大迷宮!! ~二代目天空神~ 中
今回はグロっぽいのがあります。それに性格クズがいます。見るなら注意してください。
数分前、
ッガァァァンン――――――――――――
団体を引き連れて神殿のような建物に到着するとほぼ同時に出入り口が無くなった。ジンニーヤーとカエル頭達が臨戦状態になる。ここにあいつら がいるらしい。
つまり私に入るなと言いたいのか。
『入り口が塞がれている……だと……?! クロの助けや、蹴り壊してやれ!』
「別に足じゃなくてもいいだろ」
後ろで私の運の無さを憐れむ集団は放っておくとして、塞がれた出入り口を前に猿のように騒ぐこいつはどうにかならないものか。
アホらしくも素手で瓦礫を撤去しようとして服や手を土まみれにする新月を脇から腕を入れて抱え上げる。猫のように大人しく持ち上がった小猿を後ろに渡し、砂埃を払ってやる。
上半身を軽くはたいたあと、ヒダの多いスカートを払ってやっているとあの凶暴な凶器 の金属部分に挟まった。強く引っ張り引っ込めようとする。
そこまでは問題無かった。引き抜いた手が薄い布生地に包まれた白い肌を鷲掴みするまでは、
『やん♡ クロったら! ラッキースケベ? それともワザと? 新月ちゃん喜んじゃう。まさか太ももフェチだったなんで! 毎日手入れしておいてよかった!』
「偶然だ。布越しだぞ」
『下着フェチも……だと?!』
「……勝手に言ってろアホ、言っておくがお前の足は肉が足りないぞ。酒ばっか飲んで動かないくせになんで太ってないんだ」
『肉付きがいいのが好みなのねん♡ もーぉ、クロったら! 新月ちゃんの魅惑の太ももにさらに先を求めるだなんてー!』
「黙れこの虚言癖が。頰を染めたところで年寄りの戯言が耳障りが悪くなるだけだぞ」
『えー……ヒドス。俺が年寄りならクロも年寄りじゃん!』
「日頃の素行の悪さを悔いろ。
一体どれだけの年数をお前と過ごしていると思ってる?確かに私も私で老翁だがお前よりは分別は弁えているつもりだ。お前も少しは口を閉じる癖でも付けろ」
『(・x・)』
黙れ、と言うと記号を組み合わせて作られた顔が送られて視界から文章の画面が消えた。
今のうちに、と後ろにいる一条美海と魔人にこの虚言癖を渡す。こちらはべらべらと喋る新月 の扱いが慣れてきたようで何も言わずに預かってくれた。
と言ってもはじめ一条美海は新月が自分のことをレモーネと言わないことに直ぐに気がついた。私はわざと一行の前で名前を呼ぶのを極力避けていたというのにこの馬鹿はあっさりバラした。人のことを言えないな、いや神か。
そこで普通に誤魔化せばいいものをあの大間抜けは……揺れる乳房につられて気が付いた時には7割型真実をぶちまけていた。流石に神だとか同じ世界にいて旅目的だとかは言ってないが馬鹿中の馬鹿としか言いようがない痴女だった。
女同士の秘密だと言ってどうにかしたらしいがこいつの頭の中はどうなっているのか知りたくなった出来事だった。もしこれで新月が声が出せる状態で城にいたら、ともしものことを考えて頭を抑えたことにはジンニーヤーしか気が付いて無かった。
あいつの口が使い物にならなくってまだマシだったと再度心から安堵した。
さて、これで楽になるかと思っていると後ろから長文の胸部の触感に対するレポートが届いた。
会話文でなければいいとは言っていない、だが無駄に細部まで書かれた表現力の高さには下を巻く。
酷く才能の無駄遣いだ。普段やらせている中学生用の文書問題では赤点が常々だと言うのに、天才肌だと言えば聞こえはいいが興味の出たもの以外は屑同然のただのアホというのがこいつの現実だ。
その力を他全体へ行き渡らせればいいものを……考えるだけ無駄か、私が疲れるだけだ。
騒ぎ立てる小猿がどいたので瓦礫の山に触れる。触ってみて分かったがゴーレム時のように大きな落石が積まれたのものはなく、ただの残骸の寄せ集めだった。といっても一般的な人間が素手で撤去出来るようなものでもなかったが。
後ろで一条美海が新月と何やら騒いでいるのを尻目に私は壁に向かって手をかざす。アリアスには少し面倒な思いをしてもらうことになるが目を瞑ってもらおう。
頭の中で鳩が叫びながら飛ぶ姿を描きながら一言、「退け」と命じる。
ッボゴォ゛ォ゛ォ゛ォ゛――――――ン!!!
出入り口が封じられた時よりも凄まじい粉砕音を奏でて瓦礫が内側に向かって吹き飛んだ。
中を覗くと数人が瓦礫の吹き飛ぶ音に吊られてのかこちらを凝視していた。
一、二、三……全員いる。瀕死はいるが死んでない。ついでに余計なものが一羽と見知った顔が一人いた。来るとは分かっていたがここに来てるとは……あいつは態度の横暴さに比例せず潔癖症のはずなんだが。
****
「しばらく見ないうちに随分と荒れたな、コイオス」
「っ……、お前!」
一条美海が仲間の安否を確かめるべく走り出すのを見届けると私は歯軋りをする長髪の男、コイオスと正面を向いて対面する。そのまま頭から爪先までじっくり観察すると私と目を合わせて凄んだ。
相変わらずと言った風貌でどこも変わっていないと思える。頭の上から爪先までを一瞥すると服装も変わってなかった。こいつ無駄なところに拘りをもつ癖があるから今着ている薄い絹織物の布、ヒマティオンと呼ばれるものを未だに着続けていると思える。
久しぶりに見たが相変わらず動き辛そうだ、気候や環境に応じて服装を変えれば良いものを。
「お前は相変わらずだな。なぜ動き辛い服装なのに着続ける?」
「っ、二言目がそれか! お前こそ流行に乗る馬鹿と同じに成り下がったか?あのクロノス が」
「私は合理性を求めただけだ。今の私に必要なものは今の生活にあった動き易く、環境にあった合理的な物だ。使いもしない威厳を作る道具 なんて邪魔なだけだろ」
「それよりも先に言っておく、お前の考えていることは馬鹿馬鹿しい、私は手伝わんぞ。とっととそこの鳥と子供を置いて消えろ」
「……っぐ、」
目を逸らさず答えを明確にするとコイオスは数秒間目から光を消した。そのままお互いに視線を交わしていると誰かに腕を取られる。こんな状況で目を離せるわけがないが無視する訳にもいかず僅かに視線をずらすと案の定のこと、五十嵐拓也だった。
「おまっ!! クロス!!! 今までどこに行ってたんだよ?! ってかそんな男と話している暇なんてないんだ。あのフェニックス本物なんだよ!! レベルが437だ。ありえねぇ、早く倒さねと!!」
砂塵で薄汚れた姿のまま半狂乱で叫ぶ子供の声に固まった。
指を指す方向を向いてみるとそこにいたのは不死鳥として名高いフェニックス、なんでこいつがこんなとこにいるんだ? フェニックスなんてどの世界でも貴重価値で極一部以外飛行させる時は許可がいるのに。
特に私の元いた世界の不死鳥なら頭がスカスカだからどっか飛ぶたびに捜索願いがだされるやつだぞ? 無許可で飛んだら羽根を狙うやつらに毟られて丸裸になって泣きながら帰ってくるのに。
フェニックスと目が合うと瞳の中で猛炎が驚いたように数回瞬きした。確かめるついでに私も【鑑定】を使うと言った通りだった。
よく分かったなこいつ、もしかして【鑑定】を取得したか? そうなったらレベルは格段に上がっているはず。予定通りここの魔獣ぐらいは倒せるレベルになっていればいいのだが。
「437? あぁ、あいつか。お前よく分かったな、【鑑定】を取得したか」
「そ、そうだよ! なんか文句るか? これでもレベルは101まで上がったんだ! そりゃこれだけお前に回り道させられたんだ、無理にでもレベルは上がるつーの。これだけやれば俺は褒められる筈だろ?! 普通は!!」
「そうヨ。クロス、拓也はガンバリマシタ! でもあの人toughなの!」
「クロスさんとにかくこのフェニックスは危険だけどこの男も危険よ! 拓也くんの剣さばきでも歯が立たないの!」
「……あ、あ、おれ、俺はどう、すれば……」
「クロス様如何なさいましょうか? このままでは壊滅状態になってしまいますわ。何か、何か策はございませんか?!」
錯乱状態に陥っている召喚者一行、
『君達助けに来てあげたのになんなんその態度? ついでに言うとなんでギャラクシーがおんねん、とっとと原●帰れや』
「だからギャラクシーじゃねーって言ってるだろ!!! ってか聞いてはいたがなんでお前がこんなの になっているんだよ?! お前こそ帰れ! 俺は原●なんて小規模な場所に収まる器じゃねーんだよ!」
『あそっか、原●系じゃなくってしまむ●産ファッションコーデだったか~、どーりで目が痛いなと、輝いて ますね~。器の色は確かに輝いて ます。マブイぐらいにね。はい、
でも大きさは見かけによらずお子様ランチのプレートサイズやねんな(笑)』
「規模が小さくなってんじゃねーか! あとその付け足しもやめろ、不快だ! だからお前嫌いなんだよ!!!」
『君がクロを都合のいい時だけ利用するからだろうが! このギャラクシーしまむ●が!』
「誰だよギャラクシーしまむ●って! 芸人か?!」
『そうだよ! ピン……じゃなかった。あの似非王子とセットだからコンビか、勿論君がボケだな。お茶の間に変顔でも晒してろ』
「やらねーよ!!!」
「K、Kyuuuu……」
それと小学生のような言い合いをしているババアとでかい子供と右往左往しているでっかい鳥。
よく見ると五十嵐拓也の手に持ってる剣が少し違う気がした。私は素早くこれが聖剣かと理解する。だが聖剣と言う割にはあまりパッとしない見た目だな、性能も中の上と言ったところか。なんだこんなものか、随分と呆気ないな。
途端に未来 が予想出来て聖剣に対する興味も失せてしまった。もうここにいる意味もない。本来、私の目的は五十嵐拓也に聖剣を手中に収めさせること、一行の鍛錬に付き添うことの二つ、いや怪我をさせない というのも入れたら三つだ。
三つ目はもう手遅れだがこれで任務は9割は完了した。後はどうやって地上に戻らせるかなんだがこれが一番手を焼きそうだ、と騒音を撒き散らす音声源を眺める傍らハリスのを回収し前に買い込んだエリクサーを口に押し込む。
噎せ返る声が聞こえたが吐き出されると困るので無理矢理にでも飲ませる。少し考えたあとついでに出血多量で死なないように血が外に流れるのだけ防ぐ。
この反則技はハリスの周りの空気を少し弄るだけにしておく。時を止めたら血が通わずに死ぬだろうと判断したためだ。今度壊死だけで済むように試してみよう。今まで考えた事がない方法だが出来たら使えそうだからな。
その間も周囲は騒ぎ、自慢、言い争いと忙しい。まるで壊れてチャンネルが変わり続けるテレビを見させられているようだ。五月蝿い事この上ない。
これなら一番図体がでかいフェニックスが一番大人しい。コイオスと新月を見ると今度は手を出す争いへと発展していた。
互いに目の前の敵しか見えていないようで私には何の反応も示さない、さらに数分前から五十嵐拓也、佳奈・シトローヌ、吹雪沙羅、アデリーナの四人にジンニーヤーバッハダの集団、髪を逆立てたジンニーヤー本人が加わり再び状況は交戦へと突入、目紛しく情勢が変わっていく。
蚊帳の外か、
ならば今のうちに私も用事を済ませてやろう。ここにいるフェニックスが私が知っている『私達の元の世界のフェニックス』ならばそこまで賢くないやつのはず、そしてコイオスは言動に比例せず周囲の動きに気が付かない盲目なところがあるからやるなら今だ。
エリクサーを飲んで気絶したハリスを隅の床に寝かせるとこの中で一番コイオスの気を引いてない二人に声をかける。
「一条美海、田島薫、お前達に頼みたいことがある」
「「はい……?」」
騒ぎの波に乗れずおどおどと様子を伺っていた二人に声をかけると素早く反応した。
「お前達はこれを回せ」
神通力を使い巨大な牛の丸焼き機とこれまた巨大な私一人なら丸々入れる甕を出す。
「……え?」
「え、これ……回す……の?」
「ああ、頼んだ。『バッグウェッジ』」
何の前触れもなく出現した丸焼き機に瞬きをしつつも言いつけ通り、大人しく二人で左右のハンドルを回し肉を焼き始めた。匂いにつられてジンニーヤーバッハダの数匹がつられて振り返ったが叩いてコイオスに群がる塊へとぶん投げた。
「Gu,GuUuuu――――……」
「よしよし、その調子だ」
フェニックスの動きを土属性の上級拘束魔法を使い身体の自由を奪う。
フェニックスだからか錯乱状態で泥沼に飲み込まれつつあるのに激しく抵抗している。丸焼きの匂いにつられて涎を流し続けているためかなりアホ面だが。
アホ面は置いておいて私が欲しいのは唾液だ。正直に言うとここまで面倒な手間が掛かると私の神通力でどうにかしたくなっていた。不可能ではないにしろ集めるのが難しい素材に無駄に掛かる時間と経費、はっきり言ってアホの新月ぐらいなら私一人でどうにか出来る。
しかしそれをやってたら新月の所業で斬首刑になっていたであろうしこれが一番まともな判断だったと思う。
あの馬鹿は前科があり過ぎる。それにここまで材料を集めてしまったら完成させてみたいと思ってしまっている。これで良かったとしておこう。
さて、話は戻るかアホ面のフェ―――面倒だからボウボウ鳥で十分だろ。
このボウボウ鳥の真下に甕を設置した訳だが錯乱状態に嗅覚に突き刺さる肉の焼ける匂いは現実に引き戻されるのに十分だった、素直に唾液の雨を降らせながら肉が焼けるのを待機していた。まさかこんなに簡単に事が進むとは思っても見なかったがこれで事が片付くなら容易い。
爛々と目を輝かせるボウボウ鳥の目の前で【無限の胃袋】から無造作に放り込んでおいてそのままになっていた生姜、醤油と言った物を火に炙られる牛肉の表面にかけていくと唾液の雨は豪雨となる。これにはジンニーヤーも反応したようで一体どこから持ってきたのか不明の平皿を持って丸焼きの前に待機していた。
「下さい」
「まだだ、このボウボウ鳥があの甕を唾液でいっぱいにするまでこんがりと焼く」
「そんなぁ~……ぉ、おにくぅ~……」
「Gya、Gyuuuuuu~……」
待てと言われて耳をだらりと垂らすジンニーヤーとボウボウ鳥は焦らされたのが恨めしそうに牛の丸焼きを眺める。燃え上がる火を眺めつづける姿に一条美海が一切れぐらい、と私の袖を引っ張る。
仕方ない、一切れだけだ。
ランプの部分を少しだけ手持ちのナイフで切り取り、皿にのせる。この時ゆっくりと珊瑚の色に輝く表面をわざと見せつけるように切るとどっちも喉を鳴らして見つめる。
口元から溢れそうなほど涎をためた肉食魔人は意外にも上品に食べていき惚けた表情を浮かべる。その表情にさらにボウボウ鳥は唾液を流す。本当、扱い易くて助かる。
その後ボウボウ鳥は数分もしない内に甕をいっぱいにした。拘束はすでに解けていたが律儀にも甕をいっぱいにしてくれた。馬鹿だ。
駄賃替わりにと、丁度こんがりと焼けた牛を火から下ろすと鳥も魔人、魔獣も関係なく群がりあっという間に骨まで食い尽くされた。
「て、あぁぁぁ――――――!!!!無視すんな! 何やりあがった?! フェニックス!!!!
お前も策にはまるな!!! これだから阿呆鳥は馬鹿なんだよ!!」
『この新月ちゃんを一人放っておくだなんて酷いぞクロぴょん!』
「その言い方やめろ。頭が痛む」
焼肉に群がる群衆を見てやっと気がついたのか新月 とコイオス が全速力でこちらに向かって走ってくる。カエル頭達はボウボウ鳥にやられたのか床に突っ伏しているのが見えた。
満身創痍でボロボロになった新月は私の元によたよたと走ってくると袖を掴んで振り回す。その間、コイオスはボウボウ鳥の頭を叩いていた。
『イライラするって言いたいのネン♡ でも可愛いおねーちゃんを放っておいた罰だからクロぴょんで十分だ! 分かったら返事!』
「……ふぅ……」
『なんでため息? 無視すんな! 俺の気持ちを考えろ! 俺が虚しくなるだろうがぁぁぁあぁあ!!!』
「元気そうで何よりだ」
『話を逸らした?! 新月ちゃんの発言は無視するのか?!!
この非道! じじい! 能面! 鬼! 冷血漢! 細マッチョに少し筋肉足したゴリラ! ノッポ、最強! チート! 顔だけ無駄に男前! 偶にだけ庇うな毎回守れ、低確率で出てくるイケメンシーンが!!!!
カッコいいんだよこの間抜け! 俺をキュン死させる気かぁあぁぁあぁ!!!!!!!!!』
『って、見てない! 新月ちゃんだけに自爆させるのか君は! このどSが!』
「いえ、最後の方は褒め言葉になってるから逆効果になっていますよ? 新月殿、」
「同意見、」
気味の悪い呼び方を使ってくる新月に呆れて息を吐く、一人と魔人から哀れな視線が注がれることに新月は気がついていない。
五十嵐拓也は新月が擦り寄る私に殺気を向けていたがこんなことで妬まれるのは勘弁して欲しい。他のやつらまで集まってきたじゃないか。
「おい、俺を無視すんな―――!! 俺は褒められるべきだと思うんだが?! なんでスルーされるんだよ!」
「無視はしてない。こいつが銀河系以外の言語を話すからとうとう頭がいかれたのかと思ってな」
『あれだけ言って心に響いてないだなんて!』
『……ヒィ~ン!!!』
さっぱり理解できない言語を書いたくねくねと身を擦り寄せる新月に不快感を覚える。頭を治すつもりで両頬を外側へ引っ張ると馬が鳴くような鳴き声が書かれた文書が届いた。
そちらの方に気を取られているとコイオスが地面を踏みならして詰め寄り、一行は驚いて私の後ろに隠れてしまった。
利き手を取られ強く掴まれる。
何があったとしても離さないとでも言うように指も絡めてくるその様は執着心を持った蛇のように力を込めてくる。折って持っていく気かこいつ。
「いいから俺と一緒に戻ってこい!」
「なんで私が返り咲きなんてしなければいけないだ。ごめんだな」
「俺を無視して話を進めるな!!! 意味がわかんねーよ!」
困惑と言った表情で私の外套を引っ張る五十嵐拓也が邪魔に思える。
それより新月が落下しそうだ。左手で抱え直すと真剣な表情で私とコイオスを交互に見遣っている。
『くろぉ~』
「ああ、心配しなくても大丈夫だ。後言っておくがコィス、お前がここに来たのは私を呼ぶわけではなく兵器に使いたいだけだろ。
お前やクレスのように自分にあいつら に対抗し得る力が無いから」
言うや否や右手が捥ぎ取られるような激痛が駆け巡る。
なんだ愛称呼びで言うと心を開きやすいと書物に書いてあったのはデマか? それともこの愛称を考えたのが新月だからか?
丸っきり今の状況とは無関係な答えを探しているとコイオスが髪を逆立てて叫ぶ。
「う、五月蝿え!!!! 一緒に来い!!!!」
「拒否権を使わせて貰う。やるなら別にそれでもいいから勝手にやってくれ」
「動かないなら強制的に連れてく!」
叫び声で神殿全体が揺れて肉に群がっていた魔人と+αが散り散りに頭を何処かに隠そうと逃げ回る。
ボウボウ鳥だけはどこでも無理な気がするが聞く耳持たないだろうから言わないでおこう。それより近距離で叫ばれた鼓膜が潰れそうだ。
「諄い、図星だろ」
「…………」
縋る瞳に目を潜める。次に口から出た声は自分でも分かるほど底冷えた声だった。コイオスの目が強く睨みつけ耳元で囁くように言った。
「―――お前は相変わらずだな。拒絶の仕方がムカつく。だから嫌いなんだ、……忌々しい」
『……お前もう黙れ。次にクロを罵倒するようなことを言ったら消す』
「何を言ったのこの人?」
今度は吹雪沙羅が呟くように言った。聞こえてはいなかったようだ。ならいい、変なことに勘づかれなければそれでいい。
腕の中で唸る新月を撫でて大人しくさせる。本人は不服なようだが押し黙ってくれた。
「―――じゃあ半殺しにして回収してってやる。おいおそこの尻出し鳥!!! とっとと働け!!」
こちらはそうはいかなかったようだが。コイオスは指を鳴らして半狂乱と言った状態で叫んで命令した。
あ、こいつツァスタバやあの獅子に掛かった暗示でも掛け直してるな。あのボウボウ鳥は暗示にかかり易いからすぐに襲ってくるぞ。
「おい五十嵐拓也とその一行、あいつがまた動き出すからとっととこの大迷宮を出ろ」
「「「「「「―――??!!!!」」」」」」
苦しそうなうめき声を上げながら暴れ回るボウボウ鳥に向かって首を動かして塞がった両手の代わりに注意を向けさせる。伝えた途端に一行は顔を場違いな雪のように白くした。
「oh my god!!!」
「そんな、一体どうすれば?!」
佳奈・シトローヌとアデリーナが震え声で悲鳴に近い声が出る。他の子供もそうだ、先の闘いで恐怖が骨の髄まで刻まれたか。
「こいつらは私が相手をしておくから早く行け、今のお前達じゃ消し炭にされて御陀仏だ。それかミディアムローストにされてまだ微かに意識があるのに胃袋に放り込まれるだろう。焼け爛れた皮膚に胃酸が絡み積み生き地獄を味あわせられてからゆっくりと沈んでいくかもな」
「生き……地獄!!! ……いゃ、嫌ぁぁぁぁああああ!!!」
「お、御陀仏……! お前、自分なら勝てるって言いたいのか?」
死因としてあまり嬉しく無いであろう死に方を教えてやると吹雪沙羅と五十嵐拓也でも血の気がさらに引いたようでだ。特に吹雪沙羅の狂乱振りが目に見えて酷い、絹を裂いたような悲鳴が頭に響く。
普段の吹雪沙羅と比べると動転しているようだ。そうだ、確かこいつが片目を隠している理由は―――
「拓也くん!!! 早く逃げましょう!!!クロスさん、貴方ならどうにか出来るの?!! ならお願い!!!」
「ああ、任された。早く行け」
「分かりました、クロス様。ではお願い致します!!! ですがお怪我の無いよう! 貴方様もすぐに避難を!!」
「Everyone run!!!!」
「吹雪さん?! クロス! まだ話は終わってーーー
「いいから早く逃げなきゃあああ!!!」
うわぁ! で、でも」
「「いいから早く!!!」」
惜しむ五十嵐拓也を錯乱状態の吹雪沙羅と涙を目に溜めた佳奈・シトローヌ、アデリーナまでもが束になって出入り口へと急かして神殿の外部へ押し出した。
抗議の声が聞こえるがそのまま女達に引き摺られていくことを願おう。
「薫!!! 早く走って!!」
「あ、ああ」
その数歩遅れて田島薫が一条美海に手を引かれて走る。だが田島薫が足をやられているようでおぼつかない足捌きが逃げ道を遠ざけている。
かなり悪い状況だ、このままだと……そんなことを考えているとボウボウ鳥が嘴から火を吹こうとしていた。
あいつらを脱出させなければ、そう思うが左手を新月がいて塞がっており、右手をコイオスが石のように掴んで離さない。新月は気がついたようで手を離した。しかしまだ右手が離すまいと握られているので動かせない。
こいつ今自分が触れてるやつが魔法を使えないようにしてな。面倒な事すんな。
「あ、そんなぁ……、こうなったら一からバチか! え、えっと『咲き開け! 鋼鉄の花、特殊スキル【シェルター】発動!!!』」
『特殊スキル【シェルター】を発動します』
背後から今まさに火が迫っていると知って一条美海は覚悟を決めたようだ。城で訓練していた時でも殆ど使っていない【シェルター】としての役割で賭けに出たようだ。
アリアスの声を聞いてまだあちらはコイオスの傍若無人な対応で焼き鳥になっているかと思ったがまだったようだ。
が、こちらあと五秒もしないうちに火に包まれるだろうがアレでは無理だ、断言出来る。
まず【シェルター】は人を守れるかもしれないが立ちはだかるレベルの格差が壁を作る。よって守れる確率は低い。
さらにあのアホボウボウ鳥でも腐っても鯛、神の領域に踏み入っている鳥の攻撃をまともに食らって生きているわけがない。
仕方ない、
「ざまあみろクロノス! お前のせいで子供が死ぬんだよく見とけぇぇ――ー!!!
ごギィ!! ヴェゴォ! グゴッ、ズジュッ、
―――え?」
グシャリと再び埋められた出入り口を睨む。
私は自分の右手を左手で骨を粉砕して抜け出し、時間を止めて子供二人を救出した。二人は壁の隅に置いておいたハリスと一緒に並べておくがアホウドリのような顔をしていて締まりがない。なんだ気絶でもしたか?
『ブギャァx亜x亜x亜xああーああああああああ?!、「@」88/』
「新月文字になって無いぞ」
『神通力を使います。神通力は魔力の消費により戦闘、日常生活などあらゆる面で使えます。ただし、使用した規模により魔力はそれに見合う量だけ消費されます。さらに想像力を使うとより具体的になります。現在、使える回数はあと16回です』
宇宙人語が流れてきた元いた場所を見る、こちらは新月が発狂したので直ぐ目の前で見るに堪えない状態の手を治すと新月が触診を開始し出した。
『わjkcv54-0(@_@;)、もう痛くない?!!!』
「落ち着け、どうってことない。もう治った。が、痛覚はまだ働いてるな」
正直に言うと新月の目つきが変わった。瞳孔が開いて紫色のような輝きを放つ。
「それよりもスタシスを出せ、あいつら送り返すぞ」
『了解、あの焼き鳥とコィス―――いや悪意を込めて恋ちゃんと呼んでやろう。あいつはマジで消す、クロやっちゃえ。俺が許可する』
野獣のような目つきでコイオスとボウボウ鳥を睨む新月がスタシスを取り出した。それを見た子供二人はこれ以上ない程口を開けていたしコイオスに至っては漫画のような驚きの表現力を見せてくれた。
ではこの一神と一羽には少しスタシスの斬れ味を味わって貰うとしよう。早く帰ってくれないと私も時間がない 。
スタシスの鎖を腕に巻き刃部分の方を床へとゆっくり落とす。
「さて、ではやるとするか」
『おう、任せろ。細胞の一つも残さず存在を消し去ってやる。んでもって戻ってきたら顔面にさっき拾ったドラゴンの廃棄物ぶちまけてやる!』
やめろ、そこまでしなくていい。
コイオス→次回でまた書きますがサブタイトル通りで星の神様と私は考えています。
見た目はギャラクシーですが中身は俺様のクズ、クレイオスとよくセットで考えられる。
でもクレイオスがクロノスを神中の神として崇めていることに嫌悪してる。
フェニックス→見た目に反してかなりのアホ。賢さ10ぐらいしかない、
よくふらついて羽をむしり取られて泣いて帰ってくる。バカすぎてクロノスの会社によくお世話になってる。
おバカ新月→言わずと知れたアホ、今回で自分が付けたあだ名もろくに覚えていないことが発覚。
神殿を出た勇者(?)達は一心不乱に走って逃げました。やっぱまだまだ子供です。あとで二人欠けている事に気が付きますがさて、これがどうなるか―――




