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浮気者じゃありません!……よね?

千裕のシャルルちゃんへの過度なアタックを防いだり理人に突っかかられて流したりディーさんとお茶したりしながら、一日一日日々は過ぎていく。


今日は庭でシートを広げてピクニックみたいな感じでティータイム。

お菓子を食べた後千裕とシャルルちゃんはあっちこっち移動しては草むらを覗きこんでいる。

虫がくっついたのかシャルルちゃんが「イヤ~~」と悲鳴を上げ、千裕が取ってあげてケラケラ笑っている。

いいね~そういう子供らしい感じいいね~。こんな感じで和やかに子供同士恋心を育んでくれれば私も口出ししたりしなくていいんだけどね。千裕はちょっと本能に忠実な性格だからやっぱり目を離せない。

良家の箱入り娘シャルルちゃんのファーストキスを奪ってしまったりしたら……と怯える母です。


「ん~~これおいしい~~」子供達を眺めながらまだおやつタイムの私は、すももくらいの大きさの果物をぱくぱく食べる手が止まらない。

イチゴみたいに甘くてリンゴみたいにしゃりっとした食感の、元の世界にはない果物で、すんごくおいしい。たまらん。止まらん。

良家の淑女ではありえない食べっぷりを見せる私を、微笑ましげにニコニコしながら見守るディーさん。もうこの視線にも慣れてきた。最近私も千裕と同じく子供扱いされているんじゃないかと思ってる。ナフキンを渡してくれたり種を入れる皿を差し出してくれたりサポートっぷりにも磨きがかかっている。

あれ……護衛ってこんなことするっけ。


「マナさん」呼ばれて顔を上げると、ナフキンで口元をふきふきされた。これは……これはちょっと照れるけど!

「あ、ありがとう……食べるのに夢中だった」果汁が垂れてたのかな。私何歳。28歳!

「一生懸命食べていて小動物のようでした」あま~い笑みでふふっと笑われ顔に熱が昇る。小動物じゃありません大人ですごめんなさい。

ほんと面倒見いいなぁ……。こんな優しくて面倒見良かったら関わる女性みんなに勘違いされるんじゃないだろうか。


たくさん食べて満足し、ディーさんが差し出してくれたナフキンで手を拭いていると、ちょっと離れた所からじーーっと私たちを見ている千裕とシャルルちゃん。

えっ子供達よ……なんでしょうかそのガン見は……。


「お母さん。騎士さまとなかよしだね」

「えっ、ふ、ふつうでしょ」

「いや~なかよしだよ~ねぇシャルル」

「うん、とってもなかよしね~」

「ね~~?」


やめろー!そのニヤニヤ顔やめろ!

シャルルちゃんまで「うふふ~ディーおにいさまったら~」と若干ニヤニヤしている。

やばい……無意識のうちにディーさんとの物理的距離が近くなってる……!?

なんもないのに!子供達に勘違いされちゃう!ほらディーさんも否定して……と横を向くと、穏やか~な笑顔を向けられる。……もうやだこの色男!



そして理人に部屋で「お前浮気じゃね?」という不本意極まりない言葉を言われた。

どうやら最近本当に私とディーさんは距離が近くなっているらしい。……いやだって毎日ずっと一緒にいるんだもん、そりゃ仲良くなるでしょ。普通でしょふつうふつう…………そりゃたまに、たまにときめいちゃったりはするけど、それはしょうがない、だってディーさんとっても色男だし優しいしスキンシップもしてくるし、そういうのに慣れてない私は勝手に心臓が暴れちゃうってだけで。ってだけで。別に浮気とか全然してないから!


「はぁ!?してないから!」

「騎士と怪しいだろ」

「してないって、千裕も一緒なんだよなに言ってんの?」

「いや浮気だ仲が良すぎる」

「ちがうって……ていうか、私達もう別に夫婦じゃないんだからそんな責められたくない」

「は?まだ離婚届出してないじゃん。なら夫婦だろ」

「私は……あんたのこと旦那だなんて思ってない!」


浮気してるくせに。浮気してるのは自分のくせに…!

もう私は理人の女関係何も言うつもりないんだから、私のことも放っといてほしい。理人がどういうつもりなのかわからない。もう一緒にいても負の感情が大きくなるばかりだ。


腹をたてながらも、胸の奥がもやもやする。

理人の「浮気」って言葉がぐるぐる頭の中をまわる。

これって……これって浮気になるんだろうか?普通の夫婦なら、私がディーさんと過ごしているのは浮気になるのかもしれない。でも私達は離婚してるようなもんで……でも法的手続きは済んでなくて……理人も離婚しないって言ってて……。

わからない。わからないけど、私は理人に浮気されてとても苦しんだ。辛かった、嫌だった。それを私も人に対してやっているんだろうか?

目の前が真っ暗になったような気分だ。




「ここはお主たちの世界ではないからの、お主たちに夫婦という縛りはありませんな。こちらで夫婦として住民登録していれば別だがの。問題があるとすれば、お主たち自身が夫婦である、という意識があってのこと。もう気持ちが離れ別れているとお互い思っているならば浮気にはならぬと思うがのぉ」


教えておじいちゃん!とおじいちゃんことセドリックさんに相談した。

これは浮気なんですかね!?と。


「理人はずっと浮気してるし向こうの世界にいればもう離婚していたはずなんです。でも理人は別れないって言うこともあって……」

「欲張りなのじゃろうな。愛がなくてもお主が離れていくのは気に入らないのじゃろう」

「そうなんです、何度も別れたいと言われたし、愛なんてないんです。ただの意地なのかなんなのか……わかんないけど」

「こちらの世界では不貞を犯した側に離縁を拒否する権利はないがのぉ。やられた側が離縁したいと言えばすぐに受理されるぞ」


そうなのか~。

おじいちゃんから見たら浮気ではないらしい……。いやというか私とディーさんなんもやましいことないけどね!不貞行為はもちろん、くっついたとかチューしたとかもないからね!

でも一応おじいちゃんにこっちの世界ではどうなのかとか聞けて楽になった。

理人のことなんて気にせずいつも通り過ごそう!

せっかくの異世界休暇なのにギスギスして過ごすのやだもんね!



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