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はじまり

 


――ここがどこなのか、分からなかった。




 空はない。地面も曖昧で、ただ白が続いている。

 音も、風も、気配もない。




 なのに――





「……誰かいる」




 その感覚だけは、はっきりしていた。




 振り向くと、少し離れた場所に“誰か”が立っている。





「……あ」




 目が合う。




 同じタイミングで、少しだけ驚いた顔。




 知らないはずなのに――

 なぜか、少しだけ安心した。





「ねぇ」




 沈黙に耐えられなくなったように、彼女が口を開く。




「ここ、どこか分かる?」






「……いや」




 短い返答。

 でも、その声には妙な落ち着きがあった。






「だよね」




 苦笑するミオ。



 少し間があって――




「ねぇ」





「……なんや」






「喉乾いた」






 それはあまりにも普通すぎる一言だった。



 この何もない世界に、似つかわしくないほどの

 言葉だった。





「……は?」








「え?」



 えっと、『ここはどこ!?』とか叫んで欲しい?」







「……知らんがな」







「でも喉乾いたもん」








「それは分かる」







少しだけ沈黙







そして








「ふふ」





ミオが笑う





その瞬間







この空間に、初めて“温度”が生まれた気がした






「……なんや」







「なんか」



「ちょっと安心した」





「……」






同じだった






「……俺もや」






彼は短く答える






それだけで十分だった






 理由は分からない。

 名前も知らない。




 それでも――





「この人と一緒にいたい」






 そんな感覚だけが、確かにあった。







「ねぇ」





「なんや」





「名前は?」






「……カイ」








「そっか」





「私はミオ」







名前が与えられる





世界に意味が生まれる







「よろしくね、カイ」








「……あぁ」







その距離が





ほんの少し





近づく







でも







触れない





まだ




知らないから







それが“終わり”になることを




“それは、何度も繰り返される出会いの、最初の一歩だった”


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