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第一章:転生して、まず誓ったこと
「またですか……」
目が覚めたとき、ヴェルディア・ヘルゼルト・クラウディアは天井を見上げて小さくため息をついた。
白く優雅な天蓋付きのベッド。
壁には金の装飾を施した額に入れられた絵画。
窓の外には広大な庭園が広がり、朝日が薔薇の花を照らしている。
ここは、私が前世にやり込んだ乙女ゲームの世界。
そして私は、そのゲームに出て来る悪役令嬢──ヴェルディア・ヘルゼルト・クラウディア。
貴族の令嬢にして、ヒロインをいじめ、王太子に迫り、最終的に追放される運命の女。
「そんな結末はごめんだ……」
前世の記憶を持つ私は、ベッドから起き上がり、鏡の前に立った。
まさに“悪役”としか言いようのない美貌。
だが、その瞳には覚悟の光が宿っている。
「私は、恋に落ちない。王太子にも、貴族の青年たちにも、誰にも心を奪われない。そして、ヒロインのミシェルを決していじめない。静かに、学園を卒業して、田舎の別邸で隠遁生活を送る……それだけ」
それが、私の新たな人生の目標だった。