女帝
やっと話が繋がってきました
中に入ると召使いやメイドが至る所に居たが、こちらに気づくと頭を下げて去って行ってしまった。
「ギルドランク Sのクロス様、Bのレモーネ様、Cのハリス様が参られました!」
「ご苦労様です。通して下さい」
大きな緑色の扉の前に着くと形に沿った挨拶がされる。なんでもこの挨拶は扉の外で召使いがするもので、ちゃんと女帝の所まで届くように大きな声を出さないと入れないらしい。(今回は一回で済んで良かったですと召使いの人は喜んでいた)
謁見の間に入るとまず、目に飛び込んで来たのは真っ赤な絨毯と大理石の様に白く輝く床。
次に、天井まで伸びるいくつもの大きな窓、天井一面に描かれた壮大な絵、柱に置かれた花瓶や彫刻、床より一段高い階の脇に控えている男(多分、総理大臣か宰相クラス)、中央に鎮座している翡翠色のゆったりとした椅子には女帝らしき人物。
うん、参考として写真が撮りたい。そう思っていると、新月も同じことを考えていたらしく、歩きながら『ねぇ、クロ。今って写真撮れる?』っと耳打ちしてきたのでカメラをこっそりと渡しておく。
多分、私よりもこいつの方が目立たないので撮りやすい。
ハリスが絨毯の上をロボット歩きをしながら進むのを後ろで見ながら歩く。
足音が絨毯に吸い込まれる度に絨毯の脇に並んでいる近衞兵のさらに奥、それぞれ思い思いに宝石やらドレスやらで着飾った貴族が口々に感想を小声で囁き合った。
「あのお方は魔族なのでしょうか?」
「いや、羽もツノも生えていないぞ」
「なんて豪華なお衣装なのでしょう! 一体、どこのデザイナーが考えたものなのでしょうかね?」
「そうね、あとで教えて頂こうかしら」
「何というオーラ」
「もしかしてどこかの亡国の末裔なのかしら」
…………………………………
………………
やはり目立つな、このギンギラギンは。
王座の近くまで来ると女帝の顔がはっきりとわかってきた。
葉や蔦と同化したような髪、ティアラ。
卵型の顔、アーモンドの形をした薄い金色の目、すっと通った鼻筋とぽってりとした唇。
草木のモチーフが描かれた深緑のドレス。
見た目は儚い妖精のようだがそれを打ち消すようにオーラが凄い。流石、女帝だとでも言うべきか。しかし私と新月は女帝を見て一発で『あ、こいつ耳が髪の毛で隠れているがエルフだな』と思った。
女帝は私達を見ると貴族の様に驚いた素ぶりは見せずに堂々としていた。まぁ、当たり前か。
彼女は真っ直ぐに私達を見ながら口を開いた。
「皆さん静かに、我が宮殿へようこそ。わざわざ足を運んで頂き感想します。私はこの国の女帝、“アレクサンドリーヌ・フォンカイザー・ヴェレンボーン”と申します、……っ!」
私と女帝の視線が重なると女帝が目を見開いた。ん? 今女帝が一瞬、あり得ないという顔をして固まったぞ。何かあったのか?
まぁ、いいか。女帝すぐに挨拶をしてくれたおかげで私もすんなりと名乗れる。
「お久しぶりぶりでございます。アレクサンドリーヌ様、マルクス・クローゼでございます」
「説明の通りクロス・カオスだ」
「同じく、し……レモーネ。ファミリーネームはクロと同じ、家族関係では似てない双子、どっちが上かと聞かれたら私が上だからそこのところよろしく」
「え?! あ、はは、ハリスでしゅ!」
「いえいえ、この度は我が宮殿にお越しいただき光栄でございます。クロス様」
新月は俺とは言わずに、私と言った。これは猫被りしてるな。
あと、さりげなく自分が姉だと言った。確かに合ってるが、姉の威厳のカケラもない癖に堂々と言い放つなこいつ。ハリスは噛んだっぽいが大丈夫か? いやそこじゃないよな。
私にははっきりと聞こえたぞ。この女帝、私を様呼びした。
いきなりの発言に私は驚き、新月は何を知っているのかと女帝に向かって睨みだし、ハリスとマルクスはポカーンと口をだらしなく開けてフリーズ、周りのやつらはざわざわと騒めき出す。
当たり前だ。国の頂点である女帝が様呼びをしたのだ。様呼びをするなんてことは、自分よりも上の身分か他国の王にしかしないことで、普通にはあり得ない。
でも事実は事実、間違い無くこの女帝は私のことを公の場で様呼びをした。一体何故と驚かない方がおかしい。
爆弾発言をしてくれた女帝は騒めく周りに向かって「静かに」 と遮ると今度はさっきまでの表情を崩し、綻ばせる。
「あなた様のことはギルドマスターから聞いています。ギルドカードの件ですがこれはシンプルに《オーロラカード》と名付けたいと思っています。何か質問はありますか?」
『クロス、頼む』
女帝に質問は、と聞かれて今まで一言も喋らなかったマルクスが私のコートの影からGOサインを出す。自分で言え、っと言う予定だったが今の空気じゃ無理か。
「ある、ギルドの馬鹿やらかして牢屋行きになったやつらなんだが、ギルドを監視するようなことは辞めて欲しい。真面目なやつらが困るだけだからな」
「っ!………」
ダメ元で言ってみると女帝は険しい顔をして口ごもってしまった。
しばらくして女帝が口を開く。
「……わかりました。考えておきましょう。勤勉な方々が被害を被るのは私としても望んではいませんからね」
考えておきましょう、か。彼女には彼女なりの考えがあっての答えだろう。これで許せマルクス。
これで私の役目は終わったと思ったが女帝が声を大きくして切り出す。
「ただし、条件があります」
条件? 変なもんじゃないといいんだがな。もし、ヤバい条件ならマルクスに頑張って貰うか。
女帝はコホン っと咳払いをすると条件とやらを話始めた。前置きが長かったので掻い摘んで話すと、
「最近は魔獣の働きが良すぎで困ってるの! そこで北にある神聖カルットハサーズという国では勇者の召喚に成功したんだって! いぇーい。パチパチ! そこでチミには勇者のために家庭教師なトラ●さんになって欲しいーの! あ、お金はちゃんと出るから安心してね! よろピコ! (まとめ役:新月)」
とまぁ、あまりやりたいとは思わない内容だった。本当は全力で拒否したい。
だってこういう時の勇者って問題児が多いじゃないか。これはマルクスに押し付け出来ないし、面倒ごとに巻き込まれること間違い無しだろ。
やりたくない。
やりたくない。
やりたくない。
が、自ら蒔いた種だやるしかないだろうな。渋々だが首を縦に振る。
「ありがとうございます。では一カ月後、我が国最大の港街、《ハーソン》へとお願いします。船はこちらで手配しておきます。ーーーでは、これにて謁見を終了とします」
私が答えると女帝の一言であっさりと謁見は終了してしまった。
本当はなんで様呼びをしたのか聞きたかったんだが仕方がない。また今度機会があった時に聞くことにしよう。
「ギルマス、セコい。あそこは体を張った一発芸でもしてみればよかったのに」
「他人任せはするな、ってお母さんに言われませんでしたか?」
「無茶言うな! あの環境だぞ?! 出来るわけがないだろ! ……うぅ……」
馬車に再び乗り込み王宮を出ると新月とハリスはマルクスを攻めまくっていた。
同時にマルクスも必死に二人の攻撃に反論をする。が、ものの数分で感服なまでに叩きのめされ膝を抱え込むポーズが出来上がる。
はたから見ると、お父さんを虐める子供に見えた。
その後、マルクスは馬車がギルドまで着くまで新月とハリスに弄られっ放しだった。受付嬢達に回収されていくと解散となったため私達もに王都を出ることにした。
夜に入ってからは、私と新月の二人で酒飲み(会議)をすることになり、私はあのギンギラギンを【無限の胃袋】にしまって新月とお揃いのリラックスしてるクマの部屋着(巫山戯で作ったもの。勿論、新月作)に着替えた。
本当はハリスにも入って欲しかったが現在21:30 子供は寝る時間なので風呂に入れてベットに放り込んだ。
今日開けたのは白ワインと「百舌鳥」という日本酒、ツマミにパプリカにカマンベールチーズを乗せて焼いたものだ。
「どうするクロ? ぶちゃけ、まだこの大陸の冒険とかしてないじゃん、なのにもう別の大陸行くの?」
「頷いてしまったのは仕方ない。まぁ、報酬は前払い+向こうの城の敷地の一部を使いたい放題の衣食住が保証。だそうだから人間関係を気をつけていればなんとかなるだろう。それに私達は寿命なんてものが無いんだから寄り道回り道ぐらいどうってこと無い」
「そりゃそうだけどさ〜」
残っている白ワインを一気飲みして一息着くと新月はまた、喋り出した。
「旅行の準備って大変じゃん? ゲルも【無限の胃袋】も出せないじゃん。どうすんの?」
「…………」
そうだ。確か【無限の胃袋】は珍しいものだったはず、船の上にゲルを出す訳にもいかないしな。
だが新月の服は多すぎる。私の服もハリスの服も新月が作ったものなので凝った作りをしていて手入れが大変だ。なら……
「だったら、何か創るか?」
「何かって何を?」
質問したら仕返された。聞かれても困るんだが。
ここまで見ていただきありがとうございました。
質問がありましたらどんどんしてください。
文書を書き足しました。




