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遑神 ーいとまがみー  作者: 慶光院 周
え?今からこの展開ってマジですか?
46/80

どこでもごーいんぐまいうぇい

2日目

  生き絶えたギーヴルが重力に従い鉄を落としたような音をあげて土に横たわると握っていたものが軽くなる感触がした。強く握っていたスタシスが消えて現れたのは喉を抑えて膝をついた状態で苦悶の表情をした新月だった。


「大丈夫……ではないな。すぐに解毒剤の作り方を調べるから我慢しろ。今こそお得意のど根性を見せろ」

「………っ、……!」


 膝立ちから震えながらゆっくりと重力に従い崩れ落ちる身体を抱えて草木が無事だった所まで運び寝かせると猛毒で駄目になること見越して使い捨ての採取する為の刃物を出す。

 こいつではナイフでは切り出すことは難しいだろうからと日本刀もどきでコア、肉、骨、川、牙などの解毒剤になりそうなものと後々役に立ちそうなものを採取して【世界の図書館】や前に買った本などを出して必死に解毒剤を探すとあった、だが……




「なんだこれは」


 思わず声に出てしまった。その方法というのがとことん過程が果てしなかったが出てきた文献によると以下の通りにしなければ調合は上手くいかないらしい。


 『材料の鉱石がポタシウム サルフェイト50g、紅亜鉛鉱3.45g、カトラーン1g、ワーベライト1kg、ロードクロサイト1.67g、魔乖石を削ったもの2g、


 液体、ビスマルクの溶かしたものが1ガロン、ネクタリンと言われる山林に生える果実の果汁をバラ状石膏と乳香を溶かしたもの20ℓ、フェニックスの唾液30ℓ、


 素材、三百年に一度咲くという白い優曇華1輪、ヒスイカズラ一輪、ブライダルローズ50輪、ホワイトリリー600g、莎莎羅竹400g、アンパン一個、食パン六枚切り一枚、ロング明太子パン』



 ……なぜにアンパン、食パン、明太子パンと最後に食べ物オンパレードなのか疑問を投げかけたいところだがそれはあとでにする。これだけでも集めるのに相当な労力と財力、時間をかけるものだとは思わなかったのだ。

 だがまだまだ序の口、本当の調合はまだ始まってすらいない。調合過程の方が時間がかかりそうだ。そう思うと気が遠くなり頭を支えたくなった。


 『まず鉱石のポタシウムサルフェイトとロードクロサイトを乳鉢でザリザリとした感触が無くなるまですり潰し、ネクタリンといわれる山林に生える果実の果汁をバラ状石膏と乳香を溶かしたものを作り、加えて49日間容器に入れて密封し寝かせる。

 寝かせたものに莎莎羅竹を少しづつ混ぜて加えるとさらに600日寝かせるとこれで第一過程終了となる。


 第二過程はその間にビスマルクを溶かしたものを残りの鉱石を全てすり潰したものを加えて四分の一になるまで煮詰めたあと日干しして乾かす。

 乾いたものをフェニックスの唾液を入れたあと、ホワイトリリーを全て加えてろ過、ヒスイカズラを丸ごと千切りにしてろ過した液体と混ぜる。

 ろ過して残ったカスも完全密封の容器に入れて取っておき二年間乾燥させてから蒸留する。


 第三過程で第一過程、第二過程、第二過程で出来たカスを混ぜ合わせ水属性魔法を使い凍らせる百年寝かせる。

 ブライダルローズを加工してナイフを作り氷と食パンを切り刻む。刻んだものを炎でゆっくりと溶かしたあと、再度ろ過したものを蒸留させると丁度1ガロンになる。これで完成となる。

 これを猛毒に侵された患者の重度に分けてごく少量を侵されている猛毒を僅か0.1molと一緒に水に溶かして飲ませる。

 このろ過したカスは肺を病んだ患者にとって良薬となるので捨てないこと。


 P.Sアンパンとロング明太子パンは暇な時に齧る用にどうぞ。』



 アンパンとロング明太子パン要らないだろ。誰がこんな馬鹿げた材料を材料に含めたんだ。排除しろ排除と言いたいがこれがどんな猛毒をも分解する幻想級解毒剤【甘露】だった。

 幻想級というのは神話レベルで聞いたことはあるが作りたくても作れず話だけが語り継がれるものを指すらしい。その下には神級、神だけが作れるという意味で神級。さらにその下が伝説級、上級、中級、初級となっており見事なピラミッド形で価値が定められている。


 ちなみに魔法でもこの階級は使われていた。私が前に落とした隕石はこのピラミッド階級の二番、神級の一番簡単なもので宮廷魔導師が使える最高ランクの魔法に食い込むものだと【世界の図書館】に書いてあったのを見つけた時には乾いた笑い声しか出せなかった。つまりこれ(・・)()()のせいだったのだと悟ってしまった知りたくなかった。

 そりゃこんな無謀な調合法では普通に考えても人間は死んでるだろ。なんだ百年寝かせるって、私じゃなければこんなの作れない。幻想級にもなる。


 仮に作れるとしてもその間どうするんだ患者死ぬだろ、と書いた作者にケチをつけていると王都の方角から地面を蹴る音が多数聞こえた。

  これは人ではなく馬か? 砂塵を巻き起こす程大勢の馬が走ってくる。おかげで視界が悪く目を凝らすのを諦めた。

 そうこうしないうちに傷ひとつないシルバーメイルを着込み旗を掲げた白馬の集団が登場する。




 集団は沼からはみ出ている死体を見ると顔を背けて嗚咽する人間、馬から降りて吐きだす人間の二種類に別れる。

 集団が落ち着くとレイピアを装備し、シルバーメイルに銀の髪飾りをつけた金髪の女性……この場合は女騎士とでもいうのだろう。その典型的例が焦った表情で私達のところまで駆け寄る。


「……これは一体?! 貴方が倒したのですかえっと……そちらの服を……着ておられない方の貴方。

 私はこの神聖カルットハサーズの近衛隊の部隊長を務めておりますイルメラ・ヨゼフィーネ・カミラ・ザ・アードラスです。

 本来なら国王様に命じられた我々の部隊がこのギーヴルを倒す予定でしたのに貴方方にこのような結果にしてしまい申し訳ございません。この度のことは礼を言います。

 ……ですがこのままでは公正わいせつ罪で城内の裁判所にご同行して頂くことになりますので出来れば今すぐ服を着て欲しいのですが……目のやりどころに困るし……この人変態なの?」


 最後にごにょごにょっと本音を言われて言葉の槍が刺さる。

 悪かったなイルメラ……長ったらしい名前だな面倒だ。もうじゅげむか女騎士で覚えるかと思っていると新月から


 『女帝ちゃんの時と同じことしてる~いけないんだー (°∀° )/』


 といった下らないものが【以心伝心】で届いた。

 横を見ると苦しいはずなのに口角を上げる顔が私を見つめていたので耳を引っ張る。お前だって同じことやってるだろ。ステータス画面と同じような画面でなければ破り捨てたい衝動に駆れたが出来なかった。


 アホが巫山戯る程の体力は残しているのが分かったので女騎士に任せて帰ろうとするとガシッ! と効果音が付く方法で腕を掴まれて早く服を、と今度は鋭い目つきで注意された。

 面倒だがシャツだけ出して着る。私だってわいせつ罪でお縄は嫌だった。




 シャツ全てのボタンを閉じると女騎士は安堵した表情ででは状況の説明をお願い出来ますか、といって部下らしき若い女騎士を呼び寄せ立ったまま羊皮紙と黒檀のスティックを握る若い女騎士。チラリと目をやると私を睨み早く語れと態度で示す。

 ここはさっき新月が言っていた通りに言うべきだろうか、話を書き写す女騎士に合わせてゆっくりと軽く要点を掻い摘んで説明すると若い女騎士は黒檀のスティックを落として割った。団体の顔は驚きと羨望の色に早変わりをする。



「……という訳だ。それより私の連れが猛毒にやられて苦しんでいるのだが解毒剤とまではいかなくても症状を和らげさせる薬はないか?」

「……あるにはありますけどそんなことが出来るのは伝説の幻想級解毒剤【甘露】だけです。

 でもあれは伝説ぐらいでしか聞いたことがありませんし調合をするのにも素材すら存在しないようなもが含まれますから……辛うじて和らげさせる作用を持っているのは市販の毒消し草ぐらいですよ? しかもただの気晴らしぐらいです」


 聞き取りを終え沈んだ声で女騎士は羊皮紙を巻くと口を重く閉ざして俯く。時間はかかるだろうが私なら作れる。

 そう言えたらいいのだろうが言ったら言ったで面倒になる、と隣で苦痛に顔を歪ませている新月が目でアイコンタクトをして来た。それに習い、言葉を喉に押し込んで黙る。

 指示通りにするとそれよりも早く運べ、と再度指示が女騎士から集団へと命じられる。


「とりあえず話は終了していいか?」

「は、はい! 申し訳ございませんでした。我々も手を貸しますのでひとまず王都までお送りします。それとギーヴルを倒して頂いた礼として私の権限で国一の医者を使わせますのでご安心を!  

 あ、失礼ですがお名前を聞いてもよろしいでしょうか」


 猛毒から逃れようと身を縮こまらせる新月を背負い女騎士に最も優先するべきことはなんだと遠回しに問う。慌てた様子で部下であろうシルバーメイルの団体にあれこれと指示を出しながら取ってつけたように名前を聞かれた。

 ここではしっかりとギルドで使っている偽名を名乗っておく、すると団体の動きと女騎士の動きが口をだらしなく開いた状態でぴったり止まった。


 私は何もしていないぞ、そう言いたくて睨むと止まった時が動き出して小パニック状態となった。女騎士の指示が倍の速さで進行する。

 やれ、国王様に連絡をしろ、駿馬に乗ったものが行って報告をと、これでは我が国とヴェレンボーンとの対立が激化してしまうのでは……などなど。

 大げさ過ぎる内容が飛び交いあれよあれよという間に先に王都へ向かった駿馬とは別の駿馬で王都へと向かうことになった。そんな状況でどんなに騒いでも声が出ないということを今だけの特権と考えた新月は【以心伝心】を使って


 『護送だ~! ピーポーピーポー不審者が通りまーす』


 と言って巫山戯たことを送って来たので鼻をつまんだら女騎士に怒られた。むぅ……





 駿馬に乗って王都、プリジーンに戻るとハリスが新月の容態を見て海老のように飛び上がる。ツァスタバは症状に気をつけながら傷跡を動かさないように燕尾服を脱ぎ、即席の担架を作るとそれに新月を乗せて近衛隊の集団と一緒に城まで護送された。


 騎士に守られ連れていかれた神聖カルットハサーズの城はヴェレンボーンの宮殿よりも絢爛豪華を具現化させたような建造物だった。

 例えるならヴェレンボーンは自然を主体に置いたものでエルフの女帝が住むところに相応しい場所だった。それに対してこちらは城に訪れるものを驚嘆させるために造られた建物だろう。

 城に着くとすぐさま客間という名の新月が好きそうな繊細な曲線が特徴の贅の限りを尽くした部屋に通され医者に見てもらうと『生きているのが奇跡だ』と驚かれた。そして辛うじて生きているが声は【甘露】がないと治らないらしい。


「嬢様大丈夫ですか?」

 『なんとかね、真面目にやばいって思ったけど』

「まったく、無茶ばっかしてるからこうなるんですよ。少しは反省して下さい!」

 『めんごめんご、許して』


 客間を入りもう一つドアを開けたところにあるこれまた豪勢なベットの側に書き物机から拝借した椅子に腰掛ける。

 寝具の前でツァスタバが体を気遣いハリスには怒られた新月がハリスを謝り倒しているのを眺めていると声が出せない以外に問題はないと見えた。

 いや、今の新月は声が出せないので【以心伝心】を使っている。

 そのため新月が話したいと思ったやつ以外には会話が聞こえない。しばらくは私が通訳係になりそうだというのが問題か。


「マスター、お嬢様の容態も安定されましそろそろお召替えをされませんと」

「ああそうだな。ハリスここでこのアホがまた何かやらかさないか見張っていてくれ。私は隣で着替えをしてくる」

「分かりましたー、見張ってまーす」

 『着替えるならあのキンギラギンでね〜』

「はいはい、宮殿用のアレだろ」


 ただの見張りのために真剣な顔でビシッと敬礼をしたハリスに対して笑顔で手を振って見送られた。


「お手伝いします」

「ただ着替えるだけだ。そこまでしなくていい」


 スッと当然とばかりに側によって来たツァスタバの肩を軽く叩く、隣の部屋に移動し寝室とは別の扉を開けるとバスルームがあった。少しだけならいいだろう思い拝借して備え付けのバスタオルも使わせて貰いあのキンギラギンのセットを取り出す。


 あまり袖を通したくはないが面倒なことにはなりたくない。

 気は進まないが手を動かしスラックスのループにベルトを通していると扉の先から物凄い足音が聞こえる。

 城だというのに走る馬鹿がいるのかと考えていると段々とその足音がこちらに近付きはじめていることにようやく気がつくとほどなくして【エンパス】が発動し出した。

 何か悪い物がこちら来ているなと思い咄嗟に隣の部屋には音が聞こえないように『サイレント』をかけておく。

 ベルトをスラックスの最後のループに通すと同時に足音は部屋の目の前まで来た。ロックも無く乱暴に扉が開かれ蝶番が嫌な音を立てる。


「何事だ、五月蝿い」


 頭を拭いていたハンドタオルを抑えながら左足を一歩後ろに滑らせてゆっくりと後ろに向き直る。



 あ、と声を上げたのはその内の誰だったか、それが確認できない数のーーーいや正確にはまだあどけない子供とも呼べる男が二人、女が四人いた。この子供が例の異世界召喚されたやつらかと直感でそう思った。

  なら一番先頭にいるのは召喚で一番重要人物として名前が書かれていた五十嵐拓也だろう。だが子供の一人は名前が不明だドレスを着ているからこの国の王女か何かかだろうが。

 彼らは部屋の中に居る者になんの声かけも無く勝手に入って来た、挙句に私の顔見ると口を閉じることを忘れ瞬きせずに視線を徐々に下へ下へと降ろしまた顔を見るという動きを何度も繰り返している。


「なんだ、不法侵入の挙句に挨拶の言葉も無いのか五十嵐拓也、田島薫、一条美海、吹雪沙羅、佳奈・シトローヌ」


  王女以外の子供をわざと視線を一人ずつ向けてフルネームで言うとさっきまでの威勢はどこへやら、惚けた顔が陸に上げられて震える魚のように目をパチパチと、口をパクパクを開く玩具に成り変わる。

  これでこいつらへする仕返しは終わった。しかし一名だけ除外というのもなにかおかしいので仕上げに王女にも目を合わせてやるこちらは召喚者の子供のようにチラリではなく見つめてみる。これが王女のやることか? という意味合いも足して。


「お前はこの国の女王だな、なぜこんな無作法なことをしているんだ。まさか名乗り方も教わっていないのか」

「……っ?! お前! アデリーナに対してなんてこと言うんだ!! 無作法? ここは彼女の城なんだからロックなんてしなくてもいいに決まっているだろう!」

「いいえ拓也! これは私の作法がなっていないことが悪いのです。先ほどは申し訳ございませんでした私のみならず勇者様のことも私が謝罪させて頂きます。勇者様がなさったことは勇者様を預かっております私の責任でござます。どうか、どうかお許しを!」

「「「「アデリーナ?!!」」」」

「……え?」


 女王……アデリーナが私の言葉を聞いて弾けたように五十嵐拓也より先頭に出てくるとドレスの両端を持って三歩下がると深くお辞儀をした。

 続いて召喚された勇者様とやらが一人を除いて驚きの声を張り上げる。五月蝿い、驚くのはいいがそれより早く出て行って欲しい。


「五月蝿い、隣の部屋には怪我人がいるんだ静かにしろ。もういい王女アデリーナ、お前の謝罪で帳消しにするからこいつらを連れて退出しろ。これではゆっくりと着替えが出来ない」


 少し上から目線の本音をありのままに伝えるとアデリーナは急いで召喚者全員の手を掴み外へと出す。去り際に国王様がお待ちですので落ち着いたら城の者にお声をかけて下さいと言って扉をゆっくり閉めて立ち去って行った。


 一体何がしたかったんだ?




 ****

 アデリーナ視点


 勇者様達の手を握って客間から王女にはあるまじき大股とうつむいた表情で歩く。

 今はだらしがないが仕方ない私は……この私は国の代表として立つ者があの様な無体をしてしまったことが恥ずかしい。あのお方はヴェレンボーンから我が国へと招いたお方だ。


 ―――あぁ、なんてことをしてしまったのだろう。

 あんな取り繕った様な謝罪では口ではああ言っておられたがお召替えの真っ最中になあのようなことになったのだから内心では凄くお怒りの筈だ。

 先刻、城中にあのお方がお父様直々に討伐依頼を出されたあのギーヴルを怪我人を出されたとはいえあんな短時間で、しかも蚤の市に行っていたと兵士から伝達を受けていたからなんの用意もせずに倒したということになる。


 相当強いのだろうあの方は、それに私に対してあの様に平然と言い放つことが出来る度胸、客間に入る前でも部屋の外に隠すことなく溢れていた威圧感、話掛けられた時のこちらに物を言わせぬ強制力、只者ではないことだけはわかる。


「アデリーナ! あんなやつにあんな言い方されていいのかよ?!」


 手を振りほどかれて私の手が跳ね返ってくる。手を振りほどかれた私の手はだらりと下がりもう片方の腕も同じように垂れ下がる。

 そんな力が抜けた腕を見て私は彼らに私はずっとうつむいて隠していた後悔の念が渦巻く感情を彼ら勇者達にぶつけると酷く驚いた顔で見つめられる。しかし今の私にはその視線もどこか遠くに感じる。

 まるで私の身体には視線が届いているのに魂だけはどこかここではない遠くに行ってしまい彼らの視線も、顔も、声すらわからなくなってしまった。そんな状態だ。

   拓也はあのお方の威圧感を感じなかったのだろうか? だとしたら……





 だとしたらとっても運が良いと言いたい。


 私はあの方の威圧感を恐ろしく感じた。お父様や他国の王や女帝特有の威圧感にはよく押し負けられて震えたくなることがよくある。でもそれは何回か謁見をすればこのようなお方なんだと理解出来るので私だって我慢出来る。

 だがあのお方の前ではそんなこと出来ない初めてお姿を目にした時、私は……膝を折り祈りたくなった。

 お父様や他国の王をも凌駕するその威圧感に、お父様はあの方をヴェレンボーンでも指折りの冒険者だと言っていたがあのお方を見てそんなちっぽけな存在では無い。

 私なんかでは話し合える身分ですらない存在だと確信した。それこそ神のような存在……かもしれない。


「「「アデリーナ?」」」


 三人に名前を呼ばれて思考の海から現実へと一気に引き戻された。

 衝動で身体中から冷や汗が滝のように湧き出た。過呼吸になりそうだ。苦しい、真綿で首を絞められたような感触を覚える。


「はぁ……はぁ……」


 息を整えて体制を整え勇者様達を一旦部屋に戻って配給されている礼装を着てくるように命じると大股から駆け足へ、無意識にスピードを上げて回り階段を駆け上り、自分の部屋にたどり着くと乱暴に扉を開けて震え出す両手で鍵を閉めて寝具に身を投げ出す。


 どうしよう、私だけでは凄く心配だ。お姉様が居れば……いやそんなことを考えても仕方ない。


 右手を天蓋の天井へと伸ばす。銀とアメジストで作られたブレスレットが証明に照らされるのを見て今までの考えを一蹴して寝返りを打つ。

 睡魔に浸るよりも前に早くお召替えをして謁見の間に行かなくてはならない。今度こそ私はあのようなことをしでかさないように。そう脳に命令を出し夢におぼれたいと言う体に鞭をふるって奮い立たせ目を開く。



 大丈夫、私はこの国の王女。王女である私がしっかりしなくては!

 

 頬を両手で叩き痛みで睡魔を追い払うと気を取り直して召使を呼び着替えを持ってこさせる。

  さあ、着替えなくてはいけませんわ、そう言って召使いと自分に言い聞かせた。

一人名前が抜けていたので入れました。ついでに間違ってた人の直しました。

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