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遑神 ーいとまがみー  作者: 慶光院 周
え?今からこの展開ってマジですか?
55/80

ブレンドコーヒー

久しぶりに書き溜めたのをだしたらすごく多くなった

 『く~ろぉ~~!! いつまで歩くの? 寒いんだけど! ってかどこ行くつもりか教えろぉ!」

 「クロス様、こんな王都の外れまで来てどうするつもりですか? お城の兵士の人にあまり大陸の北の方に行くと氷の大陸が近くなって寒いって言ってましたよ。周りに民家も有りませんし……ハ、ハクション!」


 いつまで歩くのかと愚図り始めた新月の声を無視して先へと進む。薄っすらと雪を乗せたまま枯れ果てた樹木だけが一本立った平地まで出来たので足を止める。

 王都を出てから真っ直ぐ北へ、と進みもう最後の民家を見たのは随分前だったか。



 この大陸は氷の大陸に近い場所になればなるほど気温も寒く、春が終わりそうな今の時期でも冬並みの温度を叩き出す。民家も疎らで加えて水属性の氷系魔獣が出てくるので冒険者ぐらいしか立ち寄らない。

 そんな辺鄙な場所まで来たのには訳があるのだがいかせん寒い。ツァスタバは元が元だからか平然と昼食が入ったランチボックスを持って立っていた。が、うち二人が奥歯を震えさせていた。


 「そんなこと始めから分かっている。というか民家があったら吹き飛ぶからこれでいいんだ」

 『あ、あーズルイ! クロだけあの【落陽すれども光輝す】着てる。ついでに中にジャケットまで着てるじゃん。いつの間に! 俺も温めろー!』


 目敏く私が上にあのギンギラギンを羽織ったのを見逃さなかった新月が飛び込んで来たのを身を屈めて受け止めた。


 「何ですかその名前」

 「このアホがこのギンギラギンに付けた厨二病満載な名前だ。私なら念じて一発で暑さ寒さも関係ないんだが使えるものは使わないと損だからな。

 それにこれは見た目と名前は常軌を逸したものだが効果は折り紙つきだからお前も寒いなら入ってもいいぞ。こうなってしまったら一人も二人も変わらない」

 「じ、じゃあお邪魔します!」

 「あら、マスター。もしや私の時と同じことをするおつもりで?」

 「ああ」


 来るであろうと予想していた質問に回答して手招きすると余程寒かったのだろうハリスが大人しく私のコートの中に飛び込んで来た。

 二人が裾の両端を掴んで正面から吹く風を防いでいるため服全体引っ張られていたが縮こまっている二人を見ると何も言えなかった。

 そこでやっと私がやろうとしていることがピンと来たらしいツァスタバが正解を言うと新月は納得した顔でポン、っと手を叩いた。この中ではハリスだけが知らないのだがら無理もない。ツァスタバが今からやることを掻い摘んで教え始めたからハリスのことはツァスタバに任せよう。


 「新月、お前外に出てあの邪魔な翼出せ」

 『巫山戯んな。こんなに寒いのに出られるか! ってか今度は何を元にして創る気?』

 「前回採ってきたブライダルローズが数個しか無かった。これでは足りない、だがお前が運良く種を持ったものまで摘んでいたおかげで育てればどうにかなる。時間は私が早めればいいだけだ、だが世話となると違うだろ?」

 「それで栽培出来る人を創るってことですか。この場所に来たのは前回の失敗を考慮して人がいない所を選んだという訳ですね。

 でもここには生きている植物がない、だからクロス様が言っていたように新月さんのあの花で出来た翼から花を摘んで創る……そうなんですよね? クロス様は」

 「お見事ですハリス」「正解だ」


 嫌々と動かない新月に説明をしているとハリスが先に答えを出し拍手が上がる。正解したのにも関わらずハリス照れ臭そうにコートに顔を埋めた。しかし正解がわからなかった新月は悔しそうな顔をしてさらに嫌々と動かなくなった。

 困った、これでは帰れないではないか。

 押し問答をしていると思い出したようにランチボックスから残り物の瑞々しいさが失われていない葡萄の房を取り出した。これならいけるかもしれない。“名前”は決まったな、


 用意をしていると想像図が届き『服の用意なら任せろ』とコートの中でドヤ顔をするアホの頭を叩いて黙らせる。

 二人を持ち上げて薄っすらと雪の積もった地面に置かれた葡萄に血を垂らし、【生命の息吹】を使うと前回同様風が猛威を振るい死んだ老木は空の彼方へと吹き飛ばされた。


 「っ、」

 「っく!」

 「うわーーーー!!」

 『あ~~~れぇ~~~!!』


 覚悟はしていたがやはり弾け飛んだ時の威力が凄まじい。あのツァスタバが風圧でズリズリと遠ざけられている。

 寒さに震えていた二人は風の勢いで飛ばされそうになるのを裾の両端を掴み風に揺られるマスコットになることで耐え忍んだ。


 突風が治ると風に揺らされていたマスコット二人が落下し衝撃で私までもが巻き添えに雪に手をついた。雪を払い立ち直ると髪が長い女がゆっくりと雪の上に着地した。


 『はい、これ服。元はつーちゃん用に作ったものだったけど渡す機会なかったから着せておいて、多分サイズそんなに変わんないから。クロとハリスくんは後ろ向く!』

 「はい」

 「なんで私もなんだ?」


 顔をよく見ようとすると新月に裾を引っ張られて無理矢理体勢を変えさせられた。そこまでしなくてもいいだろう。

 そう口にするとまた騒ぎ出したので素直に従って待っていると終わったらしくどうぞ、という声が聞こえて前を向き直る。


 雪の中に佇んていたのは黒々とした髪が膝下まで波打った、ツァスタバよりも幾分か身の丈が低い女がいた。

 左右に葉のついた蔦を残したままの赤葡萄の髪飾りを付けた髪とホワイトブリムから覗く少し尖った耳、ペリドットの目がマスカットを思わせた。

 トロンとした目元が幼ない少女を思わせるが鋭い眼力と口元に浮かべた笑みがその見た目を打ち砕き違った雰囲気を醸し出している。


 そんな女が着ていたのは胸元に黒いスカーフにガーネットを土台に乗せたブローチのクラシックな裾の長いハウスメイトが着る仕事着に新月が憧れたピンヒールを身につけていた。

 パッと見たらしっかりと結ばれた清潔なエプロンから由緒正しいヴィクトリアンメイドだ。ホワイトブリムが室内帽ならさらに完璧なんだが。



 「具合はどうだ“ロザリアント”」

 「はい、特にこれと言ったものはございません。ご主人様」


 呼びかけに対して傅いて答えたのはこの新しく誕生した“ロザリアント”だった。




 これによりロザリアントはこれからブライダルローズの栽培と庭及びゲルを管理して貰うことになった。

 城に帰るとまた視線を感じたが何も言って来ず城内ではロザリアントは既に私達の仲間ということで一括りに見られていた。

 勿論五十嵐拓也とその仲間は新月の時と同じようなことをしていたがロザリアントには全て無視されていた。


 次の日、今日から三日間は召喚者達の世話の予定が何かの理由で無くたったらしく暇が出来たので甘露の材料である鉱石、


 ポタシウム サルフェイト50g、紅亜鉛鉱3.45g、カトラーン1g、ワーベライト1㎏、ロードクロサイト1.67g、魔乖石を削ったもの2g、

 と液体、ビスマルクの溶かしたものが1ガロン、ネクタリンと言われる山林に生える果実の果汁をバラ状石膏を乳香と一緒に溶かしたもの20ℓ、フェニックスの唾液30ℓを揃えようと王都へ買い出しに行くかということになった。今回は流石に生花やフェニックスの唾液までは用意出来ないのでそれ以外だが。






 というのが前置きだった。

 だが殆どは鉱石やら魔術に使う物が売っている店に行けばすぐに揃えられる物だったため用事はあっさり終わってしまった。そうなってしまったらどうなるかなんて分かっていたことだが―――


 「「それの結果こうなったという訳ですね」」

 「うわすげぇ! 錠剤、散剤、シロップ、軟膏、飴に農薬、香辛料から首飾りまで全部関係性の無いものがいっぱいだ!」


 そう買い過ぎたのだ、私ではなく新月の暴走のせいだったが。

 買ったものといえば霊薬秘薬、エリクサーからアリムタ……あの甘露の別名のような物だったが残念ながら甘露には一歩及ばず、といった物だったがこちらも神級の物だったため値段はが途方も無い物だが需要はあるだろうと購入した。

 他にも変若水といった液体から害虫避けの粉末薬、魔力増強の効果を謳った薄紅色のとろりとした液体が入った楕円形の瓶、没薬と天然の生薬を混ぜ込んで作られた軟膏。

 吸血種の樹木から採取した樹液を固めたもの、炭酸ガスを含んだ鉱石を砕いて山水と混ぜて作られたペリエに似た水薬。

 挙げ句の果てには枝のように分かれた4対の角を持つ魔獣から採った角を買ったり、数えて見たら合計で8枚の羽を持った昆虫が閉じ込められた世にも珍しい琥珀。

 死滅の危機に貧すと原因となった天敵を取り込んで生命を維持する珊瑚やらなんやら。

 あと珍しいことにこの国特有の常識が働いてか夢魔の尾っぽ、腕、肝。エルフの耳、目玉やら子宮なんてとんでもない物があった。さらには水子のホルマリン漬けといったとんでもないどころのものではない物を見た瞬間ハリスは悲鳴をあげていた。




 『え、頼もしい物でしょ? 買ったっていいじゃん』

 「いいでしょ、じゃない。金は飛んでいくものだぞ」

 『使うのが金ってものでしょ』

 「お前の使い方は程々じゃなくって破産レベルだ。しかも私が調節してなかった持たないレベルとは相当だろう」

 『うっかりぺろりん☆新月ちゃんお金の計算分かんない』

 「ハリス」

 「はい」


バシッ!


 『イタッ! お尻痛ーい! でも色々あったからいいじゃん。ついでに面白いものがいっぱい手に入ったんだからクロ所望の書斎にでも置いておけばいいじゃん』

 「私の部屋は物置か。装飾品はお前が持っていけ」


 殆ど使いどころがない装飾やら装備やらを新月に渡す。が、押し返された。


 『えー俺殆どリビングか畳の間にいるし寝るのはクロの部屋だし』

 「部屋の意味ないじゃないか。おかげで私の寝るスペースが狭いし毎日はだけた肌着が目の前にあるんだ。邪魔だ」

 『ラッキースケベでしょ。ねぇクロ的にはどう?』

 「罰ゲームだろ」


 そう言って痛みを訴えた新月だったがすぐに復活した。かと思えばしなだれたまま動かなくなった。

 仕方ないのでそのまま抱えて歩くと通りかかった店を指差し入りたいと訴える。

 計八つの目が上に掲げられた看板を見上げるとそこは【武器屋 (ドワーフ)】と書かれており武器屋だと知る。だがこの武器屋は見るからに普通の武器屋は無い。まずこの国にドワーフの店がある時点で普通ではない。


 あれから私はこの国についてさらに詳しく調べていたがこの国には【オージュン】を始めとした、裏社会で奴隷として売られてきた者が用済みとなり捨てられた者達が作ったスラム街が王都の外れにあるとあった。


 見るからにこれがその入り口だろう。だがそこまで嫌な予感はしないし魔力が大幅に減った時に省エネモードか何かで自動的に外れていた【エンパス】の能力も再度オート化していたのが動かないということは何もないだろう。


 ゆっくりと錆びて耳障りな音を上げるドアを開けるとよく手入れされた武器に似合わず寂れた店内にいたドワーフと見える丸いフォルム、厳つくほぼ顔が同じの三人が一斉にこちらに顔を向けた。

 


 「「「コラッ! ここはドワーフの店だ。冷やかしならとっとと帰……ん? なんだ魔族か、なら話ぐらいなら聞いてやらんでもねーぞ」」」


 顔を見ると同時に気迫に満ちた怒声で出迎えられたがジロジロと探るような目は私の目と重なると急に態度が柔和な表情なる。

 初めてドワーフというものを見たが態度から察するに余程人間が嫌いな種族なのだろうか。


 『おう、邪魔するぜ親方! ここにはドワーフしか作れない武器とかあるかい?言い値で買うぞ』

 「「「なんだこのちんちくりんは」」」

 『ちんちくりんじゃないあい! 君達だって同じだろ?!』


 種族差別について考えていると珍しく私達以外に【以心伝心】を使った新月が陽気な挨拶をすると互いが互いをちんちくりんと言い合う言い争いが始まった。しかし言っていることはとは裏腹に雰囲気は軽いので放って置いても大丈夫だろう。

 何処と無くヘパちゃんと新月の言い争いを見ているように思えてくる。ヘパちゃんは『新月が人型になったらちんちくりんだろうな~』と言って私を伝書鳩にした話し合いをしていたからそのせいだろう。

 ヘパちゃんとは向こうにいた時のほんの僅かな時間でしか交流をしていなかったが他のやつらと比べれば一番話をした側の分類に入るだろう。また今度会いに行くか、あの石もあるし。


 「「「あー済まん。見た目の割に態度がでかいから小物っぽくってなってな。そこのでっかい魔族に比べて小さいからエルフではなくピクシーかと思った!」」」

 『ほっとけやーい! ってか俺とクロは双子だし俺の方がお姉さんだし魔族じゃないし人間でもないぞ』

 「「「ほう……ではなんだ?」」」

 『神様だー! 崇め奉れ、んで拝め!』


 自ら地雷に誘導された新月にドワーフからの憐れみの目が向けられる。ペンチや金槌を持っていなかったら手を合わせられただろう。


 「「「おい弟さんらしい保護者さん、お前の正体を探るために誘導尋問したことは謝る。ああ別にやましい事は考えてないからな。だがこいつは酷すぎる。特に頭がな」」」

 「だろうな。だがこれは医者に行こうとも直らなんだ」

 「「「おーそれはそれは悲しい子だな」」」

 『うっしゃーい! っていうか客に対してその対応?! まず自己紹介しろ、でないとマグナムが火を噴くぞー……クロのだけど』


 三人の目にさらに可愛そうなというか思いが重なり新月が頬を膨らませる。両手の人差し指で頬を押すと空気が抜けて品が無い音が鳴った。それにまたドワーフの笑い声が響く。


 「「「おーそうじゃな、では右からマンボー、ダンボー、タンボーだ。まぁワシらは三つ子だし殆ど一緒にいるからそう区別をつけんでいいぞ。で、お前達は何の用だ?」」」


 よし上からマンボウ、暖房、田んぼか似ているな。覚えやすい。

 とここで挙手が上がった。地味に【エンパス】も立ち上がった。嫌な予感がする。


 『おう、出来ればこのつーちゃんとロザりんに持たせる武器をプリーズ。あとそれから面白そうなの全部持ってきてちょ。良い物は言い値でokよ』

 「「「なんだ随分と気前がちょっと待っとれ」」」


 言い値と聞いて三つ子の顔が目を光らせて俊敏に動き回る。一人は裏の方へ走って行きもう一人はツァスタバとロザリアントの手を見たり話し合いをし始める。

 また動き回り出しそうな元凶の腕を掴みどういうつもりだと聞くと踏ん反り返った紅白の背景がドンと出てくる。


 『経済発展だ! どうせあのクズ王からの給与あるじゃん? 世の為人の為だよ』


 何ドヤ顔を決めているんだ。要らんわ。


 「無駄遣いは無意味なものだろう。私にはスタシスがあるしハリスには杖があるんだ。これ以上要らん」

 『えーいいじゃんクロのケチ! ジジイ!』

 「黙れ浪費家ババア」

 『ババアじゃないもん。永久に輝く美しき白百合の女神様だぞこのろくでなし!』

 「っ、確かに私はジジイだがお前も同じだろうがこのサボリ魔が! 」

 『マヌケ』

 「アホ」


 新月の白い頬を抓ると少し屈んだ体勢が悪くお返しと言わんばかりに同じ事をされる。

 ハリスが良い歳してやめて下さいと声を荒げるが私も新月も手を離さなかった。悪いなハリス、これは私と新月の性格の問題だ手を出さないで欲しい。

 互いに頬を抓り目を逸らさずに言い争っていると残っていたドワーフの失笑で私達は互いの頬を離した。


 「ははは、随分と仲がいいようだな」

 「『まあな、伊達に長い付き合いじゃないし』」

 「声まで揃ったか! 本当に仲がいいなお前らは、ところでさっき言っていた杖とスタシスというのを見せてくれんか?物が良ければ磨いてやる」


 厳つい顔が口角を上げるのを見てハリスは自分の杖を出した。

 途端に顔付きが職人の顔へとガラリと変わる。ひとしきり観察が終わると一旦奥へと入って行った。

 三人で顔を見合わせそっと奥を除くと今度は無言で短剣のように尖った先を研ぎ埋め込まれている石を磨きと懸命に働く三つ子の片割れがいた。

 程なくしてドワーフはハリスに杖を返すとハリスは軽い、杖が輝いていると言って様々な角度から己の杖を眺める。


 「どうした。私が作った杖に何か不満があったか?」

 「ほぅ……あれはお前さんが作ったもんだったのか。素材があまりにも良い物を使ってるから驚いたぞ。坊主、これにはなんて名がついてんだ?」

 「名前……いや実は何も」

 「何? 名前をつけとらんのか?!」


 名前が無いと答えたハリスにドワーフは足音を響かせて詰め寄り天井から埃が落ちる。


 「すみません! ごめんなさい!!」

 「小僧! 名前は武器に対しての愛情を図る大事な物だ! 杖自体も所々傷があったがそれでは駄目だ、武器を愛する者こそ強くなるんだぞよく覚えておけ!!……まあいい、次はさっき言っていただけてスタシスとやらを見せてくれ」


 その気迫に負けたハリスはあまり綺麗とは言い難い床にヘタレ込むと首を縦に何度も振った。

 言いたいことを言い切ったドワーフは満足気な顔で「では次だ、」と催促するドワーフにスタシスを見せると今度はこちらが腰を抜かした。その叫びに三つ子の片割れも集まってきて同じく腰を抜かす。


 ハリスが驚かなくなってからあまり気にしなくなっていた。この反応は当たり前だ、ハリスが慣れに強いだけで普通はさっきまで話していたやつが変わったらありえないだろう。ギックリ腰にならなければいいのだが。


 三匹のドワーフは恐る恐るスタシスを触り感動のあまり涙を流し始める。


 『うわ鼻水つくからやめれ』

 「「「あ゛あ゛、ずまない゛。こんなに素晴らじい物生まれ初めでみだんだ!!」」」


 心底嫌そうな声で新月が嫌がると三匹のドワーフは泣き続けるので簡潔に話すと泣きながら拝みはじめた。


 「「「いや〜こんなに感動したのは初めてだ!! お礼に良い事教えてやる。これは研ぐ時はそのヘパちゃんという神に任せろ。あとこの武器はこのちんちくりんが成長したらのこの片刃の剣の部分が進化するぞ」」」

 「『それは本当に(か)?」』


 三つ子の発言に二つの声が重なった。ハリス、ツァスタバ、ロザリアントは進化と聞いてピンとこないらしいが私は新月に見せられた漫画などで知っていた。

 そんな展開は次元を超えた世界にしかななかったが何せ製作者はあのヘパちゃんだ。さらに元ネタは最強の武器とやらだ。




……あり得ない話ではない。






 「「「また来ておくれよ〜」」」


 三匹のドワーフがお礼にと普段売り物には出来ないような超が付くほどの希少な物を取り出してくれたおかげで財布が軽くなってから店を見送り付きで後にする。

 衝撃が強すぎてゾンビのような動きで返ってきたが城にはアデリーナを含む王族は召喚者共々まだ出払っている状態だった。

 教えてくれた気の良さそうな兵士は初心者向けのダンジョンに潜っていると教えてくれた。

 城を突っ切ってゲルを目指していると側に控えていたツァスタバが小声で呟くように耳打ちする。


 「マスター、あの兵士にエンパスは発動しましたか? したのでしたら私が彼奴の頭を撃ち抜いて来ましょうか」

 「必要ない」

 「あら、でしたら私も同行してもよろしいですかツァスタバ。私もこの鉄鞭を思う存分使って威力を楽しんでみたいものですわ」


 今日の晩御飯はどうするかとでも言うようにさらりと交わされた会話に斜め左に付き従っていたロザリアントまで便乗し始めた。

 前へと動かす足はそのままに二人に目をやると懐からさっき買ったばかりの武器を取り出す。



 ツァスタバは忍耐力や体力、俊敏性から渡されたのはライフルに似た一丁の大きな銃火器だった。

 見た目はほぼそのままに持ち主の魔力を吸い取って弾丸に変えるため制限がなく、グリップ部分に描かれた青い模様から持ち主の魔力を吸い取るらしい。作ったものの門会不出の品となっていたらしいがツァスタバ程ならば造作もないそうだ。


 対してロザリアントに選ばれたのは鉄鞭という硬鞭の一種で某SM用鞭のように軟鞭の物ではなくほぼ鉄の棒と言った方が正しい物だった。

 黒葡萄の実のような色をしたそれはロザリアントの片腕程の長さであったが使われている素材がヒヒイロカネ―――漢字にすると日緋色金とも狒狒色金ともかくオリハルコンの兄弟のようなものと双頭馬の尾が使われた非売品だった。


 この二人が選んだ武器だが実はこれを選んだのには訳があった。

 それはドワーフ達の過去の話のせいだ。彼等はこういった一歩先を行く武器を作ることが出来る為、国王の部下に目をつけられあらぬ疑いをかけられ奴隷としてこの国に入り武器職人として働かされそうになったらしい。

 大量に購入したのと新月が自ら白状したことを理由に教えてくれたが三人ともドワーフ特有の鉄の頑固で信念を貫き通し、追い出された後はあのスラム街の手前で人間以外の種族専用の武器屋として店を営んでいるそうだ。

 偶にドワーフの武器が欲しいものや事情を知らない者、城の者が来たら失敗作の鉄屑を急所に投げつけて追い出すと豪快に笑った、ハリスが足の間を抑えて震えたな。


 この二人はそういった理由からそれ以外にも短剣やらなんやらと買っていた。非売品になる程強力な武器ならばここの貴族やらを殲滅するにはもってこいだろうという思考からこの武器が相当気に入ったそうだ。



 二人が出した武器、というより凶器を懐からちらりと見せ廊下の透明な硝子から入る日光を浴びて輝かせた。側から見れば必●仕事人にも思えた。周りに誰もいなかったことが幸いだった。

 いたらすぐさまこの城から追い出されていただろうから。

 二人の誤解を解きゲルに戻ると各々が思い思いの事をし始めたのでやっと休めると安堵しソファーに背中を預けた。



****

おまけ


 『クロー♡』

 「なんだ」

 『はい、これ』


 ソファーで本を読んでいるといきなりコーヒーが出てきた。持ち上げると爽やかでふわりとした香りが漂った。飲んでみると強すぎない酸味の後に少し重たい苦味がしてベリーやグレープフルーツ、蜂蜜などの風味で終わる。

 私には酸味が強い。一口飲んでソーサーに戻すとそわそわとした新月が様子を伺う。


 『どう?』

 「美味いが酸味が強い。これアルール・バタ入ってるだろ? 私はあれぐらいの酸味が許容範囲だ。これは他のものが入ってるから余計に酸味を感じる」

 『しょびーん。不味かったのか、せっかくブレンドに挑戦したのに』


 だからか前回ツァスタバがコーヒーに付いていた付属品の淹れ方マニュアルを読んで淹れたものだと言っていた。

 今回のは香りが違ったのは、しかもブレンドということは少なくても二種類は買ってる。新月が買い込んだコーヒー豆はやけに数が多いと思っていたが数種類買っていたとは思わなかった。こんなことになるならしっかりと見ておくべきだった。


 『じゃあこれは没だ』


 カップに残った残りの大半を捨てようと新月が手を伸ばしたのでカップを取り上げるとあいつは眉を八の字に寄せた。


 『え? 不味いんでしょ、無理に飲まなくていいよ』

 「酸味が強いと言っただけで不味い、飲めないとは一言も言っていない。これは私の感想でしかないんだから捨てなくてもいいぞ。第一、味覚なんて全員が一緒じゃないから味わい方が違っても仕方ないだろ」

 『そ、そりゃそうだけどさ〜』


 「お嬢様、そんなに気を落とさないでください」

 「ご主人様の好みとお嬢様に好みの違いがあるだけですから今回のものがお口に合わなかっただけです」

 『だけどさ〜やっぱりクロには美味しく飲んで貰いたいの! 』


 そこまで拘らなくても私は出されたものは突き返すようなことはしないからそこまでしなくていい。と口を開こうとするとハリスに袖を引っ張られた。


 「クロス様あれじゃあどうしようもないです。アドバイスとはしたらどうですか?」


 見かねたハリスが助言を乞う。と言われてもどうするか……とりあえず酸味を減らせばいいのでは?


 「アドバイスか、だったらあまり酸味のあるものを入れなければいいだろ。アルール・バダ自体も酸味は持ってるんだから酸味のものを入れたら余計に強くなるだけだけだからな。もっとも私自身もコーヒーに詳しくなる程飲んではいないから分からない」


 「そうですか」

 「でしたらお嬢様、もう一度だけコーヒーを淹れてみましょう? 今度は私達もお手伝いしますから」

 『そう?』

 「はい、ですからご主人様は少々お待ち下さい」


 そう言って三人はキッチンの方へ行ってしまった。

 なんだったんだ。そう思い読書を再開させるとしばらくして肩を叩かれた、目を紙から話すと三人がまた別の香りのするコーヒーを持っている。

 飲めと無言で言われて飲むとあまり酸味が殆ど無くなり飲みやすいものになっていた。

 しかしアルール・バダ以外にも別のものが入っている。ブラジルか? 酸味が少ないからかよく合う。

 率直な感想を言うと三人は手を取って喜び合った。それにしても、


 「よくぞこの短時間でブレンドなんてもの出来たな」

 「いえ、単純にコーヒーを全て淹れて飲んだだけ ・・ですので大したことはしておりません」

 「ええ、そこからは酸味を抑えたものを何種類か作り一番簡単なレシピのものをお嬢様に作って頂きましたがどうやらこれが当たりだったみたいですね」

 「はい、何回か試した結果サイフォンならば普通にコーヒーを淹れる時に失敗が少なくお嬢様に合っているとわかりましたからこれからはお嬢様お一人でも大丈夫かと」

 「他にもエアプレスといったものもありました。ですががどうしても粉が残り易くご主人様に提供するのを今回はやめたのですがまた頃合いを見て出しますね」


 地味に凄い事をしていた。時間を確認するとあれからあまり時間が経っていなかった。いつの間に用意したというんだ。


 『クロが飲んでくれて良かった! あのどす甘いのは俺も嫌だったからね〜』

 「そうか、しかしそれならストレートコーヒーを淹れれば良かっただろうに」

 『え、そりゃ俺の考えたものをクロに飲んで貰いたいという愛だよ♡』

 「そうか」

 『受け応え軽い! そこはせめて顔を微かに赤らめて言うところでしょ?!』

 「五月蝿い」

 『えー!! 新月ちゃん悲しぃ〜』


 何が愛だ。普通に淹れればいいだろと返すとツァスタバとロザリアントにはやれやれといった仕草をされ、ハリスには盛大な溜息を吐かれた。何故だ簡単な方がいいだろうに。


 だがこの後、いつも出されるコーヒーが何故か私だけブレンドに変わった。別に味は不味い訳ではないので問題は無いが無理して拘らなくていいのにな。














……だがこれも良いものだな。


霊薬秘薬…回復薬、強さでは秘薬<霊薬。霊薬の方が威力は強く運が良ければ捥げた腕まで回復する。


エリクサー、アリムタ……甘露の別名のような物だが残念ながら甘露には一歩及ばずといった物。しかし賢者の石の未完成品程には力からがある。


変若水…上のものと同じよなもの。


害虫避けの粉末薬…中毒性の高い植物の実からとった有害物質。虫にも効くが人間や魔獣と言ったものにも効く。


没薬と天然の生薬を混ぜ込んで作られた軟膏…ホボハ・オイルという名前の商品。神経を癒し回復を促す軟膏。


 吸血種の樹木から採取した樹液を固めたもの…クルハ・ドルト。個体だが人肌にまで温めると液体にもなり沸騰すると気体にもなり赤い霧となる。血を求める吸血鬼などに見逃してもらうために渡す旅の必需品、運が良かったら大量出血を起こした患者に使える。


炭酸ガスを含んだ鉱石を砕いて山水と混ぜて作られたペリエに似た水薬…アタムセ・イルナピル、

清らかな水をさらに清らかにした精製水。実験をするときや薬品を作る時に使われる。


枝のように分かれた4対の角を持つ魔獣から採った角…ザカザペン、という馬に角が生えた魔獣の角。粉にすると真っ赤な粉になる。彩りに使われる調味料だが代理品はいくらでもあるので飾りとしても使える。


数えて見たら合計で8枚の羽を持った昆虫が閉じ込められた世にも珍しい琥珀…何万年も前の生物が閉じ込められた琥珀。強い加護を秘めたお守り。クソ高い。


 死滅の危機に貧すと原因となった天敵を取り込んで生命を維持する珊瑚…見た目はただの珊瑚だが自分が殺されたときにこの珊瑚で矢じりを作り射ると自分を殺したやつも道連れできる。


 などなど他にも書物やなんやら買ってる。

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