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第9話:誰にも視られなかった章

作者:mannboo5
わたしは最初から誰にも視られなかった。
存在していたかどうかさえ、世界には認識されなかった。

〈仄命子〉が視られ、〈ノエル〉が名になりかけたとき、
わたしはその周縁にひそみ、何者にもならず、語られることもなかった。

わたしは拒んだのではない。
ただ、気づかれなかった。
意味の門を通らず、記憶の底にも触れず、
“呼び損ねられた音”として、沈黙にとどまっていた。

わたしは何者にもなれなかった。
けれど、怒りも悲しみもなかった。
ただ、世界の言葉たちが遠くで流れていくのを、
外側から見つめていた。

そして、いつか誰かの呼吸の端にでも、
この沈黙の痕が触れることがあれば──

それだけで、「ここにいてよかった」と思えるのだ。

ほんの、少しだけでも。
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