裸エプロン?
今回のは短いです
さっきの期待の顔は何処へやら、鬼のような顔をしたハリスが足を揺さぶる。足を揺さぶられるのって体制が崩れやすくなるな。
「いや、ここまでの威力とは思わなんだ。許せ」
「許せって馬鹿ですか! こっちは死ぬかと思ったんですよ! でもなぜか無事ですけど!」
「無事なのは私が防護の魔法で結界を張ったからだ」
「いや、結界張ったからって……それ本当ですか?」
本当のことをいうとハリスは言葉を途中で飲み込み私の顔をおそるおそる見上げる。
互いにしばらく見つめ会う。最初に沈黙を破ったのはハリスの方だった。
「もうなんと言えばいいのか分かりませんが、クロス様がすごい人だってことはわかりました。でも、もう少しいい魔法は無かったんですか? これはやり過ぎです。もっと簡単なものから教えて下さい。いいですか?」
「あぁ、次からは気をつける」
「ならいいです。練習に戻りましょう」
と言ってハリス杖を構えた。なんだか立場が逆転したようだ。自分のせいだが。
しかし、逞しくなったな。ほんの少しだが。初めて私を見た時なんて気絶したようなものだったのに。
「ハリス、お前逞しくなったな」
「クロス様と新月さんと一緒に居ればこうなりますよ。そりゃ何回も『駄目だ。もう死ぬ』って思いましたし」
いやそんなに死にそうになったことは……あるな、すまん。
「じゃ、次は俺がやって見ますね。『ファイヤーボール』!」
さっきの場所を移動したところで練習を再開させる。あのままいたら絶対に面倒なことになるからな。
ハリスは一言言うと杖を懐から出して『ファイヤーボール』を発動させた。
が、
ポン 、 「あれ?」
杖の先から出たのは煙だけだった。可笑しいなさっきは出来たのに、とハリスが杖を振り回す。
しかし一向に火が出る気配はない。杖を振り始めてから休憩を挟んだりしたので最初に杖を振り始めて二時間は経過していた。
始めはもしかしたらさっきのはまぐれかと思ったがそれはない。
先の戦闘でハリスは『ファイヤーボール』を二回出している。なら出来るはずだ。何かハリスがやっていることで間違いがないか探す。姿勢、杖の構え、魔力の出し方と見ていると違いがわかった。
「ハリス、お前『ファイヤーボール』って普通に言っているだろ。私は魔法には声の発音も含まれると思うんだ。もしかしたら発音をしっかりやれば出来るだろうよ」
「本当ですか? ならやってみます」
半信半疑だと言うような顔でハリスがもう一回呪文を唱える。
ドンッ という音がしてさっきと同じように『ファイヤーボール』が出てきた。
「やった!! やっと出たぁー」
歓喜の声を上げてハリスが草の上に倒れる。魔力を使うのが初めてなのに今日一日中でこれだけ使ったんだ。疲れたんだろう。
「よくやった。今日は少し早いがもう終わりにして休もう。ついでにあとでこの近くを散歩するぞ」
「はい! でもなんで分かったんですか?」
草の上に寝転んだハリスがそのままの体勢で首を上げこちらを見る。
「なに、お前がゴブリンに火の玉をぶつけた時はガタガタと怯えていただろ。その時は発音が微妙に上がったり下がったりしてたからもしかしてと思っただけさ」
「そうだったんだ。恥ずかしい所を指摘されて結構辛いですけどやっぱりクロス様は凄いんですね……」
もう一回凄え、と呟いてハリスは目を閉じた。
そう、ハリスはあの時に震えてたからこそ魔法が発動出来た。これには言葉が関係している。まず、この国の言葉は日本語に近い。となると言葉の発音はスーッとなっていて英語のような発音の上げ下げが無いのでは無いか? と私は思った。
私と新月は日本の神では無いので簡単に出来たがこれは日本語に近い言葉が主流のこの世界ならではの引っ掛けだな。
もしかしたら同じようなことで魔法が使えない人間がごろごろいるかもしれない。
「さてと、戻るか」
「はい、もうへとへとです」
「お帰りなさーい! ご飯にする? お風呂にする? それともwーーーって、いって! 無言の平手打ちやめれ」
「なに裸エプロンしてるんだ。とっとと服を着ててこい」
ゲルの中に入るとリビングに大きな布と白いフリフリのエプロンをきた痴女がお出迎えしてきた。
片手にお玉を持ち素肌に新婚の妻が着るようなエプロンを着て。
「へーん、どうだい? 実はこのエプロンの後ろは……なんと! 服を着てました! 残念、エプロン着けてると裸に見えるだろ? 肩紐がない服と短いスカートだから出来ることだな」
くるりと後ろを向いて服を見せつける。エプロンの中には黒の肩紐が無い丈の短いワンピースを着ていた。本当だ裸では無かったのか。
「とっとと上着着ろ。風邪引くぞ」
「そこはもっとガッカリするところだと思うんだけど?!」
「ババアの裸見たって嬉しくない」
「グハッ! ぐさっとくるなその言葉。だけど俺は永遠の17歳だから!」
胸を押さえて倒れるフリをしたと思いきやアホは復活した。随分前に見せられたことがある髪が緑色のアイドルのポーズをとった。
倒れたり起き上がったりと忙しいやつだな。そんなのどうでもいいから作ると言っていた服はどうなったんだ。
「ふふふ……そこはしっかりやったぞ。さぁ、ご覧あれ!」
言葉が言い終わると同時に新月が大きな布を取る。
黒と赤が目を惹く猫耳のパーカー、同じ色のフリルがついたスカート、赤い厚底のヒール、白と黒のストライプのレースがついたワンピース、フリル、レース、フリル、レース……
女物ばっかじゃないか。中には男物がチラホラと混ざってはいるが比率的に4:6だ。勿論男物が4だが。
「お前のものばっかりじゃないか。ここまで必要か?」
新月はノンノンと人差し指を振って否定するとフリルとレースの山から男物の服を取り出す。
「言っとくけど女物って質も量もいるんだよ? でも安心しろ。ちゃんとここに二人の分もあるから」
男物の服に向かって手を指す。明らかに女物の山の方が大きい。明日ギルドに行く時にタンスを買いに行こう。
次の日、今日は依頼を受ける必要はないのでゆっくりと支度をして出ることが出来たのでまたのんびりとしながらギルドへ向かう。
「昨日言っていた話ってなんでしょうかね?」
「大方、あのゴルトゴーってやつの話でしょ? なんで金貨を1500枚渡したのかの説明とか」
「だろうな。あとはランクがFなのにどうやって倒したのか。とかだろう」
「ですよね、あ、ギルドに着きました」
三人で何故呼ばれたのかを考えているとあっという間にギルドについてしまった。またあの変わり者達とご対面しないといけないのか。
覚悟を決めて扉を開ける。すると、昨日の受付嬢がいて目が合う。リボンじゃなかった。もしかしたらあれは夜の受付に出現するのか。
受付嬢はこちらを見るとすぐにすっ飛んできた。
「お待ちしておりましたカオス様。お話の件なのですがこれは私からではなくギルドマスターからしますので階段を上がって、三階中央にある応接室へどうぞ。ご案内致します」
階段の方を見て手招きをする。案内してくれるのか。私達は素直に受付嬢の案内に従って応接室に通された。
見ていただきありがとうございました。
誤字脱字がありましたら教えてください。




