アホの歌
アホが色々と叫びます。
以降、ツァスタバの提供でお送りします。
ピロリー♪ ピロリーン♪
私達が乗った船ですがこれは前にお嬢様が特殊スキル【千里眼】を応用してご覧になられていたどこぞの沈没した豪華客船のような『豪華』と『贅沢』の四文字を入れ込んだ造りになっておりました。
勿論、船が豪華で贅沢なら乗っている乗船客も豪華、贅沢の二文字がお似合いな紳士淑女の方々ばかりです。
王族、貴族、ドレス姿の淑女、紳士服を着た紳士。前者程ではありませんが品のいい格好をした若い男女、子供、しっかりと手入れされた犬、猫……を尻目に手すりから足を出して釣り(マスターがご用意されました)を楽しむ私、ハリス、お嬢様、マスター。
現在、ハリスはいつもの格好で釣りをしていますが魚が一匹も釣れず、つい先ほど床に大の字になって夢の世界へと旅立ってしまいました。
私ですか? 私は勿論執事姿のまま釣竿を垂らしておりますよ?
ピロリー♪ ピロリーン♪
っと、ここまでは普通ですがここからが問題でした。
「おぉ! これ鯛じゃん!? 鯛ゲッドだぜ!」
この声はお嬢様ですね。どうやら持ち前の運良さを使い大物を釣り上げられたようです。しかし、お嬢様は普通に釣りをして釣り上げた訳ではごさいません。
お嬢様は現在1人、神様印お一人様専用の充電式こたつに引きこもりながら片手で特殊スキル【千里眼】を応用した画面において付喪神を使役する。というゲームをしながら釣りを楽しんでおられます。随分と器用ですね。
ピロリー♪ ピロリーン♪
「そうか、なら今日の夕食は鯛を使ったものを頼む」
「え〜! 鯛なら茶漬けか刺身ぐらいでしょ?ならクロがやってよ! 魚捌くのって結構面倒いんだから」
「面倒いといいながらもここまでこたつを持って来て一人ぬくぬくとしてるんだ。それが出来るなら刺身ぐらい出来るだろ。ついでに鰭酒もな」
「いや〜ん!!」
という会話をしているのはお嬢様の双子の弟(だといいますがそうは見えません)であらせられるマスターでございます。しかし、お嬢様がお嬢様ならマスターもマスターですね。
お気づきだと思われますが乗船した時から鳴り止まなかったあのマ●クという音はまだ止まっておりません。
さらに服装は濡れてもいいようにとのことでお嬢様が作られたという茶色の熊の着ぐるみパジャマというものを身につけられておられます。
私が作られて最初にマスターにお会いした時にもこの着ぐるみ姿でしたがこれにはやはり違和感しかありません。
どうか想像して頂きたい。2mを超える外見は男らしい人物が可愛らしい熊の着ぐるみパジャマを着てマ●クの音を纏い、釣りをしているのを……絵面的に合いませんよね?
違和感がありまくりです。ですのにマスターはお嬢様から貰ったものだからということでなんやかんや言っても着るのです。
愛です。愛ですね、しかし愛と海藻を釣る能力はあっても時と場所を合わせる能力と釣りで当たりを引く能力は持ち合わせておられていないようです。
おかげで偶にここを通りかかった人は綺麗な海にミスマッチな光景を見て目を白黒させて通り過ぎて行きます。
あぁ、マスターとお嬢様には早くこの状況に気が付いて貰いたいものです。
以上、ツァスタバの提供でお送りしました。
****
「平和だねぇ〜」
「あぁ、平和だな」
釣り針に引っかかったワカメもを外していると殻の中から新月が独り言のように呟いた。
平和、
何気ない一言だが重い言葉でもあるこの一言。戦争や飢餓、刺激的なことなど何も無い穏やかな日々。
世界が平和になることは無いが今現在の私達は平和だ。
「暇だね」
「暇だな」
「暇っということで決めようと思っていたけど決めれなかった誕生日を考えたいと思います!」
「はぁ?」「はい?」
唐突な提案と一緒に新月が殻から元気よく頭と子供のような笑顔(中身はBBA)を生やしてきた光景に思わずツァスタバと二人で間抜けな声を出してしまった。
「あはは、二人とも間抜けな顔! 誕生日だよ誕生日! つーちゃんは創られた日でいいけど俺とクロには無いじゃん? だから決めておこうと思って」
「……あぁ、なるほどな。それで私に誕生日を決めるマシーンか何かを出せと言いたいんだろ」
「ばれた?」
「慣れた」
なぜにと思ったが新月から理由を聞いて納得する。が、慣れたというよりこの展開には飽きた。
どうせ釣り上げたのは昆布とワカメだけだったので暇潰しには丁度いい。
釣り針を回収し、竿掛けに置いて365日分の日にちが書かれた紙と袋を用意する。
「ほら、とっとと引け」
「はーい! 何が出るかな♪何が出るかな♪っと」
用意した紙を袋に入れて殻から頭を出しているこたつむりに渡す。渡した袋に手を突っ込んだ新月は片手でゲームをしながら紙を選ぶ。
「えー、『2/14』バレンタインデー●ース♪(あの歌の音楽に合わせたテンポ)次、クロのターンね」
紙を引くと2/14とあっさりと新月の誕生日(偽)が決まり3秒程でUターンで戻ってきた。早い、そして2/14と聞いて国民的な曲のサビが頭に流れる。
これは少しでも聞いたらしばらく流れ続けるものだったなと考える。
こいつ確か私の自分のことを双子とか言っていた筈だよなと思いつつ、まあこの場限りの遊びだと割り切り手袋をした手を箱へと入れて手に触れた紙を取り出す。
四つ折りの紙を開くとそこに書かれていたものは『1/15 アダルトの日』、
なぜだ。
「プギャーwww9(^Д^)」
「おや」
「笑うな」
「笑うなってwww無理に決まってるじゃん! アハハ、これって絶対にクロの伝承の『性行為を好む』のせいじゃん!!
ハハッ! クロの運30ヤバいんだけどwwwこれノバ(呪いに乗っ取られた時バージョンの省略形)の影響が今ここにwwwでもクロ本人自体は旺盛ではなく寧ろうs……ッアベシ!」
殻をガタガタと鳴らしながら笑い転げるアホこたつむりの頭にデコピンを一発入れる。
「お嬢様! 大丈夫ですか、っと! しかしあの場は笑ってはいけないところだと思います」
「痛ーい!! でもぉ〜……うぅクロぉ〜、君ってやつはもう少し力の加減を覚えろよ! 痛いじゃ無いかぁ〜……」
額をおさえて殻に頭を引っ込めるこたつむりの角を心配してツァスタバが中身を外へと引っ張ると本体(新月)がでろーん、っと引きずり出される。
自分で叩かれる状況を作った本人が何を言うんだか。大体、笑ったやつが悪いに決まっているだろ。
しかし、ハリスが何も聞いてなくてよかった。私まで変な目で見られるのは遠慮願いたい。
「♪あ〜痛いよぉおおお!!! 衝撃を味わった頭が、首が、額が!
あまりの痛さに拙者の脳にお昼寝タイムとお菓子を要求してくるぅ~~。あ~あぁ……、首が衝撃に負けてもげたらどうするんだよぉ……慰謝料請求、お金ちょーうだい♪」
「当たり屋か」
ドスッ!
「アデッ!」
痛いといつつも釣竿をマイク代わりに熱唱し始めたアホが歌の最後に右手を私へと伸ばして金を無心してきたのでツッコミと同時にチョップをお見舞いする。綺麗に入った。
頭を押さえた新月はむすっとした顔で反撃のつもりなのか釣竿の先端で脇腹をつつくる。むずがゆいので手で遮った。
「いてて!! ……当たり屋じゃなくってただのおこずかいが欲しい女の子だしぃ~」
「弟に要求するのか。とんでもない姉だ」
「とんでもなくないもん! だってクロが財布握ってるじゃん!!」
「お前に任せたら勝手に日本円に変えて日本に行くだろ。この浪費家」
「ケチよりは経済回してるしいいじゃん!」
「却下」
「けちんぼ!! っておぉ、また当たりだ。
今度は……うぅ! 重ーーい!!
マグロか?! カジキか?! はたまたブリか?! 個人的にはマグロは大トロもいいけど中トロ派、ブリはみか●ブリが美味しいと思う新月です!!
よっしゃぁ! やる気出た! 絶対釣るぞ、今晩の夜食メニューはお寿司!! って訳で【狂気】発動!!!
キシャァァアアアアア(ばっちこい!! 訳)」
新月が額をツァスタバに軽く手当をして貰っていると釣り竿が突然激しくしなった。
それを見た新月は額の痛みのなど叫び(バカの金銭要求)を歌っていたのを忘れてルアーを巻き始めた。本当に大物らしく一筋縄ではいかないと判断したのか物騒な名前の能力を使い始めた。
なぜ私が居るのに私に任せない。
「なに釣り相手に危険なもの使ってるんだ。私に頼めばいいだろ」
「グロァァ◼︎◼︎◼︎@けlzねmdls◼︎ーーー!!!(クロが関わると運30で逃げられるじゃん!!! 訳)」
「悪いが何を言っているのかさっぱりわからん。ツァスタバ、手伝ってやってくれ」
「はい、かしこまりました。微々たる力ですがお……」
「マグロ、カジキ、ブリ、これらは大きければ大きい程高いんだぞ。それが目の前で餌につられてやってきたんだ逃すな」
「俄然やる気が出ました。かしこまりましたお嬢様、僭越ながらお手伝いさせて頂きたいます!」
【狂気】というものを使った新月が宇宙人語を喋り出したため何を言っているのかのかさっぱりだ。宇宙人と化した新月は大物がきたらしく殻から出てきてデッキの手すりに片足をかけて踏ん張り始める。
それを見た私は何を言っているのか分からないがとりあえずお邪魔蟲扱いを受けていることだけ理解した。
なら他の人間に任せようと思い辺りを見回すがここは人気の多い船の船首とは真反対の船尾。しかも時間帯は午後3時。
こんな船に乗る客は皆、お茶の時間で船内に引きこもり誰もいない。
仕方がない。ツァスタバに頑張って貰うかと思い頼むが何やら遠慮がちに頑張るなど言い出してきた。
こそで大物は高いと教えると目をあの元素材の親、シルバーゴートのように目を鋭く、山羊の目のように瞳孔の形を変える。
ツァスタバがやる気 (食い意地)を出したところで私は少しその場から離れる。今近くに行くとまた宇宙人語で答えるだろうから大物は二人に全面的に任せて観戦をしよう。
二人とも任せたぞ。あと、個人的にはマグロがいい。
「つグッァァ◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ーーー!!!(つーちゃんもう少しだがら引っ張って!!! 訳)」
「お嬢様! 何を仰っているのかはさっぱりですがもう少しですので一気に引っ張りますね!!」
「っシーーーー!!!(お願い!!! 訳)」
長く続くかと思っていた新月&ツァスタバVS大物の何かの戦いが新月の危険な(お馬鹿な)行動ですぐ決着が着きそうになる。大きなみずしぶきが上がり釣竿が激しくしなる。
それでも新月が意地を剥き出しにした頑張りをゴリ押しで通し、ツァスタバが新月の腰にしがみ付いて引っ張り続ける。
しばらくもしないうちに水面に巨大な影が浮かび上がり段々と大物の正体がわかってきた。(新月が床にイナバウアーしてツァスタバが釣竿を前から船の内側へと押す姿は面白かったので写真を撮っておいた)
それは宝石とフジツボがびっしりとついた大きな箱だったーーー
……なんだ魚じゃないのか。少しがっくりときてしまったが釣り上げないと釣り針が回収出来ない。
「なんだ。マグロが釣れたのかと思ったのにただの箱だった!! わーん、30秒前の中トロかみか●ブリを頬張る夢を返せーーー!!!」
「はい、これはどこからどう見ても箱ですね」
全員がっくりとしながらも三人がかりで箱を船へと釣り上げて人目に付かないうちにハリスと一緒に部屋へと運ぶ。部屋に着くとハリスを寝室へと放り込んで箱を覆い尽くす程ついたフジツボを剥がし、改めて箱を見る。
感想としては、素材、木。全体に宝石と金で装飾されたお宝箱のようなもので蓋にはこれまた金で出来た南京錠。以上、マグロでもカジキでもブリでもない。
「少々お待ち下さい」
そう言ってツァスタバが部屋にあった道具で南京錠を解除する。
大物が取れなかった新月は少し残念そうな顔をしながらも箱の中身に興味があるらしい。自分が箱を開けたいと自ら役を買って出た。
「さーてと、魚じゃ無かったけどこれは何かな〜? ご開帳〜!!……う?」
新月が蓋を開けると新月の表情が一転しいつものヘラヘラとした顔を180度変える。あの新月が無表情で固まった。
全身を稲妻が走ったように体を強張らせ、一点を凝視するその目には驚愕と不安の色が見える。
その行動に私とツァスタバはお互いに顔を見合わせ目を白黒させる。一体、何が入っていたのだろうか? 不思議に思い新月の肩を揺さぶる。
「どうした?」
「…………」
返事が無い。ただの屍のようだ……じゃない、何か不味いことでもあったのか?
「新月!! おい、何が入っていたんだ?!」
「お嬢様!!」
今度は2人で新月の肩を激しく揺さぶって声を荒げる。
するとゆっくりと新月は私の方を向き、一瞬ホッとした顔をするがすぐに苦虫を噛み潰したような顔をしたまま顎で宝箱を見ろとジェスチャーする。
恐る恐る中を覗くとそこにはーーー
見ていただきありがとうございました。何か質問がありましたらどんどんしてください。
次回、一気にテンションが下がります。




