プロローグ
周りに広がる火の海。
地面にはつい数時間前までは自宅だった残骸がまるで津波にあった後の様に広がっていた。
ここが地獄だと言われればまだ10歳になったばかりの俺はそう信じてしまっただろう。
そしてその地獄は今まさに俺から母親を奪い去ろうとしていた。
「今瓦礫を除けるから!」
俺はなんとか母さん上にのっている瓦礫を退けようと頑張るが子供の自分にはあまりにも重過ぎた。
それでも何とかしようと色々試行錯誤するが瓦礫はびくともしなかった。
「くそッ!動けよ!動いてくれよ!!」
「私の..ことはい..いから。あっあきと....あなたは生きて...生き残って」
痛みに顔を歪ませながらも、息子のため微笑みながら母さんは俺に生きることを懇願してくる。
「母さんっ!?何言ってんだよ!もう少しだからッ!もう少しだから!!」
「愛してるわ....あきと..」
母さんが最後の力を振り絞って手を伸ばす。
「母さん!」
俺は必死に手を伸ばしたがその手が母さんに届く前に俺の意識が飛んだ。
***
古来より日本には悪霊や妖怪、魔物といった人知をこえた化け物たちが存在していた。
そしてそんな化け物を退治する人間達も同時に存在していた。
人々は化け物たちを”妖魔”と呼び、それを退治する人間を”退魔師”と呼んだ。
古くから存在した妖魔たちは退魔師に退治されても輪廻転生を繰り返し、また現世に現れる。
そして退魔師たちは妖魔が現れる度に退治する。
最初は数も少なく、力も弱かった退魔師たちだったが、年を重ねるごとに数も質も
格段に向上していった。
それと同時に退魔師の地位は世の中において確固たるものになった。
しかし16世紀初頭、今までに無い規模の危機が人間たちを襲った。
強力な妖魔の種族である鬼が他の種族を従えて、突如人間たちに牙をむいたのだ。
鬼達は百鬼夜行となって、他の種族の者と共に、人間達を滅ぼさんと侵攻を開始した。
退魔師たちは特に優れた力を持っていた六つの家を筆頭として、一丸となりこれに応戦した。
この戦いこそがが世に言う”鬼神の乱”である。
人間側はじりじりと鬼達を追い詰め、とうとう退魔師たちの筆頭である六つの家の当主が六人がかりで鬼の頭を討ち取り、すべての鬼を葬ったことでこの乱は幕を閉じた。
その後、六つの家、帝・星宗・御代・間宮・倉敷・大和は護法六家として称えられ、絶大な影響力と権力を手に入れた。
そしてその者たちを中心に退魔師の組織が作られた。
組織の名は魅柱。
以後、魅柱を護法六家を中心として退魔師たちは妖魔から日本を守ってきた。
そして、今日まで至るのである。