の邪魔になると思うけど?」
「shut up! ここまでワタシ達が言ってるのに!」
「え、銀髪さんそれ関係なくないか?」
周りは五月蝿いが、
「あの、皆さん争いは……」
「アデリーナこれはそっとしておくべきだと思わないか」
「……そうですね」
王都まであとーーー時間、
莎莎羅竹
某物語の竹で低確率で女の子が入っている。激レアな素材。が、女の子は必ず月へと変えるため人によってはこれがめんどうなことである。
高確率では砂金が入っている為普通の人間にとってはこちらの方がうれしい。




